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閑話休題

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 もっと、もっと……今日だけは、何もかもが赦されるから。

 契はビクッ! ビクッ! と体を震わせながら、氷高のマーキングを受け入れた。熱と痛みと快楽で、理性が吹っ飛びそうだった。


「……契、」

「あ、……」


 契の首から口を離し、氷高は自らがつけた痕を見つめる。くっきりと残った歯型は少し鬱血していて痛々しい。

 氷高はその痕に指を這わせた。それを見つめる氷高の目にはゆらりゆらりと炎が宿っていて、毒々しいほどの劣情に契は体の奥が震えるのを感じた。


「は、ぅッ……あ、……あ 」


 再び、氷高が契の首筋を咬む。そして、同時に秘部に指をいれてきた。ゾクンッ、と電流が全身に走って、契は仰け反り声をあげてしまう。


「あっ、んっ、ぁ、あ」


 痛みと快楽と、そして業火のような独占欲。溢れかえるほどの熱を与えられ、契は頭が真っ白になった。狂いそうになった。しかし、氷高の抱えてきたものを受け止めたいという一心で、必死に意識を繋ぎ止める。氷高の背に爪をたてて、肩口に噛み付いて、ぎゅっと氷高にしがみつく。[D:38960]を真っ赤に紅潮させ、瞳を潤ませて、ギリギリのところで耐えていた。


「~~……ッ!」


 氷高の指が、契のいいところを捉える。ぎゅうっと強くなった締め付けに、氷高は契の弱点に気付く。指を折り、集中的にそこを責めあげだした。


「あっ、ひ、ぅっあ、」


 契の声がひっくり返って、儚く甘ったるいものへ変化する。きゅ、きゅ、と何度も氷高の指を締め付けるソコは、すでに達してしまいそうだ。しかし氷高は遠慮することなく、契の全身を揺らすような勢いで手を動かしてくる。

 思わず契が腰を引くと、ぐ、と契の頭を鷲掴みするようにして、氷高は契をホールドした。放さない、と言わんばかりの氷高の行動に、思わず契はきゅんとしてしまう。


「好き、」

「……ッ、」


 責め立てられるなかで、契は氷高の絞り出すような声を聞き取った。頭の中がぐちゃぐちゃで、その言葉の意味を理解することすらも難しかったが、声の色でその言葉に込められた感情を感じ取る。

 懇願するような、祈るような、そんな愛の言葉は。どんな状況でも変わらない、氷高から契への想いだ。こんなにも切なげな「好き」を、契は他に知らない。ぎゅっと胸が締め付けられるような愛おしさを覚えた。


「あっ……」


 昇りつめ、辿り着くその寸前で、氷高が指を引き抜いてきた。ひゅ、と熱が引いていく寂しさに、契は熱を追いかけるように声をあげる。しかし、すぐに熱はやってくる。


「あ、う……」

「契、……」

「あ、あ、あ……」


 氷高が、自身をぐずぐずになった契の秘部に押し当ててきたのだ。じり、じり、と少しずつ熱を契のなかへいれてゆく。

 もどかしい。

 今すぐにでも貫いてくれればいいのに、氷高はなかなか錠を断とうとしない。契を掻き抱く氷高の口から洩れるのは、何度も繰り返される契の名前。大好きなのに求めることを赦されなくて、でも今だけは赦されて……そんな氷高のぐちゃぐちゃになった契への恋心。契の名を呼ぶその声に、痛いほどの氷高の感情が滲んでいた。


「はあ、……ひだか、……さま……きて、……」

「……、契、」


 今は、氷高の方が立場が上だと言ったじゃないか。

 どんなに契が氷高を主人という立場に押しやっても、氷高の魂に根付いてしまった執事の性は拭えないらしい。そんな氷高という人間を契は知っていたから、こうして苦しむ氷高を愛おしいと思った。

 今まで、おまえは苦しんできたんだよな。ずっと、自分を殺してきたんだな。ああ、馬鹿なやつ。せめて、今だけは何もかもを忘れてしまえばいいよ。月にあてられたように、狂ってしまえ。


「……ッ!?」


 理性と本能の狭間でもがき、なかなか奥まで押し込んでこようとしない氷高に焦れて、契は自ら腰を氷高に押し付けた。びく、と震えて驚いた氷高は、唖然と契を見つめる。


「はやく、氷高さまのものにしてください。こんなに、待ってるんだから」
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