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第1章 リアル人狼ゲームへようこそ(1日目)
1ー8 警告2
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「女子、部屋は交換するな! 聞こえているか!」
マリアのいる10号室は広間のある棟に近い。
怒鳴り声に同室のシャキーラと共に部屋を飛び出した。(もうひとりの同室者アディティはまだ部屋に来ていない。食堂で片付け中か寝る前に顔でも洗っているのか)
浅い角度で一ヶ所だけ曲がる渡り廊下は腰高さまでは広間と同じよく磨かれた細い板貼り、上は白い壁紙だ。
二ヶ所ある向かい合わせの窓は全て木の板で外から覆われている。
広間では、スティーブンが肩で息を切らせて立っていた。
ーーーーー
『Warning! Warning! Out of rules!』
『他人の部屋に足を踏み入れてはなりません』
そんなことルールに書いてないぞ!
扉裏に掛けられたラミネート加工の文章綴りを片手にナラヤンが怒鳴ったが、上からは応答がなくディーパックはモニターとPCを派手に放り出して床に倒れ、動かなくなった。
ーーーーー
「早く女子全員に周知してくれ!」
指示されてマリアらは女子棟に走り戻り各部屋を回った。男子はニ階まであるそうだが人数の少ない女子は一階の四部屋だけだ。
ただどこかおかしかった。
クローゼットの衣類はそれぞれにかなり違いがあった。
マリアの所は濃い色に大きな模様のサルワール・カミーズが多く、薄い地色で小花模様のワンピースが好きな自分とは合わなかった。9号室のサニタの所で服を見ようと迎え入れてもらったところマリアも例の警告を受け、
(うっ!)
一時的な薬物の注入を受けた。
チクリと首に感じた後は一瞬でくるりと世界が回り、気がつくと床を叩いていた。頭は痛いし胸はドキドキして目が眩み、二、三分後にようやくまともに動けるようになった。今も吐き気と頭の重さは残っている。
これはもう死ぬのかも、と思った体の異変と恐怖は忘れられない。
本当にとんでもないことに巻き込まれてしまった。
女子は服にはこだわる。棟のあちらこちらで同じことが繰り返され、警告のアナウンスも鳴りっぱなしの状態だった。さすがに自分に割り当てられた部屋以外には入ってはいけないと理解が行き渡る。ただディーパックのようにいきなり、
(そんな酷いことー)
命を奪われた女子はいなかったのだ。
寝る場所そのものを変えようとしたのがいけなかったのだろうか。
間もなく10時半。
マリアは恐い話は聞くつもりもなく早くベッドに入りたかった。休んだら混乱した頭が少しはマシになるかと思った。
(だけど11時からはパソコン見なきゃいけないんだっけ?)
部屋に着いてすぐ確認したがパソコン本体の電源ボタンはテープが貼られ押せなくなっていて、今は作動しなかった。時間が来たら動くのだろうとはサニタの言だ。
クラス全員を拉致した人の命令になど従わなくていいと思うものの、「配役」と「切り札」はそれなりに大事そうだ。
起きているのなら今広間に行った方がいいだろうか。亡くなったクラスメートを見送ることになるかもしれない。
胸元をぎゅっと探るが、いつも付けているクロスのネックレスがない。
意識がなかった間に体を探られたと思うと気持ちが悪い。大事な十字架がないのは心細くてたまらない。また泣きたくなる。
(神様……)
助けてください。クラスの皆と一緒に早く悪い人たちの手から救い出してください。
出来るのは祈ることだけだ。
〈注〉
・サルワール・カミーズ
南アジアの民族衣装。丈の長い上着のサルワール、パンツのカミーズに首や胸元に羽織る大きな布ドゥパタの三点セット。子どもや若い女性がよく着る。
マリアのいる10号室は広間のある棟に近い。
怒鳴り声に同室のシャキーラと共に部屋を飛び出した。(もうひとりの同室者アディティはまだ部屋に来ていない。食堂で片付け中か寝る前に顔でも洗っているのか)
浅い角度で一ヶ所だけ曲がる渡り廊下は腰高さまでは広間と同じよく磨かれた細い板貼り、上は白い壁紙だ。
二ヶ所ある向かい合わせの窓は全て木の板で外から覆われている。
広間では、スティーブンが肩で息を切らせて立っていた。
ーーーーー
『Warning! Warning! Out of rules!』
『他人の部屋に足を踏み入れてはなりません』
そんなことルールに書いてないぞ!
扉裏に掛けられたラミネート加工の文章綴りを片手にナラヤンが怒鳴ったが、上からは応答がなくディーパックはモニターとPCを派手に放り出して床に倒れ、動かなくなった。
ーーーーー
「早く女子全員に周知してくれ!」
指示されてマリアらは女子棟に走り戻り各部屋を回った。男子はニ階まであるそうだが人数の少ない女子は一階の四部屋だけだ。
ただどこかおかしかった。
クローゼットの衣類はそれぞれにかなり違いがあった。
マリアの所は濃い色に大きな模様のサルワール・カミーズが多く、薄い地色で小花模様のワンピースが好きな自分とは合わなかった。9号室のサニタの所で服を見ようと迎え入れてもらったところマリアも例の警告を受け、
(うっ!)
一時的な薬物の注入を受けた。
チクリと首に感じた後は一瞬でくるりと世界が回り、気がつくと床を叩いていた。頭は痛いし胸はドキドキして目が眩み、二、三分後にようやくまともに動けるようになった。今も吐き気と頭の重さは残っている。
これはもう死ぬのかも、と思った体の異変と恐怖は忘れられない。
本当にとんでもないことに巻き込まれてしまった。
女子は服にはこだわる。棟のあちらこちらで同じことが繰り返され、警告のアナウンスも鳴りっぱなしの状態だった。さすがに自分に割り当てられた部屋以外には入ってはいけないと理解が行き渡る。ただディーパックのようにいきなり、
(そんな酷いことー)
命を奪われた女子はいなかったのだ。
寝る場所そのものを変えようとしたのがいけなかったのだろうか。
間もなく10時半。
マリアは恐い話は聞くつもりもなく早くベッドに入りたかった。休んだら混乱した頭が少しはマシになるかと思った。
(だけど11時からはパソコン見なきゃいけないんだっけ?)
部屋に着いてすぐ確認したがパソコン本体の電源ボタンはテープが貼られ押せなくなっていて、今は作動しなかった。時間が来たら動くのだろうとはサニタの言だ。
クラス全員を拉致した人の命令になど従わなくていいと思うものの、「配役」と「切り札」はそれなりに大事そうだ。
起きているのなら今広間に行った方がいいだろうか。亡くなったクラスメートを見送ることになるかもしれない。
胸元をぎゅっと探るが、いつも付けているクロスのネックレスがない。
意識がなかった間に体を探られたと思うと気持ちが悪い。大事な十字架がないのは心細くてたまらない。また泣きたくなる。
(神様……)
助けてください。クラスの皆と一緒に早く悪い人たちの手から救い出してください。
出来るのは祈ることだけだ。
〈注〉
・サルワール・カミーズ
南アジアの民族衣装。丈の長い上着のサルワール、パンツのカミーズに首や胸元に羽織る大きな布ドゥパタの三点セット。子どもや若い女性がよく着る。
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