スイートアンドビターエゴイスト〜淫乱生徒会長の調教日記〜

うめこ

文字の大きさ
76 / 260
第八章:甘く蕩けて心まで

しおりを挟む
 「……ん?」


 昨夜そのまま波折の家に泊まり、波折をめちゃくちゃに犯してそのままベッドで眠りについた……ところまでは鑓水も覚えていた。しかし、朝を迎えて目を覚ましてみると、一緒に寝ていたはずの波折が隣にいない。ベッドには、鑓水ひとりしか寝ていなかった。


「……どこいったあいつ」


 がしがしと頭を掻きながら鑓水は身体を起こす。身体には何も纏っていない。床に放ってあった下着だけを履いて、鑓水はふらりと立ち上がる。

 そのとき。何やら香ばしいいい匂いが鑓水の鼻を掠める。耳をすませば扉の向こうから、ジュージューと何かを焼く音が。不思議に思って扉をあければ……そこに波折はいた。手にはフライパン、その上で焼かれているのはソーセージ。コンロの横に置かれている皿は、二枚だ。


「……何やってんの」

「朝ごはん」

「……はあ」

「慧太、食欲ある?」

「え、普通」

「じゃあ、作っちゃったから食べて」

「それ俺の分なの?」

「うん」


 ちゃんと服を着て、髪も整えて。黒いエプロンを身につけてコンロにむかっている波折の姿。聞けば自分の分の朝食をつくってくれているという。


「……波折」


 名前を呼ばれて、波折は振り返った。そうすれば、鑓水が軽く触れるだけのキスをしてくる。唇は一瞬で離れていって、波折は目を閉じる間もなかった。何を考えているのかわからないような、穏やかな表情をしてキスをしてきた鑓水を、波折は軽く睨みつける。


「……さすがに料理中のセックスは……」

「馬鹿、今のキスはそういうキスじゃねーから」

「……は?」


 意味がわからない、そういう顔をする波折を一瞥して、鑓水は扉をしめて再び元の部屋に戻る。


(……やべえ、ちょっと可愛いとか思っちまった)


 自分と波折は、性奴隷とそれを支配する主人。それ以外のなにものでもない。一瞬だけそんな考えが崩れそうになって、鑓水は冷や汗をかいた。波折も、鑓水のキスに対して疑問を覚えただろう。セックスの開始の合図以外のキスなんて、自分たちには必要ないのだから。


「ねーわ。エプロンが好きとかただの男の性だし、波折とかただの奴隷だから」


 ぶつぶつと独り言を言いながら、鑓水はふと本棚を見つめる。なんというか……こざっぱりとした本棚だ。教科書の類しか置いていない。娯楽と呼べるものが一切置いていなかった。やっぱり波折は少し変わっているなあ……と思ったところで、鑓水はあることに気付く。


「ん?」


 鑓水は一冊の本を引き抜いた。それは、教科書だ。JSで使っているもので、鑓水も同じものを使用している、魔術の教科書。……しかし、ほんの少し、デザインが違うような気がした。よくよく見てみれば、その教科書は初版のものだ。鑓水の記憶が確かならば……自分たちの代が使っているのは、第5版だった。


「なんでこいつ初版なんて持ってんだ?」

「……慧太」

「うおっ」


 先輩などから譲って貰えば初版を持っていてもおかしくない。……が、教科書は強制的に購入することになるから、もう一冊持っていても無駄になる。なんのために? 色々と思案していれば波折が呼んできたものだから、鑓水は驚いて軽く飛び上がってしまった。声のした方を顧みれば、扉の隙間から波折が顔を覗かせて困ったように笑っている。


「ごめん、飲み物だけ持って行ってもらえる?」

「お、おう」


 食事をテーブルに運んでその前に座る。一人部屋用のテーブルは小さくて、向かい合うと近い。そういえば一緒に食事をするのは初めてだ、と思いつつ鑓水は食べ始める。


「あ……旨い」

「そう。慧太の口にあってよかった」


 すました顔で波折はもくもくと食事を続けている。触れ合うとき以外の波折は淡白だ。お世辞でもなんでもなく素直に言った鑓水の言葉にも、とくに反応を示さなかった。


「波折いつもこんなんつくってんの?」

「……そんなに言うほどのもの?」

「まあ……俺がいつもろくなもん食ってないってのもあるけどさ」

「……そうなんだ?」

「俺いつも家に帰ってないしさー」


 ちらりと波折が鑓水を見つめる。何を言うべきか悩むように視線を漂わせて、やはり淡々と話し出す。


「見た目のまんま、不良だな」

「色んな事情があるんだよ」

「ふうん……いつも何食べてんの」

「えー……ファーストフードとかコンビニで買ったやつとか」

「……俺がつくってやってもいいよ。そんなものばっかり食べてたら体壊すでしょ」

「えっ」


 波折の言葉に、ぱっと鑓水が顔をあげる。それは、ほぼ波折と同棲するということになってしまう。食事をつくってもらえるなら嬉しいに越したことはないが……なんとなく、鑓水のなかでそれは「ヤバイ」と思った。

 必要以上の接触は、この関係を崩壊させる。せっかく手に入れた、最高の快感を手放してたまるか。


「いや、いい。そこまでしてもらう必要がない」


「そう。ならいいけど」


 もしも、鑓水が波折に余計な感情を抱いてしまえば、波折は鑓水を拒絶する。沙良に対する態度と同じものをとられるだろう。同棲なんかしていれば、流石の自分もなんらかの情が波折に移ってしまうような気がして……鑓水は波折の提案に、一瞬肝を冷やしたのだった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

先輩、可愛がってください

ゆもたに
BL
棒アイスを頬張ってる先輩を見て、「あー……ち◯ぽぶち込みてぇ」とつい言ってしまった天然な後輩の話

水泳部合宿

RIKUTO
BL
とある田舎の高校にかよう目立たない男子高校生は、快活な水泳部員に半ば強引に合宿に参加する。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...