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「ていうか、先生いつまで居るんですか…」
 俺は居心地悪そうな声で言った。
 女教師一人に女子生徒二人。最早、この部屋は女の園と化していた。五十嵐は他の二人に比べて少々見劣りするものの、基本的に全員美人さんである。身体を揺らすたびにサボンだかフローラルだか良い香りがするし、何より男は俺一人であるから非常にやり辛い。
「いやぁ…さっき言ってた"アイツ"が誰の事を指しているのかは分からないけど、また夜崎君が面白そうな事企んでるから、見ていて飽きないんだよ」
 綾崎先生が言った言葉には多少、含みがあるように感じられた。しかしながら、協力者が一人抜けていたので前のように付け加える。
「錦織も。ですよ」
 俺が彼女の名前を呼び捨てると、綾崎先生は「そうだった、そうだった~」と、冗談めかして相槌を打つ。かくいう錦織は表情こそ変えないものの、視線だけは逸らしていた。
「それに、アイツって壱琉くんの事ですよ。綾崎先生も彼のことはよくご存知じゃないんですか?"例のテスト"の時も親しくしてましたし」
 俺が壱琉の名前を言い放ったほんの一瞬、綾崎先生の瞳が少し揺らいだような気がした。
「ああ、彼は特別候補生の中でも特に成績が優秀だったから、スカウトマンとして協力して貰っただけだよ」
 その言い草は案外素っ気ない。
「…それだけ?」
 俺が再度問うと、綾崎先生は静かに首肯した。
 なんだ。てっきり、塾の先生とか転校前の先生とばったり会っちゃった!もしくは禁断の関係…みたいなシュチュエーションだと思っていたんだがな。
「じゃあ、先生そろそろ用事だから。頑張るんだぞぉ~」
 綾崎先生は教師らしからぬ軽快な言動で部屋を後にしていった。
 ああ見えて、とんでもなく優秀な人材なのだろう。何せモールス信号を読み取れるくらいだし。まだまだ謎が多い先生だ。
 一方、クローゼットを開いた五十嵐はいつの間にか傍観者と成り果てていた。
「やっぱりいつ見ても美人な先生だねぇ…」
 感嘆に似たため息を漏らすと、
「錦織さん。テーブルクロスとか食器出すの手伝ってくれない?...そこの彼、衝動的な所があるから危ないかも」
 五十嵐は錦織に協力を要請すると、言わなくてもいい事を付け加える。
 いや、暴れないから。テーブルクロス引きをやる勇気がないくらいにはチキンだから。大丈夫よ?
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