121 / 236
第十章:その弱さを知ったとき
26
しおりを挟む「……ん?」
日付が変わる頃だ。スマートフォンのヴァイブレーションの音に気付いて、波折は目を覚ます。丁度眠りに堕ちそうなときだったが、なんとか手を伸ばしてスマートフォンを手にとった。
「あ……」
電話の着信だ。発信元は「ご主人様」。無視をするわけにもいかず、自分の体を抱く鑓水の腕をそっとどかして、ベッドを抜け出す。
「……はい」
『もしもし、波折? 寝てた?』
「いえ……」
『あ、もしかして鑓水くんとエッチしてた?』
「今日はしてないです」
『ほうほう、今日は、ね。これから毎日鑓水くんが泊まりにくるんだって?』
「はい」
いったい何の用だろう。なんとなく不安に思いながら、波折は「ご主人様」の言葉を聞いていた。「ご主人様」は機嫌が良いようで、電話の向こうで笑っている。
『鑓水くんさ、気になって調べたんだけど……結構良物件だね~』
「……え?」
『面白そうだからちょっと虐めてみようかな、なんてさ』
「あ、あの……いじめるって、」
『それだけ! じゃあね、波折』
「は? えっ、ちょっと」
ブツン、と音がして電話は切れてしまう。「ご主人様」の企みに波折は呆然としながら、スピーカーから漏れてくる終話音を聞いていた。なんとなく鑓水の眠るベッドに戻るのが憂鬱に感じる。だから、しばらくその場に座り込み、膝を抱えてうずくまっていた。
1
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる