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第九章:青と深淵
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しおりを挟む「さら……?」
沙良は波折の脚を閉じてやって横に倒す。なかに挿れるつもりはないけれど、雰囲気だけでも。そう思って、沙良はぴたりと閉じられた波折の太ももの間に、かたくなったものを挟むようにしてねじ込む。波折の先走りでぬるぬるになったそこはさながら女性器のようで、それだけでもぞくぞくしてしまった。
「さら……いれないの?」
「だって、付き合ってないもん。俺たち」
「いれて……さら、そんなこといいから……いれて……」
「だめ……波折先輩。チョコレートでおかしくなってるだけだからね、波折先輩……」
いわゆる素股という行為。しかし、裸で抱き合ってするとなると、雰囲気は本当のセックスそのものだ。沙良はゆっくりと腰を引いて……ぐ、と突き出す。ぱん、と肉のぶつかる音がなると、同時に波折がひくっと震えた。
本当に挿入してセックスしたらもっと可愛い反応を見せてくれるんだろうな、と考えると苦しいが、これだけでも沙良にとっては幸せだった。どうせ、これから波折と心が繋がることなんてないのだから。
「先輩……ちょっとだけ、ゆるして……ね、」
「んっ……あ、」
波折の首筋に散る鬱血痕。見ているだけでも不快なそれらの上に、沙良は口付ける。これだけついていたら……ひとつくらいつけてもバレないだろう。ちゅ、と強く肌を吸い上げると、波折は甘い声を漏らした。
そうやって首にキスをしながら、腰を振る。裸でぎゅっと抱き合いながら、ゆさゆさと波折の身体を揺さぶった。
「あっ、あっ、あっ、あっ、」
ギシギシとベッドが軋んでいやらしい気分になる。あんまり煩くすれば夕紀に気付かれてしまうのではないかと、控えめに腰をふって、波折の口も塞いでやる。そうしてひたすらに波折の太ももにペニスを出し入れし、波折の首筋を愛撫する。吐息と腰がぶつかる音とベッドの軋みだけが部屋を満たしてゆく。
「は、ッ……ぁ、……んっ、んっ」
じゅくじゅくと穏やかな快楽が下腹部に広がっていき、触れ合ったところが溶けてしまいそうだ。波折も顔を真っ赤にして、目をとろんと蕩けさせながら喘いでいる。
「んー……っ、ん、ん、」
沙良は波折のペニスをつかんで腰の動きに合わせて扱いてやった。波折の身体はびくんっ、びくんっ、といやらしく跳ねて……そして、沙良の腰の動きが早くなっていって、ほぼ二人同時に、精を放つ。
「ふっ……ん、ん……」
ぐったりとしながらぴく、ぴく、と小さく震える波折に覆いかぶさって、沙良はまた顔にキスの雨を振らせてやる。快楽の余韻がじんわりと脳内を満たしていき、たまらない幸福感が溢れ出た。
一方通行の恋心であるとわかっているのに、こうして身体を触れ合わせることに幸せのようなものを感じている自分がひどく惨めに思えるが……波折の身体を抱いていると、気持ちいい。温かくて、すべすべしていていい匂いで。首元にすりすりとしてくれるのがまた可愛くて、離せない。
「……波折先輩」
あなたは、ひどいひとだよ。
鑓水先輩の前ではどんな顔をするの、鑓水先輩の前ではどんなふうに乱れるの。俺の気持ちを受け入れる気がないくせに、こんなこと俺にさせないでよ。
「さら……もっと、ぎゅってして」
「……先輩」
図書室で鑓水が言っていた言葉を思い出す。『アイツを欲しいなら、もっと狡猾に生きろよ。純心なままじゃあ、あの頭おかしい奴をものにできないと思うぜ』なんて。
たしかに波折は普通の人とはどこか違うかもしれない。こんな変な体質をもっていて、好きでもない人に触れられることに悦びを感じて。でも――でも。
……俺はただ、波折先輩のことを好き。哀しいこの人を、優しく包んであげたい。普通の愛で、この人を抱きしめたい。
「……すきだよ、先輩」
目頭が熱くなってきて。沙良は波折の頭に顔をうずめた。
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