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第十章:その弱さを知ったとき

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 学園祭にむけての本日の準備で、沙良は鑓水と一緒に作業することになった。決して嫌いというわけではないのに、あふれる嫉妬心から彼の隣にいると鬱屈としてしまう。今日から彼はブレザーを着ていて、いつもの明るいベージュのカーディガンだけの姿とは違ってなんとなく大人っぽくてかっこいいな、とか思うとまたもやもやとする。


「……鑓水先輩」

「おー?」

「波折先輩とは付き合ってないんですよね」

「付き合ってねーよ。なんか噂になってるけど」

「……鑓水先輩は波折先輩のこと、どう思ってるんですか?」


 ぴたり、と鑓水の動きが止まる。その反応に思わず沙良が鑓水の顔を窺い見れば、彼は考えこむような、そんな顔をしていた。


「……べつに、なんとも思ってない」


 少し疲れたような、そんな表情。どうしたんだろう、と沙良は思ったが黙っておいた。

 なんとも思ってない人が「おまえにはやれない」なんて言うだろうか。沙良は鑓水の心のうちが気になって仕方なかった。彼に波折のことを「好き」と思ってほしくなかった。うまくこの気持ちを整理できなかったが、鑓水が波折を「好き」ともし思ったなら、本当に波折のことを手に入れてしまいそうだったから。


「……」


 窓から紅くなり始めた空がみえて、夕日が差し込んでくる。鑓水の金髪が紅い光にきらきらと透けて、綺麗だ。やっぱりかっこいいな、と思って。泣きそうになった。
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