49 / 236
第五章:キミとの時間は刹那に
6
しおりを挟む
家につくと、早速波折が料理の支度を始めた。袋から食材を出して、テーブルにならべる。食器や道具の位置を沙良に確認する。作る料理は夕紀の希望でハンバーグになった。ひき肉やパン粉、それらしい材料をみて沙良はそわそわとし始める。
「な、波折先輩……俺は何をすれば!」
「……玉ねぎみじん切りして」
「はい!」
波折がつくる、とは言ったものの、結局は沙良が料理の仕方を覚えるためにほとんどの作業を沙良がやることになった。波折が細かく指示をだしながら、沙良の作業をみている。
「ちょっと、沙良……」
「はい?」
「おまえ中学のとき家庭科でやんなかったのか……包丁の使い方!」
「えー、俺が下手すぎて包丁つかう作業は同じ班の友達がやってました」
「……」
玉ねぎを切ろうとした沙良を、波折が慌てて止める。持ち方やら構えやら、色々と危なっかしかったから。
「あっ、」
波折はため息をついて、沙良の後ろに立つ。そして、沙良を抱きすくめるようにして、沙良の手の上から包丁と玉ねぎを持った。
「あ、あっ、波折せんぱ、」
「こっちじゃない、手元を見ろ」
「は、はい」」
波折の髪から、自分と同じシャンプーのいい匂い。触れ合ったところは、じんわりと暖かくなってゆく。自分のよりもすべすべな波折の手のひらの感触が、伝わってくる。
波折が手を動かして包丁の使い方を教えてくれているものの、正直頭にはいってこなかった。波折のことで頭がいっぱいだった。
この調子でずっと最後まで教えてくれるのだろうか。最後までもつかな、なんて情けないことを沙良は考えはじめてしまっていた。
「な、波折先輩……俺は何をすれば!」
「……玉ねぎみじん切りして」
「はい!」
波折がつくる、とは言ったものの、結局は沙良が料理の仕方を覚えるためにほとんどの作業を沙良がやることになった。波折が細かく指示をだしながら、沙良の作業をみている。
「ちょっと、沙良……」
「はい?」
「おまえ中学のとき家庭科でやんなかったのか……包丁の使い方!」
「えー、俺が下手すぎて包丁つかう作業は同じ班の友達がやってました」
「……」
玉ねぎを切ろうとした沙良を、波折が慌てて止める。持ち方やら構えやら、色々と危なっかしかったから。
「あっ、」
波折はため息をついて、沙良の後ろに立つ。そして、沙良を抱きすくめるようにして、沙良の手の上から包丁と玉ねぎを持った。
「あ、あっ、波折せんぱ、」
「こっちじゃない、手元を見ろ」
「は、はい」」
波折の髪から、自分と同じシャンプーのいい匂い。触れ合ったところは、じんわりと暖かくなってゆく。自分のよりもすべすべな波折の手のひらの感触が、伝わってくる。
波折が手を動かして包丁の使い方を教えてくれているものの、正直頭にはいってこなかった。波折のことで頭がいっぱいだった。
この調子でずっと最後まで教えてくれるのだろうか。最後までもつかな、なんて情けないことを沙良は考えはじめてしまっていた。
1
お気に入りに追加
68
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ガテンの処理事情
雄
BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。
ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる