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終章 魂の行方
9ー6 それしかない
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『Good evening! Good evening!
Welcome to the field of real werewolf game!』
変わり映えしないアナウンスかと木の床に手をつき身を起こしながら男はぼやいた。
目覚めたばかりの意識をはっきりさせるように腕で額をごしごし横に擦る。
腕に傷はない。
ならば埋め込んだマイクロチップは取られていない。いきなり激しく動かしたのは職場への意識がある合図だ。足のチップも無事らしい。飲み込んだチップは排便をチェックして回収しなくてはならない。
わかっていて自分を見逃している可能性はあるが、職場にここの位置が把握されているなら問題ない。
靴とベルトに隠した武器が無事かは後で調べよう。
それにしても、同じように囮となるべく徘徊した女性捜査員ではなく自分が捕獲されたのは意外だった。
右奥歯を慎重に舌で探り、がつりと噛む。
虫歯の治療跡に見せかけた機器で音声も職場に流れるようになったはずだ。
反対側の左奥歯は見た目は同じだが正体が露見した時用の毒薬だ。間違ってはならないので少し緊張した。
「何言ってるんだよっ!」
「あたし英語わからない!」
悲鳴の中にアイゴーという叫びやどうなっているんだとの韓国語が混ざる。
(1、2……3人が韓国人か)
情報通り過ぎて反吐が出た。
ーーーーー
この辺りは古戦場になったようですと言われ、
「子どものエンペラーが入水したんだよな」
とすぐ口をついた。
「ご存じなんですか?」
「誰かから聞いたのかどこかで読んだのか……覚えていない」
少し考えたがどうでもいいことだ。
大英帝国と同じで日本は沈んだ大国だと思っていた。
実際に来てみると徹底した清潔さ、最大限に快適さを保つよう管理されたサービスに感嘆した。第二次世界大戦で原爆を落とされても自力で復活し成長した「アジアの大国」にはまだまだ見る価値がある。
だからリアル人狼ゲームはこの国から生まれたのかとも納得した。
管理とルールに従うことに慣れた人々だから可能になる「ショー」だ。
インド人には向かない!
あいつらはルールなど好きなように破ってゲーム自体を破壊していく。
アフリカではルール把握前の暴力で人が足りなくなって成立しなかったショーはあったがゲーム自体の破壊はなかったと聞く。東欧でも普通にショーは成功していた。
「だからもし間違ってインド人を捕獲したらすぐに殺せ。邪魔になる」
「いいんですか」
ああと片腕となったベトナム人の部下、副社長に答える。
インドの川のように狭い海峡を見ながら副社長と女性秘書と三人、よく整備された海辺の道を歩く。通り過ぎた集団の言葉の響きにはっとした。
「韓国語か?」
「おそらく」
副社長は実習生としてこの国に滞在している間酷い目に合ったと日本を恨んでいた。お陰で日本語は堪能だ。そしてベトナム戦争の時郷里の村が韓国兵士に受けた仕打ちは語り伝えられていて韓国も憎んでいた。
この仕事には最適だ。
リアル人狼ゲームは言葉が通じる者同士では面白くない。
解説を読んだ限りではマラヤラム語とヒンディー語よりは近いように感じたがそれでも日本語と韓国語は互いに通じないという。
おまけに韓国には日本の植民地だった時代がある。
隣国同士とは元々関係が微妙なものなのに我々が大英帝国に抱く感情同様、元宗主国への感情が良い訳はない。
下関には韓国から定期運航のフェリーが到着する。
ターミナルを張れば韓国人を捕獲することはたやすいだろう。
「半々でお考えですか」
「いいや。どちらでもいいから片方を少なくしよう」
観光客がまとめて取れれば日本人をマイノリティに、そうでなければ逆に。
「少数派がいる方が集団は歪む。それとショーの運営は英語だ。統計的に英語力で劣る日本人は不利になるだろうな」
副社長はちらりと彼を挟んだ反対側を早足で歩く女性秘書を見遣る。
「彼女はいいんだ。『天才』だから。ギニには大きく期待している」
自分の名前が出てきて首をかしげる彼女にゆっくりしたヒンディーで語りかけたが結局翻訳アプリを見せた方が理解度は高かった。
「CEO、また潜入しますか?」
「止めてくれ。インド人がいたらそれだけで我々の関与が疑われる。君はあくまで運営側だ」
このようにギニはあまり賢くない。
監視員としてヒンディー語に日常的に接していても全く上達しなかったし、アフリカ支社でも簡単な買い物程度までしか現地語は覚えなかったらしい。そちらの方が彼には不思議だ。
人材マッチングアプリに、
『リアル人狼ゲームの経験』
と書いて求職していたのを見て絶句し、すぐに連絡をとってアカウントを削除させた。遠方の都市まで出向くと、
『ラジューサブチーフ! いえ、チーフに昇格なさっていたでしょうか?』
アフリカ行きの監視員だとは分かったが呼び名が思い出せない。
『私、ギニです! そう呼ばれてました!』
彼女はリアル人狼ゲームでしか生きられないとラジューに訴えた。
『他の子は売春婦になったって。帰ったって売春宿でしか生きられないでしょう? 私も同じでリアル人狼しか人生にないんです』
彼女以外のアフリカ放逐組女子は売春宿で見つかってインドに帰国させられた。
家族や地域に受け入れられず娼婦として生きるしかないとギニは言っているのだろう。実際には、帰国したうちの一人が援助団体を経て工房で技術を身に着け今では縫製の経営側に回っていると雑誌記事で読んだが、黙っておこう。
自分の可能性を信じないうちはその程度だと経験上わかっている。
『それなら一緒に仕事をしよう』
ラジューは神様と自分を信じている。少年院では世の中のことも学科も熱心に勉強した。出所してからは両親や兄のサポートもあり同年代から少し遅れるだけで大学を卒業した。
がその後はお決まりの無職だ。未成年だったため前科はつかなくてもコネなく地縁のサポートも期待出来ない大卒者の就業は厳しい。
ならば起業する。
他の道でも良かった。
だがラジューはもう一度リアル人狼ゲームに挑戦してみたかった。
警察や第三ゲーム絡みの政治家に邪魔をされたが自分ならもっと上手い運営が出来る。三回ゲームから生還したギニが一緒ならまして心強い。
顧客データを持っていないのは痛かったがインド在住の外国人に接触し援助と客の紹介に漕ぎつけた。ただし今回はお試しとのことで出資は少ない。
だから小さく開催するしかない。
12人に人狼4人が理想だが、
「コンパクトに9人でいくか。マイノリティ側は3人程度、人狼も同数。今までのショーと違うのは殺しをしない奴は勝者にしない」
人狼は多めにかつ有利なルールを付け加える。
人狼の中では誰が殺してもいいがゲーム終了までに手を下さなかった者は「獣もどき」に降格、殺害する。
勝者には約束した賞金を与えるが、人殺しだと暴露された時のことはジョージ遺族やナラヤンの惨状を例に脅しておく。
「もし村人だの象ー日本ではオリジナルの狐の方がいいかなーが勝ったら君はどうする?」
「残った中で戦わせたらどうでしょう。生き延びた人だけが勝者ってことで」
「いいな」
ギニに微笑む。
「最終試験、とルールで提示しておくといいかもしれませんね」
聞いた副社長も頷く。彼は故国で既に何人もの仲間を集めている。ネットでの監視はベトナムに本拠地を置き、日本では実務作業だけを行う。
「そこは韓国風にイカゲームっぽくやるか」
面倒なのは日本も韓国も警察がまともで小金を掴ませる懐柔が効きそうにないことだ。外国人が金を差し出しても怪しまれるだけなのはインドもそうだろうが、行方不明者が多数出たなら徹底した捜査がされそうでやっかいだ。
管理社会は自分たちに不利にも働く。
廃業したカプセルホテルを買い取ったがホテルの営業許可を取るのは厳し過ぎて断念し企業の研修所として設置した。過程で雇った日本人弁護士は何やら裏の手を勧めて来たので切り捨てた。
日本の裏社会YAKUZAの恐ろしさは知られている。彼らと接触したらおしまいだ。
インド最終のショーでもがマフィアが裏切って高校生たちの死体という証拠が出てしまったのが崩壊につながった。奴らは結局金だ。
闇社会とは一線を引き正業のビジネスとして事業を行う。この点についてラジューはミッタルより厳しい。
各カプセルを屋外に離して設置し中央棟は小屋を組み立てた。敷地を高い塀で囲った会場はもう作成済みだ。
「警察には縄張りがあります。海峡のこちらと向こうでは県が違う。双方からピックアップしましょう」
県は勿論市や町の境を越えて計画的に誘拐しようと副社長が提案する。
『お前がしたことは誘拐で人殺しだ』
『罪もない同世代の若者たちの苦痛を、残された家族の悔しさが想像出来ないか?』
取り調べで雨が降るように言われたことはラジューには全く響かなかった。
間引きで抜かれる芽があるように。貧しさに街で餓死する者がいるように。
食物連鎖のように人は人を踏んで生きていく。村にいる時は全くわからなかったがゲーム潜入時に実感した。使用人など踏んでもいい、または札束で殴ればいいと思っていたお坊ちゃんお嬢ちゃんたちの断末魔は快感だった。
(あの人は、悪くなかったな)
施設育ちの孤児だった少年を思い出す。
自分が少年院にいる間にケララの自宅で歓待してくれと頼んだのに来てくれて、はじめは戸惑ったようだが途中から美味しい美味しいと食事に手を伸ばしたそうだ。
家族について彼が理解を深めたかは知らないが、家のご飯を味わってくれたことがうれしかった。
今はどこで何をしているんだろう。
ルチアーノ、という珍しい名前だが検索しても全く引っかからない。家族は出来ただろうか。自分だけのご飯を食べているだろうか?
『一四二ゼロ、対象、関門トンネル人道へ移動』
尾行は順調に進んでいる。
「ラジュー、ギニと呼んでいる」
パスポートと異なる名前は、
「ミッタルの事件の残党と同じだ」
それだけでは模倣の可能性もあるが顔写真からは本人の可能性が高い。サブチーフの潜入者とアフリカ支社下働きの女性社員、どちらも事件当時は未成年でインドでも身元は報道されず普通に社会復帰しているが、
「あんまり日本を馬鹿にするんじゃないぞ、お前ら」
『インド側カウンターパートはCBIと通告あり』
Welcome to the field of real werewolf game!』
変わり映えしないアナウンスかと木の床に手をつき身を起こしながら男はぼやいた。
目覚めたばかりの意識をはっきりさせるように腕で額をごしごし横に擦る。
腕に傷はない。
ならば埋め込んだマイクロチップは取られていない。いきなり激しく動かしたのは職場への意識がある合図だ。足のチップも無事らしい。飲み込んだチップは排便をチェックして回収しなくてはならない。
わかっていて自分を見逃している可能性はあるが、職場にここの位置が把握されているなら問題ない。
靴とベルトに隠した武器が無事かは後で調べよう。
それにしても、同じように囮となるべく徘徊した女性捜査員ではなく自分が捕獲されたのは意外だった。
右奥歯を慎重に舌で探り、がつりと噛む。
虫歯の治療跡に見せかけた機器で音声も職場に流れるようになったはずだ。
反対側の左奥歯は見た目は同じだが正体が露見した時用の毒薬だ。間違ってはならないので少し緊張した。
「何言ってるんだよっ!」
「あたし英語わからない!」
悲鳴の中にアイゴーという叫びやどうなっているんだとの韓国語が混ざる。
(1、2……3人が韓国人か)
情報通り過ぎて反吐が出た。
ーーーーー
この辺りは古戦場になったようですと言われ、
「子どものエンペラーが入水したんだよな」
とすぐ口をついた。
「ご存じなんですか?」
「誰かから聞いたのかどこかで読んだのか……覚えていない」
少し考えたがどうでもいいことだ。
大英帝国と同じで日本は沈んだ大国だと思っていた。
実際に来てみると徹底した清潔さ、最大限に快適さを保つよう管理されたサービスに感嘆した。第二次世界大戦で原爆を落とされても自力で復活し成長した「アジアの大国」にはまだまだ見る価値がある。
だからリアル人狼ゲームはこの国から生まれたのかとも納得した。
管理とルールに従うことに慣れた人々だから可能になる「ショー」だ。
インド人には向かない!
あいつらはルールなど好きなように破ってゲーム自体を破壊していく。
アフリカではルール把握前の暴力で人が足りなくなって成立しなかったショーはあったがゲーム自体の破壊はなかったと聞く。東欧でも普通にショーは成功していた。
「だからもし間違ってインド人を捕獲したらすぐに殺せ。邪魔になる」
「いいんですか」
ああと片腕となったベトナム人の部下、副社長に答える。
インドの川のように狭い海峡を見ながら副社長と女性秘書と三人、よく整備された海辺の道を歩く。通り過ぎた集団の言葉の響きにはっとした。
「韓国語か?」
「おそらく」
副社長は実習生としてこの国に滞在している間酷い目に合ったと日本を恨んでいた。お陰で日本語は堪能だ。そしてベトナム戦争の時郷里の村が韓国兵士に受けた仕打ちは語り伝えられていて韓国も憎んでいた。
この仕事には最適だ。
リアル人狼ゲームは言葉が通じる者同士では面白くない。
解説を読んだ限りではマラヤラム語とヒンディー語よりは近いように感じたがそれでも日本語と韓国語は互いに通じないという。
おまけに韓国には日本の植民地だった時代がある。
隣国同士とは元々関係が微妙なものなのに我々が大英帝国に抱く感情同様、元宗主国への感情が良い訳はない。
下関には韓国から定期運航のフェリーが到着する。
ターミナルを張れば韓国人を捕獲することはたやすいだろう。
「半々でお考えですか」
「いいや。どちらでもいいから片方を少なくしよう」
観光客がまとめて取れれば日本人をマイノリティに、そうでなければ逆に。
「少数派がいる方が集団は歪む。それとショーの運営は英語だ。統計的に英語力で劣る日本人は不利になるだろうな」
副社長はちらりと彼を挟んだ反対側を早足で歩く女性秘書を見遣る。
「彼女はいいんだ。『天才』だから。ギニには大きく期待している」
自分の名前が出てきて首をかしげる彼女にゆっくりしたヒンディーで語りかけたが結局翻訳アプリを見せた方が理解度は高かった。
「CEO、また潜入しますか?」
「止めてくれ。インド人がいたらそれだけで我々の関与が疑われる。君はあくまで運営側だ」
このようにギニはあまり賢くない。
監視員としてヒンディー語に日常的に接していても全く上達しなかったし、アフリカ支社でも簡単な買い物程度までしか現地語は覚えなかったらしい。そちらの方が彼には不思議だ。
人材マッチングアプリに、
『リアル人狼ゲームの経験』
と書いて求職していたのを見て絶句し、すぐに連絡をとってアカウントを削除させた。遠方の都市まで出向くと、
『ラジューサブチーフ! いえ、チーフに昇格なさっていたでしょうか?』
アフリカ行きの監視員だとは分かったが呼び名が思い出せない。
『私、ギニです! そう呼ばれてました!』
彼女はリアル人狼ゲームでしか生きられないとラジューに訴えた。
『他の子は売春婦になったって。帰ったって売春宿でしか生きられないでしょう? 私も同じでリアル人狼しか人生にないんです』
彼女以外のアフリカ放逐組女子は売春宿で見つかってインドに帰国させられた。
家族や地域に受け入れられず娼婦として生きるしかないとギニは言っているのだろう。実際には、帰国したうちの一人が援助団体を経て工房で技術を身に着け今では縫製の経営側に回っていると雑誌記事で読んだが、黙っておこう。
自分の可能性を信じないうちはその程度だと経験上わかっている。
『それなら一緒に仕事をしよう』
ラジューは神様と自分を信じている。少年院では世の中のことも学科も熱心に勉強した。出所してからは両親や兄のサポートもあり同年代から少し遅れるだけで大学を卒業した。
がその後はお決まりの無職だ。未成年だったため前科はつかなくてもコネなく地縁のサポートも期待出来ない大卒者の就業は厳しい。
ならば起業する。
他の道でも良かった。
だがラジューはもう一度リアル人狼ゲームに挑戦してみたかった。
警察や第三ゲーム絡みの政治家に邪魔をされたが自分ならもっと上手い運営が出来る。三回ゲームから生還したギニが一緒ならまして心強い。
顧客データを持っていないのは痛かったがインド在住の外国人に接触し援助と客の紹介に漕ぎつけた。ただし今回はお試しとのことで出資は少ない。
だから小さく開催するしかない。
12人に人狼4人が理想だが、
「コンパクトに9人でいくか。マイノリティ側は3人程度、人狼も同数。今までのショーと違うのは殺しをしない奴は勝者にしない」
人狼は多めにかつ有利なルールを付け加える。
人狼の中では誰が殺してもいいがゲーム終了までに手を下さなかった者は「獣もどき」に降格、殺害する。
勝者には約束した賞金を与えるが、人殺しだと暴露された時のことはジョージ遺族やナラヤンの惨状を例に脅しておく。
「もし村人だの象ー日本ではオリジナルの狐の方がいいかなーが勝ったら君はどうする?」
「残った中で戦わせたらどうでしょう。生き延びた人だけが勝者ってことで」
「いいな」
ギニに微笑む。
「最終試験、とルールで提示しておくといいかもしれませんね」
聞いた副社長も頷く。彼は故国で既に何人もの仲間を集めている。ネットでの監視はベトナムに本拠地を置き、日本では実務作業だけを行う。
「そこは韓国風にイカゲームっぽくやるか」
面倒なのは日本も韓国も警察がまともで小金を掴ませる懐柔が効きそうにないことだ。外国人が金を差し出しても怪しまれるだけなのはインドもそうだろうが、行方不明者が多数出たなら徹底した捜査がされそうでやっかいだ。
管理社会は自分たちに不利にも働く。
廃業したカプセルホテルを買い取ったがホテルの営業許可を取るのは厳し過ぎて断念し企業の研修所として設置した。過程で雇った日本人弁護士は何やら裏の手を勧めて来たので切り捨てた。
日本の裏社会YAKUZAの恐ろしさは知られている。彼らと接触したらおしまいだ。
インド最終のショーでもがマフィアが裏切って高校生たちの死体という証拠が出てしまったのが崩壊につながった。奴らは結局金だ。
闇社会とは一線を引き正業のビジネスとして事業を行う。この点についてラジューはミッタルより厳しい。
各カプセルを屋外に離して設置し中央棟は小屋を組み立てた。敷地を高い塀で囲った会場はもう作成済みだ。
「警察には縄張りがあります。海峡のこちらと向こうでは県が違う。双方からピックアップしましょう」
県は勿論市や町の境を越えて計画的に誘拐しようと副社長が提案する。
『お前がしたことは誘拐で人殺しだ』
『罪もない同世代の若者たちの苦痛を、残された家族の悔しさが想像出来ないか?』
取り調べで雨が降るように言われたことはラジューには全く響かなかった。
間引きで抜かれる芽があるように。貧しさに街で餓死する者がいるように。
食物連鎖のように人は人を踏んで生きていく。村にいる時は全くわからなかったがゲーム潜入時に実感した。使用人など踏んでもいい、または札束で殴ればいいと思っていたお坊ちゃんお嬢ちゃんたちの断末魔は快感だった。
(あの人は、悪くなかったな)
施設育ちの孤児だった少年を思い出す。
自分が少年院にいる間にケララの自宅で歓待してくれと頼んだのに来てくれて、はじめは戸惑ったようだが途中から美味しい美味しいと食事に手を伸ばしたそうだ。
家族について彼が理解を深めたかは知らないが、家のご飯を味わってくれたことがうれしかった。
今はどこで何をしているんだろう。
ルチアーノ、という珍しい名前だが検索しても全く引っかからない。家族は出来ただろうか。自分だけのご飯を食べているだろうか?
『一四二ゼロ、対象、関門トンネル人道へ移動』
尾行は順調に進んでいる。
「ラジュー、ギニと呼んでいる」
パスポートと異なる名前は、
「ミッタルの事件の残党と同じだ」
それだけでは模倣の可能性もあるが顔写真からは本人の可能性が高い。サブチーフの潜入者とアフリカ支社下働きの女性社員、どちらも事件当時は未成年でインドでも身元は報道されず普通に社会復帰しているが、
「あんまり日本を馬鹿にするんじゃないぞ、お前ら」
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