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第十章:その弱さを知ったとき
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波折たち2年の教室は、校舎の三階に位置する。学校について階段を登ろうとしたところで、職員室のほうからやってきた人物が声をかけてきた。
「お、会長と副会長!」
「……淺羽先生」
現れたのは、淺羽だった。二人で登校してきた様子の波折と鑓水をみて、にやにやと笑っている。
「……最近、仲いいね~。前そうでもなかったよね」
「そうですか?」
「こりゃ付き合っているって噂も本当だったりして」
「なんでその噂を淺羽先生が知っているんですか!」
「ん~? 内緒」
教員が俗な噂を知っているものだと、鑓水は驚いて大声をあげてしまう。からかう淺羽と鑓水が話している横で、波折はじっと黙っていた。波折が元気がなさそうにしているのに気付いたのか、淺羽が優しい声で波折に話しかける。
「どうした、波折」
「……あの、淺羽先生」
「ん?」
波折は一瞬ちらりと鑓水をみて、もう一度淺羽に視線を戻す。そして、俯いて、唇を噛む。何かを言いたげな。迷いを感じるようなその表情に、鑓水は首をかしげた。結局波折は言いたかったことを諦めたように、哀しそうに目を伏せてしまったが。
「……それ、ただの噂ですから」
「えっ、おい、波折」
それだけ言い捨てて、波折は鑓水の腕を掴むと階段をのぼっていってしまった。淺羽はそんな二人の後ろ姿をじっと眺めている。
「……ふうん」
小さく笑った淺羽は、踵を返し……また、職員室へ戻っていった。
「お、会長と副会長!」
「……淺羽先生」
現れたのは、淺羽だった。二人で登校してきた様子の波折と鑓水をみて、にやにやと笑っている。
「……最近、仲いいね~。前そうでもなかったよね」
「そうですか?」
「こりゃ付き合っているって噂も本当だったりして」
「なんでその噂を淺羽先生が知っているんですか!」
「ん~? 内緒」
教員が俗な噂を知っているものだと、鑓水は驚いて大声をあげてしまう。からかう淺羽と鑓水が話している横で、波折はじっと黙っていた。波折が元気がなさそうにしているのに気付いたのか、淺羽が優しい声で波折に話しかける。
「どうした、波折」
「……あの、淺羽先生」
「ん?」
波折は一瞬ちらりと鑓水をみて、もう一度淺羽に視線を戻す。そして、俯いて、唇を噛む。何かを言いたげな。迷いを感じるようなその表情に、鑓水は首をかしげた。結局波折は言いたかったことを諦めたように、哀しそうに目を伏せてしまったが。
「……それ、ただの噂ですから」
「えっ、おい、波折」
それだけ言い捨てて、波折は鑓水の腕を掴むと階段をのぼっていってしまった。淺羽はそんな二人の後ろ姿をじっと眺めている。
「……ふうん」
小さく笑った淺羽は、踵を返し……また、職員室へ戻っていった。
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