172 / 236
第十二章:スイートアンドビター
9
しおりを挟む
「……おかえり」
波折が家に帰ると、鑓水が静かに笑いながら迎えてくれた。なにやら苛々としているように見える。どうしたんだろう、と波折がそろそろと靴を脱いであがると、鑓水がずかずかと近づいてきた。
「……誰と一緒にいた」
「えっ……」
「……いいや。風呂沸かしておいたからすぐ入って」
「け、慧太」
鑓水はぐいぐいと波折を引っ張って、浴室に放り込んだ。バタンと扉を閉められて、波折はびっくりしてしまう。
「……慧太? 何か怒ってる?」
「べつに」
「ほんと?」
「怒ってねぇよ、おまえには」
「……慧太、」
扉越しに、鑓水の低い声が聞こえる。そこにはいつもの甘さがなくて、怒りの色が。鑓水に嫌われることがとにかく怖くて波折は何度か彼の名を呼んだが……返事は返ってこない。
「慧太……俺、何かした?」
「……いいからさっさと風呂入ってその虫酸が走る臭い落としてこいよ」
「臭い……?」
それ以降、鑓水は何も答えてくれなかった。波折はびくびくとしながら、服を脱いでいく。下着を脱いだときに、ぬちゃ、と色んな液体が糸をひいた。「ご主人様」との熱いセックスを思い出して波折は身体の芯が震えるのを感じたが……それ以上は興奮できなかった。鑓水に捨てられてしまうのではないかという恐怖のほうが勝っていたのかもしれない。
波折が家に帰ると、鑓水が静かに笑いながら迎えてくれた。なにやら苛々としているように見える。どうしたんだろう、と波折がそろそろと靴を脱いであがると、鑓水がずかずかと近づいてきた。
「……誰と一緒にいた」
「えっ……」
「……いいや。風呂沸かしておいたからすぐ入って」
「け、慧太」
鑓水はぐいぐいと波折を引っ張って、浴室に放り込んだ。バタンと扉を閉められて、波折はびっくりしてしまう。
「……慧太? 何か怒ってる?」
「べつに」
「ほんと?」
「怒ってねぇよ、おまえには」
「……慧太、」
扉越しに、鑓水の低い声が聞こえる。そこにはいつもの甘さがなくて、怒りの色が。鑓水に嫌われることがとにかく怖くて波折は何度か彼の名を呼んだが……返事は返ってこない。
「慧太……俺、何かした?」
「……いいからさっさと風呂入ってその虫酸が走る臭い落としてこいよ」
「臭い……?」
それ以降、鑓水は何も答えてくれなかった。波折はびくびくとしながら、服を脱いでいく。下着を脱いだときに、ぬちゃ、と色んな液体が糸をひいた。「ご主人様」との熱いセックスを思い出して波折は身体の芯が震えるのを感じたが……それ以上は興奮できなかった。鑓水に捨てられてしまうのではないかという恐怖のほうが勝っていたのかもしれない。
1
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる