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春風が心地いい昼の平日だった。丁寧に整えられた新緑の木々の間を歩きながら、俺は目的地へ。壱琉が食事をするであろう場所は幸いにも近く、学校から交差点を二つ越えた所にある。
何故、現役高校生ボウズの俺が平日の昼時に学外をのこのこ歩いているのか。それは休み時間の外出が学校で許可されているからだ。一般的な高等学校でも自販機の買い出しぐらいは許可されているんだろうが、ウチの高校のように完全にオープンというのは珍しいを超えて不可解である。学食(言えたものではなかったが)と購買、自動販売機は例の如く完備してあり、これも通常であれば私立高校の貴重な収入源の一部になる筈だ。学外という広い選択肢がある事によって、金が多方面に流れ出てしまうのは自明の理ではないのだろうか。
そんな事を悶々と考えていると、ウッディなテラスとガラス張りの店内が見えてくる。ハチのような名前をしたイタリアンカフェで外から見る限りで人はまばらであった。立て看板を参照すると、価格帯は千円~二千円そこらでランチタイムにしては少々豪勢ではあるが払えない額ではない。壱琉の食事は高級志向だと聞いていたが正直、身構える程ではないようだ。
迷わず、ガラス戸を引いた。すると店内を見渡す必要も無く、カウンター席に座る彼の姿が眼中に飛び込んできた。さらさらとした銀髪に青みがかった瞳、おまけに佳容な顔立ち。その非日常じみた王子様は自然と周囲の視線(主に女性)を集めていて、近寄りがたい雰囲気を形成していた。
「…。ご来店ありがとうございます。何名様でしょうか?」
若い女性店員が一瞬言葉を詰まらせながらも、丁寧に声をかけてきた。
…君の気持ち分かるよ。なんで昼時から制服着た高校生ボウズが優雅にランチタイムしようとしてるの?って不思議に思ってるんだよね。それも男一人でさ。
俺は苦笑いしながら人差し指を真上に突き立てると同時に、女性店員に一声話しかけた。
「あ、あの実は知人が先に店内に入っていて…。あそこの青年なんですけど…」
勿論、噓八百だ。知人か友人か。今となってはそのどちらもハッタリの関係性。そこに俺は近づこうとしているのである。
店員は俺が見ている視線の先に顔を向けると、再び言葉を詰まらせた。
「…わ、分かりました…ご案内致します…」
俺は困惑した店員を尻目に、したり顔をする。ナイス店員!正直ここが一番の鬼門であった。店員が壱琉に向かって俺が知人かを聞いていたものなら、間違いなく拒否されていた事だろう。
壱琉がいるカウンター席の席一つ開けた隣に通された。背後からは女性客や店員の視線が中々痛い。なんせ、制服を着た男子高校生二人が昼時のお洒落なカウンター席で腰を下ろしているのだ。異様な光景とみられても致し方ない。
メニューを見るが否や、俺の冷や汗は止まらなくなった。料理の値段が原因ではない。この圧倒的場違い感が生み出す雰囲気に絶望していたのだ。店内に入る前の余裕はどこへやら。
春風が心地いい昼の平日だった。丁寧に整えられた新緑の木々の間を歩きながら、俺は目的地へ。壱琉が食事をするであろう場所は幸いにも近く、学校から交差点を二つ越えた所にある。
何故、現役高校生ボウズの俺が平日の昼時に学外をのこのこ歩いているのか。それは休み時間の外出が学校で許可されているからだ。一般的な高等学校でも自販機の買い出しぐらいは許可されているんだろうが、ウチの高校のように完全にオープンというのは珍しいを超えて不可解である。学食(言えたものではなかったが)と購買、自動販売機は例の如く完備してあり、これも通常であれば私立高校の貴重な収入源の一部になる筈だ。学外という広い選択肢がある事によって、金が多方面に流れ出てしまうのは自明の理ではないのだろうか。
そんな事を悶々と考えていると、ウッディなテラスとガラス張りの店内が見えてくる。ハチのような名前をしたイタリアンカフェで外から見る限りで人はまばらであった。立て看板を参照すると、価格帯は千円~二千円そこらでランチタイムにしては少々豪勢ではあるが払えない額ではない。壱琉の食事は高級志向だと聞いていたが正直、身構える程ではないようだ。
迷わず、ガラス戸を引いた。すると店内を見渡す必要も無く、カウンター席に座る彼の姿が眼中に飛び込んできた。さらさらとした銀髪に青みがかった瞳、おまけに佳容な顔立ち。その非日常じみた王子様は自然と周囲の視線(主に女性)を集めていて、近寄りがたい雰囲気を形成していた。
「…。ご来店ありがとうございます。何名様でしょうか?」
若い女性店員が一瞬言葉を詰まらせながらも、丁寧に声をかけてきた。
…君の気持ち分かるよ。なんで昼時から制服着た高校生ボウズが優雅にランチタイムしようとしてるの?って不思議に思ってるんだよね。それも男一人でさ。
俺は苦笑いしながら人差し指を真上に突き立てると同時に、女性店員に一声話しかけた。
「あ、あの実は知人が先に店内に入っていて…。あそこの青年なんですけど…」
勿論、噓八百だ。知人か友人か。今となってはそのどちらもハッタリの関係性。そこに俺は近づこうとしているのである。
店員は俺が見ている視線の先に顔を向けると、再び言葉を詰まらせた。
「…わ、分かりました…ご案内致します…」
俺は困惑した店員を尻目に、したり顔をする。ナイス店員!正直ここが一番の鬼門であった。店員が壱琉に向かって俺が知人かを聞いていたものなら、間違いなく拒否されていた事だろう。
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メニューを見るが否や、俺の冷や汗は止まらなくなった。料理の値段が原因ではない。この圧倒的場違い感が生み出す雰囲気に絶望していたのだ。店内に入る前の余裕はどこへやら。
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