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第十二章:スイートアンドビター

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「けいた……俺、おかしくなっちゃいそう」

「……おかしく?」

「ほんとうに、溢れてくるんだ。慧太のことが好きって気持ち。こんなに……こんなに慧太に愛してもらって、俺……幸せ」


 ……波折は鑓水の言葉が本当に嬉しかったのだろう。必死なくらいに鑓水にキスをしてくる。瞼をあければ、波折もうっすらと鑓水をみていたから、視線が交わった。熱視線が絡み合って、どくどくと心臓が高鳴ってゆく。


「慧太……大好き」

「俺も、波折のこと好き。愛してるよ」

「けいた……」


 波折のことを本当にどこかへ連れ去ってしまいたい。抱えるもの全てから波折を逃がしてやりたい。でもそんなことできないから、と波折自身が諦めている。しかしそうしてくれると言った鑓水に、波折は感謝していた。なんとなく鑓水はそんな波折の気持ちがわかってきて、馬鹿、と心の中で毒付く。俺は本当におまえのためならすべてを投げ出す覚悟はできているんだよ。この世界のなによりもおまえを愛している。なかなか伝わらない想いをこめて、鑓水はキスを深めてゆく。


「けいた……けいた……」


 波折の手が、鑓水の服の中に入り込んでくる。あ、と思って鑓水は波折を抱き上げた。そしてベッドに座って、向かい合う。


「……けいた」

「……っ、波折」


 波折が鑓水を押し倒す。ほんとうに、好きという気持ちが溢れている、そんな波折の様子に鑓水はくらくらとした。発情しているというよりも、とにかく鑓水に触れたい、そんな様子だった。

 波折が服を脱いでゆく。そうすれば女物の下着を身につけた身体があらわになった。改めて見るとその下着をつけた波折は本当にいやらしい。白い身体にすけすけのレースの下着が妙に似合っている。


「けいた……俺、いまから女の子になるからね」

「へっ」

「心も体もオンナになって、けいたに尽くすから……俺……けいたのオンナになる……」


 はあ、と波折の唇から吐息が溢れる。波折は鑓水の服を脱がすと、あらわれた筋肉質の体をみてうっとりとした表情を浮かべた。ぺたりと波折が鑓水の体にくっつけば、肌の色や体格差が顕著になる。ピンク色のふわふわとした下着が手伝って、本当に男と女が抱き合っているような、そんな錯覚を覚えてしまうくらいだった。


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