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第二章:チョコレートの甘い甘い罠

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「神藤君……どうしたの。今日ずっと辛そうだったけど……具合悪い?」

「いちごみるく飲み過ぎて腹痛いそうです~!」


 淺羽先生の特別授業。大好きなはずの授業なのに、沙良の気分は最悪だった。ひさしぶりに飲んだいちごみるくがなかなかに美味しくてぐいぐいと飲んでいたら、お腹を壊してしまったのだ。普段乳飲料をあまり飲まないというのもあるかもしれない。授業が終わって、授業中ずっと顔を青くして腹を抱えていた沙良のもとに淺羽が心配してやってくる。


「く、くそ……会長許せない……」

「たぶんそれ、会長さん悪くないよ」


「会長?」


 沙良と結月のやりとりに、淺羽は興味をもったようだ。不思議そうな顔をして話に割り込んでくる。


「沙良ちゃん、会長さんと仲悪いんですよ~」

「あれ、そうなの? 副会長なのに」


「お、俺は仲良くしようとした! でもあっちがなんか!」


 淺羽の前で波折と仲が悪いことを言われて、沙良はぶすっとしながら言い訳のようなことを言う。副会長として、生徒会長と仲が悪いのはあまりよくない、というのは自分でもわかっているのだ。

 そんな沙良をみて、淺羽はにやにやと笑う。


「神藤君……波折と、仲良くしたいとは思っているんだ?」

「ま、まあ……でも、俺が近付いていっても波折先輩、拒絶してくるし」


 本当はもう、仲良くしたいなんて思っていない。でも、淺羽の手前、そんなことを言うわけにもいかず。沙良はもごもごと答える。そうすれば、淺羽はにこっと笑ってこう言った。


「餌付けしてみたら?」

「……餌付け?」

「美味しいものでもあげてみよう!」

「……いやいや、犬猫じゃあるまいし」


 まるで名案!とでも言うようにいってくる淺羽に、沙良は苦笑する。相変わらず冗談ばかり言う人だ。
 
 しかし、淺羽は沙良の微妙な反応に気付いているのかいないのか、ポケットからなにかを取り出して差し出してくる。


「これあげるよ。淺羽先生の特別なチョコレート!とでも言えば波折、きっとよろこんで受け取るから」

「あっ、これ淺羽先生のっていうか、あれじゃないですか! なんか高い高級チョコレート!」

「……まあ、そうです、高級チョコレートだね。とりあえずあげるからさ、これで波折とも仲直りしておいて!」


 沙良は淺羽からチョコレートを受け取る。お土産なんかにすると喜ばれる、人気の高級チョコレートだ。もらえば確実に喜ぶような代物ではある。ただ、これくらいであの生徒会長が仲良くしてくれるとは思えない。

 しかし、淺羽は生徒会内で仲違いしていることをあまりよく思っていないのだろう。沙良自身、今の状況を良いとは思っていない。ここは淺羽の気遣いにちゃんと応えないと、そう思って、沙良は受け取ったチョコレートをポケットのなかにしまいこんだ。
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