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「先生にはこの現状を報告したか?」
「勿論しました。だけど表面的にしか解決してないかなって…」
「見た目だけ…か」
教師…いや、学校側は一体何をしているのだろう。SNSなどの問題が表面化するこの時代に打つ手など無いというのだろうか。
「この問題を先生に報告してから、何か動きがありましたか?」
錦織が問う。
「女子グループに注意はしたそうですが、それ以外は何も…」
「学校側は何故こうものんびりしてられるんだ?生徒と向き合うどころか、やる気さえ感じられないじゃないか」
不満げに俺が言うと、錦織がやや鋭い口調で突く。
「恐らく、学校のブランドイメージを崩したくないのでしょう。一つの事件は学校全体の問題になりますから」
私立という概念はそこらの会社となんら変わりない。
資金が集まらず、経営難にでもなれば同じように潰れる。会社としての意識が強いので、なおさら問題などを隠蔽したがるのだろう。
「…どいつもこいつもどうしようもねぇな」
大きなため息とともに出る、社会に対しての失望。
「ブーメラン。ご愁傷様です」
目を伏せながら、腕組みする錦織。
「…は?ブーメラン?」
何を言っとるんだ錦織は…。今、体育の時間じゃないのよ?分かってる?
すると、左斜め横にいる伊藤が、
「ネットスラング…とでも言うのかな。意味合い的には『その言葉そっくりそのままお返しします』みたいな感じだよ」
ご丁寧にありがとう伊藤さん。
つまり、投げたら戻ってくるブーメランの性質に掛けてるのね。
…巻き尺とかヨーヨーでも良くない?ほら、引いたら戻ってくるし。
ともかく伊藤はクラスの事を考えて、如月さんを助けようと俺達、特別候補生の協力を必死で得ようと尽力しているのだ。
自分の意思も相まって、是非とも問題解消に努めたい。だからこそ少し聞いてみたい事があった。
「伊藤さん。貴方は何故、如月さんが冷やかされてるだとか、陰口に苛まれていると感じた?」
突然の奥まった問いに困惑したのか、伊藤は膝に手を置きながら体を小さくした。
数十秒考えたのち、直ぐに目線を上げて答えた。
「自分も同じ立場に置かれたら、どんな気持ちなんだろうとか時々、考えるんです。やっぱり誰だって嫌ですよあんな事されたら…」
伊藤は窓辺を見やって、どこか遠い目をしていた。
「そうか…」
これは正義を精査する最終フェイズ。
今の世の中、何をとっても裏でどこがどう繋がっているか分からん。
被害者以前に解決しようとする人の意思が重要となるからだ。
いじめ事案ともなれば、それこそ細心の注意が必要。
「クラス…伊藤さんの意思はよく分かりました。何処まで解決に持っていけるか分かりませんが、是非とも協力させて頂きます」
錦織にも先程の伊藤の意思が伝わったようで、快く協力の意を示す。
「同じく」
正直、自身は無いがこれもまた経験の一つとポジティブに捉えるべきだ。
「あ…ありがとうございます」
伊藤はまるで、自分の事のように深々と会釈をする。
次に「それと」を付け加えて更に言った。
「…夜崎くんと錦織さんはいくら特別候補生といっても人が良すぎますよ…。逆に聞きます。どうしてお二人はそんなに意欲的なのですか?」
「簡単だ。俺達みたいな異端者は、こういう事案に食って掛かるんだよ。何も功績を求めている訳じゃない。自信の正義が許さないんだ」
決まった…!俺史に残る名言っ。決して迷言とは言わせない。
「同じ存在として見られるのは少しばかり癪ですが、自身の正義を貫くという点では共通しています。普遍的な社会が嫌いなんですよ」
錦織も自身の意思をきちんと表明したようだ。
伊藤は憂いに似た視線を向けながら、
「仲が良いんですね」
「ああ!錦織と俺は凄く仲が良いぞ。なあ、相棒?」
「そうですね。仲が良いというか、噛み合ってないという表現の方が適切だと思います」
錦織にしてはややフラットな返しだと思う。…何で少し笑顔で言うんだよこの子は。
冷めきってしまったキャラメルマキアートを一気に飲み下す。
重い話にはブラックが最適だと思われるが、甘さというカロリーは脳を稼働させる為に、必要不可欠である。
科学的にはこの理論、帰結しないけれども。
「勿論しました。だけど表面的にしか解決してないかなって…」
「見た目だけ…か」
教師…いや、学校側は一体何をしているのだろう。SNSなどの問題が表面化するこの時代に打つ手など無いというのだろうか。
「この問題を先生に報告してから、何か動きがありましたか?」
錦織が問う。
「女子グループに注意はしたそうですが、それ以外は何も…」
「学校側は何故こうものんびりしてられるんだ?生徒と向き合うどころか、やる気さえ感じられないじゃないか」
不満げに俺が言うと、錦織がやや鋭い口調で突く。
「恐らく、学校のブランドイメージを崩したくないのでしょう。一つの事件は学校全体の問題になりますから」
私立という概念はそこらの会社となんら変わりない。
資金が集まらず、経営難にでもなれば同じように潰れる。会社としての意識が強いので、なおさら問題などを隠蔽したがるのだろう。
「…どいつもこいつもどうしようもねぇな」
大きなため息とともに出る、社会に対しての失望。
「ブーメラン。ご愁傷様です」
目を伏せながら、腕組みする錦織。
「…は?ブーメラン?」
何を言っとるんだ錦織は…。今、体育の時間じゃないのよ?分かってる?
すると、左斜め横にいる伊藤が、
「ネットスラング…とでも言うのかな。意味合い的には『その言葉そっくりそのままお返しします』みたいな感じだよ」
ご丁寧にありがとう伊藤さん。
つまり、投げたら戻ってくるブーメランの性質に掛けてるのね。
…巻き尺とかヨーヨーでも良くない?ほら、引いたら戻ってくるし。
ともかく伊藤はクラスの事を考えて、如月さんを助けようと俺達、特別候補生の協力を必死で得ようと尽力しているのだ。
自分の意思も相まって、是非とも問題解消に努めたい。だからこそ少し聞いてみたい事があった。
「伊藤さん。貴方は何故、如月さんが冷やかされてるだとか、陰口に苛まれていると感じた?」
突然の奥まった問いに困惑したのか、伊藤は膝に手を置きながら体を小さくした。
数十秒考えたのち、直ぐに目線を上げて答えた。
「自分も同じ立場に置かれたら、どんな気持ちなんだろうとか時々、考えるんです。やっぱり誰だって嫌ですよあんな事されたら…」
伊藤は窓辺を見やって、どこか遠い目をしていた。
「そうか…」
これは正義を精査する最終フェイズ。
今の世の中、何をとっても裏でどこがどう繋がっているか分からん。
被害者以前に解決しようとする人の意思が重要となるからだ。
いじめ事案ともなれば、それこそ細心の注意が必要。
「クラス…伊藤さんの意思はよく分かりました。何処まで解決に持っていけるか分かりませんが、是非とも協力させて頂きます」
錦織にも先程の伊藤の意思が伝わったようで、快く協力の意を示す。
「同じく」
正直、自身は無いがこれもまた経験の一つとポジティブに捉えるべきだ。
「あ…ありがとうございます」
伊藤はまるで、自分の事のように深々と会釈をする。
次に「それと」を付け加えて更に言った。
「…夜崎くんと錦織さんはいくら特別候補生といっても人が良すぎますよ…。逆に聞きます。どうしてお二人はそんなに意欲的なのですか?」
「簡単だ。俺達みたいな異端者は、こういう事案に食って掛かるんだよ。何も功績を求めている訳じゃない。自信の正義が許さないんだ」
決まった…!俺史に残る名言っ。決して迷言とは言わせない。
「同じ存在として見られるのは少しばかり癪ですが、自身の正義を貫くという点では共通しています。普遍的な社会が嫌いなんですよ」
錦織も自身の意思をきちんと表明したようだ。
伊藤は憂いに似た視線を向けながら、
「仲が良いんですね」
「ああ!錦織と俺は凄く仲が良いぞ。なあ、相棒?」
「そうですね。仲が良いというか、噛み合ってないという表現の方が適切だと思います」
錦織にしてはややフラットな返しだと思う。…何で少し笑顔で言うんだよこの子は。
冷めきってしまったキャラメルマキアートを一気に飲み下す。
重い話にはブラックが最適だと思われるが、甘さというカロリーは脳を稼働させる為に、必要不可欠である。
科学的にはこの理論、帰結しないけれども。
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