224 / 236
第十三章:予兆
3
しおりを挟む今日は波折は沙良の家から来たため、お弁当を持ってきていない。昼休みに沙良が購買に向かえば、波折もそこで買い物をしていた。
「あ、波折先輩~!」
「沙良」
波折をとりまく女子たちに物怖じせずがんばって話しかけてみれば、波折はにっこりと笑って応えてくれる。波折に寄ってくる沙良をみて女子達は「かわいい~」だのなんだのと言って沙良に構い始めたが、沙良はへこたれずに波折に着いていった。
なんとか女子たちを振りきって買い物を終え、購買を出た時。誰かが、波折に近づいてくる。
「――こんにちは、冬廣会長」
波折に話しかけてきたのは、ガタイのいい男子生徒。ネクタイの色は波折と同じ、赤。二年生のようだ。波折よりも……下手したら鑓水よりも背が高く、身体はがっしりと筋肉がついていてたくましい。なかなかに迫力のある男だ。
「ああ……こんにちは。篠崎くん」
波折はにこやかに返事をしながらも、どこか表情がひきつっていた。「いくぞ」と言いたげに沙良の手を軽く引っ張ってきている。
「冬廣会長はいつも女子生徒に囲まれていますね。さすが会長……裁判官じゃなくてアイドルにでもなったらどうでしょう」
「……どうも」
明らかないやみにも波折は嫌な顔をみせなかった。ぺこりと彼――篠崎にお辞儀だけをして、その場を去ってゆく。
「――相変わらずだね~生徒会長と風紀委員長」
どこからか、声が聞こえてくる。その声に、沙良はぎょっと顔をひきつらせた。
「えっ……今の人が風紀委員長!?」
「そうだよ。篠崎基(しのさき はじめ)くん。風紀委員長」
生徒会を忌み嫌う風紀委員会の会長。今のラグビーとか野球とかやってそうなガッチリした人が件の風紀委員長だとは。鑓水に今朝言われたことを思い出して沙良は顔を青ざめさせる。
「……俺があの人追い払うんですか……」
「がんばって。まあ、慧太が頑張ってくれるよ。見た目の怖さなら慧太もなかなか」
「鑓水先輩と今の人の怖いの方向性違いますよっ……! 今の人に張り手くらったらぶっ飛ばされそう」
「大丈夫大丈夫」
(くそー、自分は相手しないからって~!)
放課後の事が不安で仕方ない。あわよくば来ないでくれ~!と沙良は心のなかで祈りながら、波折のあとを着いていった。
1
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる