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第2章 これは生き残りのゲーム(2日目)

2ー4 意図

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「なあ教えてくれよ! どうしたらルクミニー先生の仇をとれるんだよ!!」
「まずは生き延びることだ」
 被さるように詰めるヴィノードを見上げスティーブンは返す。
「ったく使えないなあ! 意味ねえだろそんなの!」
 お前ほどの奴がそれかよ、と一度足をふらつかせてから男子棟方面へ去っていく。酷いよねと女子が慰めてくれるが、
「いや。彼が欲しかった具体的な方策を答えられなかったんだ。仕方ない」
 自分も立ち上がる。
「ヴィノードは親友ふたりを一気に失ったばかりだ。責めるのは酷だよ」
(まだ気付いていないのか)
 涙の跡が多く残る女子たち、呆然としている男子勢を眺める。
(あれだけ殺されたのに)
 ーここでは生き延びること自体がかなり困難だ。


「何が気になるの?」
 昨日食材庫のチェックを頼んだアディティたちに再度確認してもらう。
 ノンベジ方は現在の人数なら1週間は持つだろうと彼女は昨日の見解を修正した。人数が減ったのだから当然だ。
 黙ってしまった自分にアディティが詰める。
 ボリュームのある癖毛を丁寧に一本の三つ編みにしているのも、眠たげに見える目もいつも変わりがない。落ち着いた部類でこの状況下では頼れる存在だ。
「『奴ら』の意図がわからない。計算が合わないんだよ」
 広間に置かれたラミネート加工のルールを再度読み直して考えた。
 今朝確認した死者のリストをナイフで切り込んだダンボールに目を落とす。

「『ゲーム』は人狼と村人の人数で終了が決まる。村人が勝つなら、最速を仮定しても二日目の今夜から毎日ピンポイントで人狼が退場するとしてー」
 処刑・退場という言葉が文字通りだと思いたくないが、今までのやり口から見るに彼らは普通にやるだろう。気が重い。
「10日目だ」
 指で示す。
「反対に人狼が勝つなら、当初村人カウントは27人。人狼同数まで減る最速は、毎夜の襲撃と毎晩の投票処刑で全部ピンポイント村人カウントばかり死んでいくとして10日目だ」
 実際には確率から考えても人狼だけ、村人だけが減るケースはあり得ない。もっと時間がかかるはずだ。
「それなのに1週間持たない食糧しか用意してないというのどういうことだ? ひとつは、途中で飢えて食べ物をめぐって争うようになるのまで楽しみたいとおもったから」
「楽しむ?」
 ミナが目を吊り上げる。
「『連中』がってことだよ。僕たちを見せ物にし金儲けしているって言っていただろう?」
「……」
「もう一つは、最初からゲームルールの外でこんな風に人がどんどん死ぬように罠をかけていたから」
「ラームも昨日の、初日脱出権の切り札について罠だって言ったそうよ。」
 それを聞いて恐くなりシュルティが逃げ帰ったのだとアディティが告げる。
「……ラームが言ったのか」

 スティーブンはサントーシュから聞いた。先生の殺害など具体的な出来事はシュルティの方が知っているはずだが、不安定な彼女から直接話を聞くことは出来ていなかった。
「今朝までにゲーム人数に入っていない先生とマヤを抜いても15人が殺された。この調子で減ったらゲームは三日で誰もいなくなって終わりだ」
「そんな……」
 真っ青になるミナに、
「それはないと僕は思う。だったら面倒なルールや配役に切り札、この館なんてお膳立ては必要ないからね」
 宥める。実際にそうも思っている。見せ物ならもっと楽しみたいだろう。
「ともかく、奴らは僕たちをいたぶって面白がっている。何をするにもルールから外れていないかは厳格にみる必要があるね。それが身を守る方法になる。特に切り札関連は注意した方がいい」
 切り札で許可されたことがルールでは許されているか。
 初日脱出権では、夜間の外出はルールの例外だと明記されていたが暴力への許可はなかった。
「女子に広めておいてもらえる? あ、ルチアーノ!」
 チャパティを入れた籠を戻しに来た彼に声をかける。
「この後礼拝室見に行くんだ。マリアも来るから出来れば一緒に」
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