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第1章 リアル人狼ゲームへようこそ(1日目)

1ー17 狼たちは歩み出す

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 人狼は九人。
 ならば他の部屋にもいる、と12時を過ぎたところで部屋を出て広間のある棟に向かい、やがて他の部屋からの「人狼」役と合流した。九人よりは少ないがともかく顔を合わせた彼らがやったのは「現実逃避」だった。
 照明が間引きされた薄暗い中央棟を歩き回り、見つけた二つの謎解きに熱中した。

 一つ目は、火葬室前に安置されていたディーパックの遺体がなくなっていたことだ。くしゃりと丸まったシーツだけが残り、見つけた時には悲鳴をあげた者もいた。
 だが渡り廊下のラーフルの遺体、就寝時刻前の男子棟での怒号などを考え合せ彼らはおよその推測を得た。
 友人の遺体を放置せず葬ってやりたいと思い、ラーフルは最初の火葬が終わるのを待ったのだろう。火葬にかかる時間は20分。最初の二人を火葬室に入れた時既に22時35分を過ぎていた。
 ラーフルの作業猶予は三分程度だ。ひとりで人を引きずって火葬室に入れ、会議室の外を回りベジタリアン食堂前から続く通路を通り渡り廊下へ入ったところで時間切れとなったのではないか。

 もう一つは中央窓の窓ガラスが割れていたことだ。
 22時半からの「説明」時には割れていなかった。その後いつかは不明だが、23時以降なら自分たちではない。
 破片は床に散り中には血らしきものが付いたものもあった。
 小さな四角く区切られたガラスは外部から壊されたということになる。

 次第に恐怖が広がった。
 泥棒や強盗か。無断で住みつき夜を過ごしていた住人か。
 どちらにしろ遭遇していいことはない。
 自分たちをここに閉じ込めた犯人一味ではないかとの意見もあったが鍵を持っているだろうから窓は壊さないと反論が出た。
 身の危険を感じた彼らは一度部屋に戻り、「道具箱」から思い思いの武器を持って再度広間に集まった。ただしそのまま部屋から来ない者もいた。
 人狼の「仕事」についても話しても人殺しなど出来るものかで終わる。
 
 0時45分。
 チクリ。
 首への刺激と共に全員声なく広間の絨毯に倒れた。ある者は頭を抑え、ある者は胸を抑え石の床に首を出して吐き戻す。惨状の中広間各所のモニターが黄色く光った。

『Warning! Warning! Out of rules!』

 黒い文字が禍々しく点滅する。

『人狼は一晩につき1人を殺害しなくてはなりません。このまま具体的に行動へ向かう様子が見えない場合、1時以降、5分ごとに警告薬を注入します」

 モニターに流れた文字に衝撃を受ける。
 薬の「効果」はまだ体に残る。一度でもこの変調だ、麻薬と重なる成分との薬を五分ごとに打たれたらどうなるか。

「3時までに出来なかったら、ではなかったのか」

 ひとりが上に向かい抗議したが返事はなかった。
 頭痛にめまい、速い鼓動、戻らない荒い息。
 体を引きずって絨毯の中央に集まる。部屋に逃げ帰っていた人狼も青い顔で広間に合流した。やがて、
「ひとつ確実なことがあるー」
 ある者が切り出した。
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