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第九章:青と深淵
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「波折……波折、」
「ん……」
身体を揺すられて、波折は瞼をあける。帰宅してからベッドに身体を投げ出して、寝てしまっていた。自分を起こした人物の顔を確認して――波折はふにゃ、と笑う。
「……ご主人様」
男は「ご主人様」と呼ばれるとにっこりと微笑んだ。くしゃくしゃと波折の頭を撫でて、こめかみにキスを落とす。
「今日は神藤くんの家? 神藤くんの家で何をして疲れたのかは知らないけれど、俺が来る時間にはちゃんと起きていてほしいな。チャイム鳴らしても出てこないんだもん」
「……ごめんなさい。考え事をしていたらいつのまにか寝ていて」
「考え事?」
波折は身体を起こすと、ベッドの端に座る男の膝の上に乗ってキスをねだった。服に手を差し入れられて背中をなでられると、その唇から甘い声が零れてゆく。
「……沙良のことです」
「神藤くん? どうした? 猛アタックでもされた?」
「いや、そうじゃなくて……あの、ご主人様」
男が波折のシャツをめくりあげ、乳首をくりくりと弄る。波折は「ん、」と喘ぎながら顔を赤らめてのけぞり、もっと触って、と男に胸を突き出した。きゅううっ、と乳首を引っ張られながら波折は自分と男の股間を擦り付けるように腰を揺する。
「……沙良の、魔術試験の点数見せてください……んっ、」
「魔術試験? あー……どうだったかな、俺データ持ってたっけ」
男は波折をぽいとベッドに放り投げると、鞄のなかを漁る。そしてUSBを取り出すと、机に置いてあった波折のノートパソコンを持ってきて再びベッドに座る。パソコンを起動してUSBのデータを開き、しばらくファイル名の羅列の目で追っていき……男は「あったあった」と呟いた。
「神藤くんはどうだろうねえ~あの性格だから治癒とか防御特化型かな。優しい子は大抵そんな感じの成績がでるはずだし」
のんびりとした調子で男は表示されたデータをみていく。沙良の名前をみつけてそこをクリックして……男は首をかしげた。そんな様子を男に寄り添ってみていた波折は、ああ、と納得したように声をあげる。
「神藤くん、攻撃特化なんだ? 間違いじゃなくて?」
「……間違い?」
「魔術の強さはその人間のもつ性格の根底に依存する……はずだ。だからあの性格の神藤くんが攻撃魔術で満点を取れるとは思えない」
「……間違っていないと思いますよ。沙良の人間性は、それで正しい」
波折の言葉に、男は訝しげに眉をひそめる。
「沙良は魔女を裁くために裁判官になることを求め、魔術を学んでいます。だから、攻撃特化になってもおかしくはありません」
「……魔女を裁くって理由で裁判官になることを望む人間はいくらでもいる。でも満点をとったりはしない。だって、そこには正義があって、正義は攻撃性を持たないから」
「……沙良は、正義のために魔女を裁くんじゃありません。裁くという言葉にも語弊があるかもしれない。沙良は魔女を「狩る」ことを望んでいる」
波折はピアノを弾いている時のーー母親の影を追っているときの沙良の表情を思い出す。まるで強すぎる想いに脅迫されているような、そんな表情。本人は自覚していないそれは、強烈な、
「沙良は復讐のために、魔女を根絶やしにしたいんです」
――殺意の衝動。
「ん……」
身体を揺すられて、波折は瞼をあける。帰宅してからベッドに身体を投げ出して、寝てしまっていた。自分を起こした人物の顔を確認して――波折はふにゃ、と笑う。
「……ご主人様」
男は「ご主人様」と呼ばれるとにっこりと微笑んだ。くしゃくしゃと波折の頭を撫でて、こめかみにキスを落とす。
「今日は神藤くんの家? 神藤くんの家で何をして疲れたのかは知らないけれど、俺が来る時間にはちゃんと起きていてほしいな。チャイム鳴らしても出てこないんだもん」
「……ごめんなさい。考え事をしていたらいつのまにか寝ていて」
「考え事?」
波折は身体を起こすと、ベッドの端に座る男の膝の上に乗ってキスをねだった。服に手を差し入れられて背中をなでられると、その唇から甘い声が零れてゆく。
「……沙良のことです」
「神藤くん? どうした? 猛アタックでもされた?」
「いや、そうじゃなくて……あの、ご主人様」
男が波折のシャツをめくりあげ、乳首をくりくりと弄る。波折は「ん、」と喘ぎながら顔を赤らめてのけぞり、もっと触って、と男に胸を突き出した。きゅううっ、と乳首を引っ張られながら波折は自分と男の股間を擦り付けるように腰を揺する。
「……沙良の、魔術試験の点数見せてください……んっ、」
「魔術試験? あー……どうだったかな、俺データ持ってたっけ」
男は波折をぽいとベッドに放り投げると、鞄のなかを漁る。そしてUSBを取り出すと、机に置いてあった波折のノートパソコンを持ってきて再びベッドに座る。パソコンを起動してUSBのデータを開き、しばらくファイル名の羅列の目で追っていき……男は「あったあった」と呟いた。
「神藤くんはどうだろうねえ~あの性格だから治癒とか防御特化型かな。優しい子は大抵そんな感じの成績がでるはずだし」
のんびりとした調子で男は表示されたデータをみていく。沙良の名前をみつけてそこをクリックして……男は首をかしげた。そんな様子を男に寄り添ってみていた波折は、ああ、と納得したように声をあげる。
「神藤くん、攻撃特化なんだ? 間違いじゃなくて?」
「……間違い?」
「魔術の強さはその人間のもつ性格の根底に依存する……はずだ。だからあの性格の神藤くんが攻撃魔術で満点を取れるとは思えない」
「……間違っていないと思いますよ。沙良の人間性は、それで正しい」
波折の言葉に、男は訝しげに眉をひそめる。
「沙良は魔女を裁くために裁判官になることを求め、魔術を学んでいます。だから、攻撃特化になってもおかしくはありません」
「……魔女を裁くって理由で裁判官になることを望む人間はいくらでもいる。でも満点をとったりはしない。だって、そこには正義があって、正義は攻撃性を持たないから」
「……沙良は、正義のために魔女を裁くんじゃありません。裁くという言葉にも語弊があるかもしれない。沙良は魔女を「狩る」ことを望んでいる」
波折はピアノを弾いている時のーー母親の影を追っているときの沙良の表情を思い出す。まるで強すぎる想いに脅迫されているような、そんな表情。本人は自覚していないそれは、強烈な、
「沙良は復讐のために、魔女を根絶やしにしたいんです」
――殺意の衝動。
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