86 / 94
86.
しおりを挟む
あくる日。
胸を弾ませながらいつもの通学路を歩く。
涼しくも生温い風が吹き抜け、青々とした木々が揺れる。校舎前の花壇には蕾を携えた紫陽花が群生していて、雨垂れを心待ちにしていた。
もうそんな季節になったのかと実感しつつ、大変なのはこれからだと自分を鼓舞しつつ──そうして、また新しい日常が始まろうとしていた。
下駄箱で靴を履き替え、エレベーターで目的の階へ。戸を開けて教室に入ると、窓辺から差す暖かな陽射しが空間を照らしている。俺もそんな微睡の気分で席へと着きたかったのだが──何故か女性陣の視線が痛い。
あー……またか。
どうやら"昨日の件"を誰かが流布したらしい。壱琉の熱烈なファンなのか何なのかは知らんが、毎度情報の拡散が早すぎる。いつか暴いてやるからな……お漏らし野郎!
などと悶々していると、やたら姿勢の良い女子生徒が目に入った。錦織小雪合である。静かに読書をしていて、彼女に浴びせられているのは女子生徒の痛い視線ではなく、男子生徒からの熱視線だった。
「俺だけですか……そうですか」
小言を呟くなり俺は席につく。
普段あまり意識していなかったが錦織は確かに文句一つない美麗嬢だ。行動と言動を除けば。……いや、文句あるじゃねえか。
凛とした容姿が人気なのか、はたまた問題に取り組む果敢な姿に魅了されたのか、どちらにせよ人気急上昇らしい。
まあ、これは一時的な現象に過ぎない。今日から始まる伝説の部活が始動すれば立場は逆転するだろうさ……そうだよな?(希望的観測)
胸を弾ませながらいつもの通学路を歩く。
涼しくも生温い風が吹き抜け、青々とした木々が揺れる。校舎前の花壇には蕾を携えた紫陽花が群生していて、雨垂れを心待ちにしていた。
もうそんな季節になったのかと実感しつつ、大変なのはこれからだと自分を鼓舞しつつ──そうして、また新しい日常が始まろうとしていた。
下駄箱で靴を履き替え、エレベーターで目的の階へ。戸を開けて教室に入ると、窓辺から差す暖かな陽射しが空間を照らしている。俺もそんな微睡の気分で席へと着きたかったのだが──何故か女性陣の視線が痛い。
あー……またか。
どうやら"昨日の件"を誰かが流布したらしい。壱琉の熱烈なファンなのか何なのかは知らんが、毎度情報の拡散が早すぎる。いつか暴いてやるからな……お漏らし野郎!
などと悶々していると、やたら姿勢の良い女子生徒が目に入った。錦織小雪合である。静かに読書をしていて、彼女に浴びせられているのは女子生徒の痛い視線ではなく、男子生徒からの熱視線だった。
「俺だけですか……そうですか」
小言を呟くなり俺は席につく。
普段あまり意識していなかったが錦織は確かに文句一つない美麗嬢だ。行動と言動を除けば。……いや、文句あるじゃねえか。
凛とした容姿が人気なのか、はたまた問題に取り組む果敢な姿に魅了されたのか、どちらにせよ人気急上昇らしい。
まあ、これは一時的な現象に過ぎない。今日から始まる伝説の部活が始動すれば立場は逆転するだろうさ……そうだよな?(希望的観測)
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
如月さんは なびかない。~片想い中のクラスで一番の美少女から、急に何故か告白された件~
八木崎(やぎさき)
恋愛
「ねぇ……私と、付き合って」
ある日、クラスで一番可愛い女子生徒である如月心奏に唐突に告白をされ、彼女と付き合う事になった同じクラスの平凡な高校生男子、立花蓮。
蓮は初めて出来た彼女の存在に浮かれる―――なんて事は無く、心奏から思いも寄らない頼み事をされて、それを受ける事になるのであった。
これは不器用で未熟な2人が成長をしていく物語である。彼ら彼女らの歩む物語を是非ともご覧ください。
一緒にいたい、でも近づきたくない―――臆病で内向的な少年と、偏屈で変わり者な少女との恋愛模様を描く、そんな青春物語です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる