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第6章 狼はすぐそこに(6日目)
6ー23 切り札
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ズドン!
銃声に思わず顔を背ける。
がこの状況下覚悟を決めルチアーノは速やかに顔を戻す。
ヴィノードは無事だった。
がく、がくと開いた口が動き目を半端に見開く。
向こうに立ったイジャイが鳥面のこめかみに突きつけるのは銀色の、
(銃か?)
「動くな。そっちこそ」
一方鳥面のコートから覗く手にもまだ銃がー
ルチアーノは素早くカーペットに転がりテーブル下を潜り立ち上がるや否や鳥面の右手首を上から叩いた。何かの下を抜けるのは小柄な人間が得意とするところだ。
「っっ……」
ごく小さいうめきと共にこちらも銀色の銃が薄ピンク色のカーペットに転がる。だが思いの外遠くへ落ちテーブル下象面の黒コート近くに転がりー
(しまった!)
象面がかがもうとした時、横から伸びた足が踏んで寄せ銃を確保する。アッバースだ。こういう時長身で足が長いのは便利だ。
イジャイが右手に握った銃は鳥面の左側から、アッバースは正面に動き両手で持った銃を眉間に突き付けた。ルチアーノはアッバースの斜め後ろ、ヴィノードから少し離れてナイナとアディティが座るテーブル前に立って回りを警戒した。
黒コートたちがこちらを注視する。モニターはいつの間に消えている。ヴィノードの向こうではナラヤンが白いテーブルの前面を強く掴んで何かに耐えている。
「これが俺の切り札だ」
イジャイの声にはごく小さな震えがあった。
「拳銃権だ」
一度ごくりと唾を飲み込む。
「銃弾の入れ方、構え方に撃ち方、ご丁寧に全部説明しておいてくれたよね。その通りにやってみたらちゃんと撃てたよ」
鳥面の足元を軽く蹴る。左足の横、カーペットがえぐれている。
これもまた警告で外したのか外れたのか。ルチアーノなら何も言わず体を撃つが。
「俺たち全員が建物の外に出るまで動くな」
「いや敷地の外に出るまでだ! 何があるかわからねえ。お前リーダーじゃねえのか、指示しろ」
アッバースが命じた。初日脱出権の話を思い出すならどこに何があるかわからないのは同感だ。
「撃てるのか」
鳥面の声は落ち着いていた。ただ先ほどよりかなり小さい。
「撃てるよ。ここの皆を守るためなら」
イジャイの声も張りを取り戻し、部屋に力強く響く。
ルチアーノは疑念を抱く。
「随分感情的なリーダーだね。自分の好き嫌いで人を撃ち殺そうとするの?」
揶揄をのせて鳥面を見る。
「オイ」
アッバースが低く放った。無用に刺激するなというのか。
黒い縁取りの中塗られた白目の中央、丸く黒い目の穴から鳥面がこちらを窺ったように思えた。
「18番の処刑は仕事だ」
より声が低まる。
取り合わずアッバースが銃口を眉間に触れんばかりに押し付けた。
「命じろ。俺たち全員が逃げ切るまでここから動くな。さもないとお前の頭に穴が開くぞ」
少しおき鳥面が小さく息を吸った。上がった肩がふっと落ち、
「全員に指示する。作業続行」
少し声が高くなっていた。やはりそうか。だが内容は?
(!)
イジャイが目を剥く。
「繰り返す。作業続行。18番と14番は殺害、それ他は移送。わたしが殺されたらアナウンスの指示に従ってくれ」
先ほどよりは通る声。花に水をとでもいうような淡々とした指示を会議室に行き渡らせる。
黒コートたちは互いに様子を窺い体が揺れるが、鳥面に突きつけられた二丁の銃にそれ以上動こうとしない。
18のヴィノードは首輪で殺し損なっていた投票での処刑分、オークションで入札がなかった14番イジャイは「処分」。ルチアーノたち落札済みの「商品」はお届けということだ。
鳥面はアッバースに向かい気持ち顔を上げ言い放った。
「わたしひとり殺して我が社がどうかなるとでも?」
「……」
(我が社?)
会社でやっているのか?
「どうぞ。撃て。お前らは敗者だ。もうこの世にはいない。それも同じ。まだ息をしているのはお客様のご慈悲だ。感謝して頭を下げろ。這いつくばれ。運命は変わらない」
イジャイの銃がふらついた。銃口はこめかみに向いたままだ。
(撃つな)
ここで奴を殺せば黒コートたちが総員でルチアーノたちを襲いかねない。リーダーの彼が人質にならないならまして下の人間は使えない。スタッフの命ですら軽いのは「リアル人狼ゲーム」らし過ぎて吐き気がした。
主よ、あなたの意思を速やかに地上のここへー
「今てめえが生きているのは俺の慈悲だ!」
アッバースは容赦なく叩き斬った。
銃声に思わず顔を背ける。
がこの状況下覚悟を決めルチアーノは速やかに顔を戻す。
ヴィノードは無事だった。
がく、がくと開いた口が動き目を半端に見開く。
向こうに立ったイジャイが鳥面のこめかみに突きつけるのは銀色の、
(銃か?)
「動くな。そっちこそ」
一方鳥面のコートから覗く手にもまだ銃がー
ルチアーノは素早くカーペットに転がりテーブル下を潜り立ち上がるや否や鳥面の右手首を上から叩いた。何かの下を抜けるのは小柄な人間が得意とするところだ。
「っっ……」
ごく小さいうめきと共にこちらも銀色の銃が薄ピンク色のカーペットに転がる。だが思いの外遠くへ落ちテーブル下象面の黒コート近くに転がりー
(しまった!)
象面がかがもうとした時、横から伸びた足が踏んで寄せ銃を確保する。アッバースだ。こういう時長身で足が長いのは便利だ。
イジャイが右手に握った銃は鳥面の左側から、アッバースは正面に動き両手で持った銃を眉間に突き付けた。ルチアーノはアッバースの斜め後ろ、ヴィノードから少し離れてナイナとアディティが座るテーブル前に立って回りを警戒した。
黒コートたちがこちらを注視する。モニターはいつの間に消えている。ヴィノードの向こうではナラヤンが白いテーブルの前面を強く掴んで何かに耐えている。
「これが俺の切り札だ」
イジャイの声にはごく小さな震えがあった。
「拳銃権だ」
一度ごくりと唾を飲み込む。
「銃弾の入れ方、構え方に撃ち方、ご丁寧に全部説明しておいてくれたよね。その通りにやってみたらちゃんと撃てたよ」
鳥面の足元を軽く蹴る。左足の横、カーペットがえぐれている。
これもまた警告で外したのか外れたのか。ルチアーノなら何も言わず体を撃つが。
「俺たち全員が建物の外に出るまで動くな」
「いや敷地の外に出るまでだ! 何があるかわからねえ。お前リーダーじゃねえのか、指示しろ」
アッバースが命じた。初日脱出権の話を思い出すならどこに何があるかわからないのは同感だ。
「撃てるのか」
鳥面の声は落ち着いていた。ただ先ほどよりかなり小さい。
「撃てるよ。ここの皆を守るためなら」
イジャイの声も張りを取り戻し、部屋に力強く響く。
ルチアーノは疑念を抱く。
「随分感情的なリーダーだね。自分の好き嫌いで人を撃ち殺そうとするの?」
揶揄をのせて鳥面を見る。
「オイ」
アッバースが低く放った。無用に刺激するなというのか。
黒い縁取りの中塗られた白目の中央、丸く黒い目の穴から鳥面がこちらを窺ったように思えた。
「18番の処刑は仕事だ」
より声が低まる。
取り合わずアッバースが銃口を眉間に触れんばかりに押し付けた。
「命じろ。俺たち全員が逃げ切るまでここから動くな。さもないとお前の頭に穴が開くぞ」
少しおき鳥面が小さく息を吸った。上がった肩がふっと落ち、
「全員に指示する。作業続行」
少し声が高くなっていた。やはりそうか。だが内容は?
(!)
イジャイが目を剥く。
「繰り返す。作業続行。18番と14番は殺害、それ他は移送。わたしが殺されたらアナウンスの指示に従ってくれ」
先ほどよりは通る声。花に水をとでもいうような淡々とした指示を会議室に行き渡らせる。
黒コートたちは互いに様子を窺い体が揺れるが、鳥面に突きつけられた二丁の銃にそれ以上動こうとしない。
18のヴィノードは首輪で殺し損なっていた投票での処刑分、オークションで入札がなかった14番イジャイは「処分」。ルチアーノたち落札済みの「商品」はお届けということだ。
鳥面はアッバースに向かい気持ち顔を上げ言い放った。
「わたしひとり殺して我が社がどうかなるとでも?」
「……」
(我が社?)
会社でやっているのか?
「どうぞ。撃て。お前らは敗者だ。もうこの世にはいない。それも同じ。まだ息をしているのはお客様のご慈悲だ。感謝して頭を下げろ。這いつくばれ。運命は変わらない」
イジャイの銃がふらついた。銃口はこめかみに向いたままだ。
(撃つな)
ここで奴を殺せば黒コートたちが総員でルチアーノたちを襲いかねない。リーダーの彼が人質にならないならまして下の人間は使えない。スタッフの命ですら軽いのは「リアル人狼ゲーム」らし過ぎて吐き気がした。
主よ、あなたの意思を速やかに地上のここへー
「今てめえが生きているのは俺の慈悲だ!」
アッバースは容赦なく叩き斬った。
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