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第一幕 ハイランドとローランドの締結
手厚い接待4
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カイトSIDE
牢獄の中で、ジェイミーが大事そうにセシルを抱きしめている姿を目にして、私の機嫌が降下していった。
「何をしている」
鉄格子の中にいるジェイミーに向かって、口を開いた。
頭からつま先までぼろぼろになっているジェイミーなのに、セシルを守るかのように抱きしめ続けている。
それが気に入らない。
「セシル様はお話になられたのですか?」
ジェイミーが質問をしてきた。内出血の酷い顔が、気味悪い。
「ああ、話してくれた。こちらもイザベラの捜査に参加しよう…と言っても、心当たりがあるからそこを突くだけだがな。すぐに見つかるだろう。私を恨んでいるなら、居場所の検討はついている」
「そう…ですか」とジェイミーが呟いた。
「で、お前は何をしている」
「布団がないから…セシル様をお温めしているのです。身体が冷えています。このままでは、 高熱になるでしょう。もともとセシル様はお身体が弱いお方なのです。ハイランドに居た時だって、あまり外に出るお方ではない人ですから」
ジェイミーの腫れた瞼の下にある眼球が、私を睨んだ。
「この牢獄では俺が一人で過ごします。全責任は俺が…セシル様にはご慈悲を」
冷たい炎をジェイミーから、私は感じた。強い愛情と、強い意思がひしひしと伝わってくる。
「わかった。責任はお前に取ってもらおう」
私は格子の鍵を開けると、中に入った。ジェイミーからセシルを受け取った。
ジェイミーの言うとおり、セシルの皮膚が冷たかった。顔も青白い。だらりと落ちた腕が細くて、身体が軽かった。
「セシルの好物を知っているか?」
「じゃがいものポタージュスープです」
「そうか。作らせよう」
「それと…セシル様は一度にたいした量を食べません。その代わり…回数を多くしております。1日5~6回です」
「そうか。メイドに伝えておく」
「ありがとうございます」
ジェイミーが小さな声で礼を述べた。
自分は獄中生活になるというのに、なぜ私に礼を言う? ただ妻の代役を引き取っただけだろう。
部屋に妻がいないとなれば、ウィッカム伯爵夫人に怪しまれる。へんな噂を流されたくないから、セシルを牢獄から出しに来ただけのことだ。
私はジェイミーに背を向けると、セシルを抱いたまま、牢獄を後にした。
牢獄の中で、ジェイミーが大事そうにセシルを抱きしめている姿を目にして、私の機嫌が降下していった。
「何をしている」
鉄格子の中にいるジェイミーに向かって、口を開いた。
頭からつま先までぼろぼろになっているジェイミーなのに、セシルを守るかのように抱きしめ続けている。
それが気に入らない。
「セシル様はお話になられたのですか?」
ジェイミーが質問をしてきた。内出血の酷い顔が、気味悪い。
「ああ、話してくれた。こちらもイザベラの捜査に参加しよう…と言っても、心当たりがあるからそこを突くだけだがな。すぐに見つかるだろう。私を恨んでいるなら、居場所の検討はついている」
「そう…ですか」とジェイミーが呟いた。
「で、お前は何をしている」
「布団がないから…セシル様をお温めしているのです。身体が冷えています。このままでは、 高熱になるでしょう。もともとセシル様はお身体が弱いお方なのです。ハイランドに居た時だって、あまり外に出るお方ではない人ですから」
ジェイミーの腫れた瞼の下にある眼球が、私を睨んだ。
「この牢獄では俺が一人で過ごします。全責任は俺が…セシル様にはご慈悲を」
冷たい炎をジェイミーから、私は感じた。強い愛情と、強い意思がひしひしと伝わってくる。
「わかった。責任はお前に取ってもらおう」
私は格子の鍵を開けると、中に入った。ジェイミーからセシルを受け取った。
ジェイミーの言うとおり、セシルの皮膚が冷たかった。顔も青白い。だらりと落ちた腕が細くて、身体が軽かった。
「セシルの好物を知っているか?」
「じゃがいものポタージュスープです」
「そうか。作らせよう」
「それと…セシル様は一度にたいした量を食べません。その代わり…回数を多くしております。1日5~6回です」
「そうか。メイドに伝えておく」
「ありがとうございます」
ジェイミーが小さな声で礼を述べた。
自分は獄中生活になるというのに、なぜ私に礼を言う? ただ妻の代役を引き取っただけだろう。
部屋に妻がいないとなれば、ウィッカム伯爵夫人に怪しまれる。へんな噂を流されたくないから、セシルを牢獄から出しに来ただけのことだ。
私はジェイミーに背を向けると、セシルを抱いたまま、牢獄を後にした。
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