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第一幕 ハイランドとローランドの締結

王家の血筋は尊きなり4

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 馬鹿力すぎる。だから嫌いなんだハイランド人は! 礼儀もなってない、無礼で力でこちらを抑え込んでくる。

「な……何をする! 無礼だぞ」
「無礼なのはそっち。俺を怒らせたいからって、言って良いことと良くないことがある。人通りのある廊下で言うべき言葉じゃない」

「なに?」
 ジェイミーにぐいっと引き寄せられると、僕は腰をがしっと掴まれた。まるで女を抱くみたいに。

「イザベラ様が男だと……敵対勢力の貴族の内応者に聞かれていたどうする? 貴方の軽率なたった一言で、敵に弱みを握られるかもしれないということをお忘れか?」
「煩いっ。手を離せ。僕は怒っているんだ」

「ええ。怒っているのは、火を見るより明らかだ。俺を怒らせたいのも、手にとるようにわかっている。だからって、口を滑らせては困る。嫉妬で気が狂いそう? ずっと傍で見て来たカイト様が、あっさりと自分以外の男の手に落ちたその姿を見ていられない?」

「う、煩い! 何を馬鹿なことを……手を離せ。僕から離れろ」

 腕をあげて、ジェイミーの厚い胸板を拳で叩く。なのに僕の抵抗はむなしく、ハイランド人の骨格の良い身体の中にすっぽりと埋まってしまった。体格差が憎らしい。

 暴れているのに、全くびくともしないのが、腹立たしかった。僕だって、武術の嗜みくらいあるのにっ。くそっ、何でこいつは動かないのだっ。

「事実だろ。認めたくないだけだ。カイト様が同性で愛していいのは、自分だけだと思っていないか? だからイザベラ様の存在が憎いのだ。いとも簡単に、イザベラ様の中に入ってしまったカイト様に嫉妬している…そうだろ?」
「お前に何がわかる!」

「さっきも言ったはず。わからないのはお互い様だと」

 僕は、ジェイミーに足を払われて、床に倒れ込んだ。「あっ」と言葉が漏れて、背中を打ち付けた。近づいてくる男から逃げ出そうとうつ伏せになって、前へと這い上がる……が、腰を掴まれてあっさりと男のテリトリー内へと引き戻された。

 無残にも横たわる僕の上に、屈強な男・ジェイミーが跨ぎ、お腹の上に乗りかかった。

「な…何をするつもりだ?」
「ここまで来て、わからない振りか。頭の良い貴方にならわかっているはず。これから俺がすることを」

「侮辱か! 僕を陥れてどうする」
「簡単なこと。言葉にしないと嫌なのか?」

「煩い、離せ」

 僕は、ジェイミーに組み敷かれたまま、足と手を動かそうとする。が、びくともしない。やっぱり力の差が歴然とし過ぎてて、抵抗が抵抗になっていない。

 くそっ。なんで動かないんだよ! 
 悔しくて、思わず涙が滲み出てきた。
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