例えば、こんな学校生活。

ARuTo/あると

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 錦織が何故、始めに学校のアプリについて説明したのか。それは壱琉について、女子生徒から情報を得る為であった。アプリにはオープンチャットと呼ばれる不特定多数が閲覧可能な会話機能に、個人チャットと呼ばれるいわば一対一のメールやり取りが出来る機能があるらしい。錦織は俺が推測した通り、一部の女子からの信頼があるようで個人チャットにて壱琉と同じクラスなどの女子生徒(彼と話した事はない)に彼の趣向を教えてもらったようだ。
 さらりと説明したがよくよく考えてみると恐ろしいんだよなぁ…何で会話した事もない相手の趣味とか知ってんだよ…。
 俺はコーヒーカップをテーブルに置くと、ため息一つする。
「…にしても、あいつの趣味が"孤独のグルメ"だなんてな。実に意外だ」
 "偵察の一環"というのはこの学食にも姿を現すことを期待した錦織の小さな作戦であった。
「加えて、"高級志向"だそうですね」
 錦織が乾いた声音で続く。
 その四文字を聞いた途端、口の奥でコーヒーの苦味が一層強くなった。
「金持ち息子の特権なんだろうな。羨ましい限りだ」
 突然の別れを望んだ壱琉。彼が本当はいい奴だと未だに信じているし、あわよくば部員に引き入れようとしている現状ではある。けれども、嫉妬したか。勝手に失望したか。彼の志向が気に食わなかった。
 俺は怨色のような顔をしていたのか、錦織が心配そうな表情を浮かべつつも、携帯画面を見せてきた。
「…次に彼が食事をするであろう店名です。あと、申し訳ありませんが今回は貴方一人で行ってくださいませんか…?」
 錦織は水を差したくないのか、はたまた何か意図があるのか。俺単独での接触を懇願した。ネットワークに弱い夜崎である。前回の件も錦織の情報網無しでは歯が立たなかっただろう。セカンドフェイズを受け持つのが筋というものだ。
「勿論だ。初動は任せきりだからな」
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