27 / 94
27.
しおりを挟む
「夜崎君に社会を変える程の実力があるとは到底思えませんが精々、期待する事にしましょう」
錦織の言動にはどこか傍観するような響きがあった。
「…期待するだけじゃなく、協力してくれ」
至極、当たり前のように錦織は「なぜ?」とだけ答えた。あのですね…。
「錦織さん自身が前に言っていたじゃないか。私は貴方に興味があります。同じ候補生として協力していきましょうって…」
「そんなこと言いましたっけ。少なくとも「協力」なんて単語は使わなかったと思います。勝手に改ざんしないでください」
とぼけてるのか真面目なんだか分からんなこの子は…。
とはいえ改革に協力者は必要不可欠。同じ候補生さえ引き込めないでどうする。何か、何か他に共通点はないのだろうか…?
…そうだ。同じ底辺校からの成り上がりであってこその特別候補生じゃないか!
「…底辺校上がりの俺らが一人で何かを起こすのは難しい。だから錦織さん。貴方の協力が必要なんだ」
主人公張りの生真面目発言。カッコよ過ぎるだろ。自画自賛してしまったがとにかく協力者は必要。
錦織の反応というと…、
「は?」
まさかの一言。
以前もこんな事あったような…。錦織は失望の眼差しと共に、がっかりとした様子だった。
「まさかそれを建前にして今日まで接していたとは…正直驚きました」
「底辺校…言い方は酷いが事実なんだからしょうがないだろ」
多少、焦りを滲ませる俺を見て錦織は、
「そういう事ではありません。前提から全て間違っているのですよ夜崎君は。私が通っていた元々の高等学校はこの学校よりもずっと偏差値の高い学校です」
「…え…いや、は?」
口をポカーンと開けて呆然としてしまった。
この学校よりもずっと偏差値の高い高校だと…?それはつまり、底辺校という単語は彼女に意味をなさないという事か。特別候補生肩書きは同じであっても立場はまるで違うと?
「なんでわざわざ偏差値を落とす必要が…」
自然にそんな声を漏らすほど、俺は彼女に答えを求めていた。
「私も夜崎君同様、綾崎先生にスカウトされて急遽編入した身です。しかしながら、学校の位を落とす事になるので色々悩みはしましたが」
先程のレビューに記載されていた『片方を除いて』の片方とは恐らく錦織のような優等生を指していたのだろう。
「そうだったのか…」
それしか口に出来なかった。唯一、完全に同じ立場という親近感に酔いしれる事はもう出来ないのだ。
「夜崎くんは話が先走り過ぎたり、情報が確かでないにも関わらず結論付けてしまうう悪癖があります。まずはそこから改善されてはいかかでしょうか。突然ですが今日はこれで失礼させていただきます」
錦織はそう言って足早に席を立ち、店を出ていってしまった。
失望した。
用はそういう事なのだろう。二度目の断りを受けてしまった。二度あることは三度あるというように、また同じ事を俺は繰り返してしまうのだろうか。
そういえば飲み物、現金で払ったな。錦織、俺の分しれっと省いてやがる。
やっぱり仲良くやっていける自信ないわ。
錦織の言動にはどこか傍観するような響きがあった。
「…期待するだけじゃなく、協力してくれ」
至極、当たり前のように錦織は「なぜ?」とだけ答えた。あのですね…。
「錦織さん自身が前に言っていたじゃないか。私は貴方に興味があります。同じ候補生として協力していきましょうって…」
「そんなこと言いましたっけ。少なくとも「協力」なんて単語は使わなかったと思います。勝手に改ざんしないでください」
とぼけてるのか真面目なんだか分からんなこの子は…。
とはいえ改革に協力者は必要不可欠。同じ候補生さえ引き込めないでどうする。何か、何か他に共通点はないのだろうか…?
…そうだ。同じ底辺校からの成り上がりであってこその特別候補生じゃないか!
「…底辺校上がりの俺らが一人で何かを起こすのは難しい。だから錦織さん。貴方の協力が必要なんだ」
主人公張りの生真面目発言。カッコよ過ぎるだろ。自画自賛してしまったがとにかく協力者は必要。
錦織の反応というと…、
「は?」
まさかの一言。
以前もこんな事あったような…。錦織は失望の眼差しと共に、がっかりとした様子だった。
「まさかそれを建前にして今日まで接していたとは…正直驚きました」
「底辺校…言い方は酷いが事実なんだからしょうがないだろ」
多少、焦りを滲ませる俺を見て錦織は、
「そういう事ではありません。前提から全て間違っているのですよ夜崎君は。私が通っていた元々の高等学校はこの学校よりもずっと偏差値の高い学校です」
「…え…いや、は?」
口をポカーンと開けて呆然としてしまった。
この学校よりもずっと偏差値の高い高校だと…?それはつまり、底辺校という単語は彼女に意味をなさないという事か。特別候補生肩書きは同じであっても立場はまるで違うと?
「なんでわざわざ偏差値を落とす必要が…」
自然にそんな声を漏らすほど、俺は彼女に答えを求めていた。
「私も夜崎君同様、綾崎先生にスカウトされて急遽編入した身です。しかしながら、学校の位を落とす事になるので色々悩みはしましたが」
先程のレビューに記載されていた『片方を除いて』の片方とは恐らく錦織のような優等生を指していたのだろう。
「そうだったのか…」
それしか口に出来なかった。唯一、完全に同じ立場という親近感に酔いしれる事はもう出来ないのだ。
「夜崎くんは話が先走り過ぎたり、情報が確かでないにも関わらず結論付けてしまうう悪癖があります。まずはそこから改善されてはいかかでしょうか。突然ですが今日はこれで失礼させていただきます」
錦織はそう言って足早に席を立ち、店を出ていってしまった。
失望した。
用はそういう事なのだろう。二度目の断りを受けてしまった。二度あることは三度あるというように、また同じ事を俺は繰り返してしまうのだろうか。
そういえば飲み物、現金で払ったな。錦織、俺の分しれっと省いてやがる。
やっぱり仲良くやっていける自信ないわ。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる