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放送室は広さ六畳程の狭い空間で、外面から見て分かる通り内部も円形だった。
扉を入ったすぐ右手には音量調節などの機器が備わった個室があり、上級生らしき人物がちょこんと座っている。
「次の子はっと…夜崎辰巳君だね。申し訳ないけど後が閊えてるから、長くても五分程度で済ませてくれると有難いです。では、どうぞっ」
テンション高めな女子生徒がマイクの音声を使って俺にそう伝えてきた。
目の前にあるクッション性のなさそうな椅子に丁寧に腰掛ける。指をさすような生意気な形をしたマイクを少し手で引くと、短く息を吐き出して話し始めた。
「えー、全校生徒の皆さんこんにちは。一年A組の特別候補生、夜崎辰巳です。僕は偏差値はおろか、この学校に来る予定など微塵もありませんでした。ですが出会いという運命は実に不思議なもので今日僕は特別候補生という肩書を借りて、この地に招き入れられました。
僕は学校という場所をある種、社会の縮図だと思っています。様々な境遇のもとで育てられた人間が平等に授業を受け、生活をする。しかしこの様な生活を誰もが手に入れられている訳ではありません。境遇とはつまり偶発的なもの。一人ひとり違いが出てくるのです。
人間は醜い生き物でその違いを他人と比べたり、時には存在すら消しにかかるでしょう。親や周りの人に、教えられてきた「善」は果たして本当の正しさなのか?私達は考える必要があります。
僕はこの様な偽善者あるいは人物を断罪しm」
命題を言おうとした矢先、マイクの電源が強制的に切られた。何事かと周りを視越すと、個室の扉が勢いよく開けられた。
「君~話長過ぎ!時間が押してるから強制終了させてもらったよ。次の子入ってくるから早く退出して!」
「そんなっ、俺はまだ話の半分も…おわっ」
「いいから早く出てください!」
早急に放送室から蹴り出されたかと思うと、最後にガチャッという音を残して扉は固く閉じられた。
いや…鍵まで締めなくても…
なんだよ。せっかく人が自分の考えを公に述べているのに、途中で切りやがって。本当だったら四十分ぐらい話そうかな…とか思ってたのに。悲しいかな。どうやら、世間一般は言論の自由に対して風当たりが強いらしい。
あっけなく演説が終了してしまった俺は項垂れながら放送室の前で辺りを見回した。すると何処からか、詰まるような笑いが聞こえてきた。…なんだよそれ。
見やれば壁面沿いに肩を小刻みに震わせながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声量で笑う女子生徒がいた。
まさかその後ろ姿は…、
「えっと…錦織さんですよね?」
表情は窺い知れないが、恐らく破顔一笑するくらい堪えて笑っていたのだろう。
「…ッ…っ…はい?二度と話しかけないようにと、言いませんでしたっけ?」
肩の震えが静止したかと思うと、無表情で振り向いてきた。異常なくらい迅速な切り替えしをみせたものだ。この子の感情制御は一体どうなってるの…?
それからというもの。
会話など起きるはずも無く、来た道を引き返して教室へと戻った。クラスへ入ると朝の時間帯に比べてやけに周囲がザワついていた。
さぞ、俺の素晴らしい演説に驚きを隠せなかったのだろうと思いきや、違った。
単に談笑が繰り広げられているだけだった。これぞ青春。なんなら俺も混ぜてほしい。苦味が効いて丁度いいと思うぞ。
扉を入ったすぐ右手には音量調節などの機器が備わった個室があり、上級生らしき人物がちょこんと座っている。
「次の子はっと…夜崎辰巳君だね。申し訳ないけど後が閊えてるから、長くても五分程度で済ませてくれると有難いです。では、どうぞっ」
テンション高めな女子生徒がマイクの音声を使って俺にそう伝えてきた。
目の前にあるクッション性のなさそうな椅子に丁寧に腰掛ける。指をさすような生意気な形をしたマイクを少し手で引くと、短く息を吐き出して話し始めた。
「えー、全校生徒の皆さんこんにちは。一年A組の特別候補生、夜崎辰巳です。僕は偏差値はおろか、この学校に来る予定など微塵もありませんでした。ですが出会いという運命は実に不思議なもので今日僕は特別候補生という肩書を借りて、この地に招き入れられました。
僕は学校という場所をある種、社会の縮図だと思っています。様々な境遇のもとで育てられた人間が平等に授業を受け、生活をする。しかしこの様な生活を誰もが手に入れられている訳ではありません。境遇とはつまり偶発的なもの。一人ひとり違いが出てくるのです。
人間は醜い生き物でその違いを他人と比べたり、時には存在すら消しにかかるでしょう。親や周りの人に、教えられてきた「善」は果たして本当の正しさなのか?私達は考える必要があります。
僕はこの様な偽善者あるいは人物を断罪しm」
命題を言おうとした矢先、マイクの電源が強制的に切られた。何事かと周りを視越すと、個室の扉が勢いよく開けられた。
「君~話長過ぎ!時間が押してるから強制終了させてもらったよ。次の子入ってくるから早く退出して!」
「そんなっ、俺はまだ話の半分も…おわっ」
「いいから早く出てください!」
早急に放送室から蹴り出されたかと思うと、最後にガチャッという音を残して扉は固く閉じられた。
いや…鍵まで締めなくても…
なんだよ。せっかく人が自分の考えを公に述べているのに、途中で切りやがって。本当だったら四十分ぐらい話そうかな…とか思ってたのに。悲しいかな。どうやら、世間一般は言論の自由に対して風当たりが強いらしい。
あっけなく演説が終了してしまった俺は項垂れながら放送室の前で辺りを見回した。すると何処からか、詰まるような笑いが聞こえてきた。…なんだよそれ。
見やれば壁面沿いに肩を小刻みに震わせながら、聞こえるか聞こえないかくらいの声量で笑う女子生徒がいた。
まさかその後ろ姿は…、
「えっと…錦織さんですよね?」
表情は窺い知れないが、恐らく破顔一笑するくらい堪えて笑っていたのだろう。
「…ッ…っ…はい?二度と話しかけないようにと、言いませんでしたっけ?」
肩の震えが静止したかと思うと、無表情で振り向いてきた。異常なくらい迅速な切り替えしをみせたものだ。この子の感情制御は一体どうなってるの…?
それからというもの。
会話など起きるはずも無く、来た道を引き返して教室へと戻った。クラスへ入ると朝の時間帯に比べてやけに周囲がザワついていた。
さぞ、俺の素晴らしい演説に驚きを隠せなかったのだろうと思いきや、違った。
単に談笑が繰り広げられているだけだった。これぞ青春。なんなら俺も混ぜてほしい。苦味が効いて丁度いいと思うぞ。
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