上 下
113 / 236
第十章:その弱さを知ったとき

18

しおりを挟む
―――――
―――
――

「けいちゃーん!」


 教室をでたところで、少女が自分のもとにかけてくる。廊下ですれ違う生徒たちは皆振り返って少女に見惚れる――そんな美しい少女の名前は棗(なつめ)。鑓水の幼なじみである。

 鑓水と棗は、家も近く幼少のころから親しかった。中学にあがってもその仲は変わることなく、一緒に登下校をする仲だった。鑓水は高嶺の花である棗に慕われていることで羨ましがられることが多かったが、鑓水は彼女に対して特別な感情を抱いてはいないし、可愛い女の子が寄ってくることなんてよくあることだったため気にしなかった。


「けいちゃん、今日返されたテスト、どうだった?」

「満点」

「す、すごい! 私のクラスでも一番の子は92点だって先生言ってたのに」

「そうなんだ。棗は?」

「えっ……私は、えーっと、ふふふ」

「言えよ」

「……けいちゃんの半分!」

「ちゃんと勉強しろよアホかおまえ」

「いいの! 女の子は頭良くなくなって素敵な旦那さんと結婚すれば幸せになれるもん!」

「いまからそんなこと言ってるとろくな男みつけらんねえぞ」


 棗が鑓水の腕に自らのものを絡めて歩けば、皆が注目してくる。棗も注目されているということは全く気にしていないようだ。目の前の鑓水のことで、頭がいっぱいだった。


「……けいちゃん、今日家にいっていい?」

「んー、いいよ」

「やったー!」


 にこにこと笑う棗を、ちらりと鑓水は見下ろす。可愛いな、とは思うがやはりそれ以上の感情は湧いてこない。ただ大切な幼なじみであることには変わりなく、彼女と過ごす時間を鑓水は好いていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

ガテンの処理事情

BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。 ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...