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第十章:その弱さを知ったとき

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「え?」


 目を覚ますと、隣には誰もいない。鑓水は「あれ?」と一瞬思ったが、いつものように波折は朝食を作ってくれているのかな……と思った。が、パッと部屋の隅に視界を移したところでそれは違うとわかる。


「……波折?」


 波折が何故か部屋の隅で丸くなってうずくまっている。服はすでに着ていて、相変わらず早起きではあるが一体波折は何をやっているのだろう。鑓水は下着だけを履くと、ゆっくりと波折に近づいてゆく。


「どうした?  波折」

「……慧太……あの、俺のこと好きって、その……ほんとやめて欲しいんだけど……」

「ああ?  おまえまだそれ言ってんの?」


 ぼそぼそ、と呟かれた波折の言葉に、鑓水はため息をついた。昨日あれだけ言ったのにまだわかってくれていないのかとショックを受けたのだ。しかし、どうやらそういうことではないらしく。波折は顔を真っ赤にしながら振り向いて、震える声で言う。


「俺……普通の身体じゃないから、」

「え?  普通の身体じゃない?」

「そ、その……すごく、いやらしい身体してるから、慧太に好きって言われて優しくされると、すごく……申し訳なくなって、」

「波折がすっげーエロいことは普通に知ってるけど」

「だって、今と前じゃあ慧太は俺を見る目が違うから……俺がえっちしたいってばっかり思ってたら、引くでしょ……?」

「……」


 波折は再び鑓水から顔を背けて壁を向いてしまう。耳まで真っ赤だなぁ、なんて思って鑓水は声を殺して笑った。ゆっくり、彼に悟られないように近づいてき、鑓水は波折を後ろから抱きしめる。そして、びくっと身体を震わせた波折の胸に手を這わせ、カーディガンの上から乳首をこりこりと刺激してやった。


「ひゃあっ……!」

「どエロい波折歓迎だけど?  俺」

「でっ、でもっ……ぁんっ……あっ、俺、前みたいに、あっ、……いっぱい、イジメてほしくて、っ……あっ」

「イジメてやるよ?  おまえがそうして欲しいっていうなら奴隷みたいにしてもいい」

「ほんと、……?  あっ、俺、ほんとうに、へんたい、だから……あっ、ほんとうはいっぱいけいたにイジメてほしくて、あんっ……でも……好きって言ってくれたのにそんなこと考えてたら、悪いかなって……」

「いーよいーよ、そんな風におまえが考えてるってだけでも嬉しいわ。イジメてやる、めちゃくちゃにしてやるからな」

「けいた……」

「その代わりちゃんと愛は注ぐから。前とはちげぇよ」

「んっ……」


 鑓水は波折の顎を掴むと、唇を奪った。そうすれば波折はとろんと顔を蕩けさせ……ふにゃりと鑓水に身体を委ね、キスに夢中になった。
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