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第一幕 ハイランドとローランドの締結
契りの紅き徴14
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「カイト様、カイト様っ!」
耳元で、ドリュの不機嫌な声がして目を覚ました。良い気分で寝ていたのに、ドリュが耳たぶを引っ張って無理やり現実の世界へと呼び戻された。
気持ちの良い夢を見ていた気がする。瞼を持ち上げた瞬間、直前まで見ていた夢はすっかり記憶から消えてしまったが。
枕から頬を離すと、うつ伏せのまま顔をあげた。
「ドリュ?」と私は口を開くと、そのまま大きな欠伸へと変換された。
「いつまで寝ているつもりですか? 朝の礼拝をすっぽかして、朝食も食べずに昼まで寝ているおつもりですか!」
ドリュが耳元で、大きな声を出してきた。
煩い……。
セシルの姿を視界に入れようと室内の中を彷徨わせた。あんなに夜中、苦しんでいたのだ。心配になる。
セシルはいつも通り、きちんと格好も整えて、ソファに座っていた。淡い黄色のドレスが、とても良く似合っている。
腹痛はもう平気なのだろうか?
私よりも寝不足なはずなのに、眠そうな雰囲気は微塵も感じられない。むしろ私のほうが、寝不足の人間のように見えてしまうから不思議だ。
セシルは結婚してからずっと、痛みを隠して過ごしてきのだろう。ハイランドのために。妹のために。ローランド貴族であり、アルバ王国の王族の血をひく私との縁を切らないために……。
ベッドに肘をつくと、ガシガシと金色の髪を掻いた。もう一度、欠伸をすると目尻から涙が勝手に零れた。
「ウィッカム伯爵夫人が廊下でお待ちなんですが」
「あ? ああ、うぅん。外がやけに明るいなぁ」
呑気な言葉に、ドリュの眉尻がぴくりと反応するのが見えた。
「当たり前です。一体、何時間寝たら気が済むんです?」
「眠気が取れるまで寝ないと、気が済まない」
私はまた枕の頭を預けると、自然と落ちてくる瞼に抵抗せずに、シャットダウンする。
「カイト様! 起きてください」
「眠い」
「村人が接見を待ってますよ」
「ドリュが代わりにやっておけ」
「ウィッカム伯爵夫人はどうするのです?」
「ああ……そうか。今日はナシにするってのはどうだ? イザベラも初めてで…」
「失礼します」
会話を最後まで聞かずに、ドリュがばさっと布団を剥がした。ひやっと冷たい風が私の身体を通り過ぎて行く。
耳元で、ドリュの不機嫌な声がして目を覚ました。良い気分で寝ていたのに、ドリュが耳たぶを引っ張って無理やり現実の世界へと呼び戻された。
気持ちの良い夢を見ていた気がする。瞼を持ち上げた瞬間、直前まで見ていた夢はすっかり記憶から消えてしまったが。
枕から頬を離すと、うつ伏せのまま顔をあげた。
「ドリュ?」と私は口を開くと、そのまま大きな欠伸へと変換された。
「いつまで寝ているつもりですか? 朝の礼拝をすっぽかして、朝食も食べずに昼まで寝ているおつもりですか!」
ドリュが耳元で、大きな声を出してきた。
煩い……。
セシルの姿を視界に入れようと室内の中を彷徨わせた。あんなに夜中、苦しんでいたのだ。心配になる。
セシルはいつも通り、きちんと格好も整えて、ソファに座っていた。淡い黄色のドレスが、とても良く似合っている。
腹痛はもう平気なのだろうか?
私よりも寝不足なはずなのに、眠そうな雰囲気は微塵も感じられない。むしろ私のほうが、寝不足の人間のように見えてしまうから不思議だ。
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ベッドに肘をつくと、ガシガシと金色の髪を掻いた。もう一度、欠伸をすると目尻から涙が勝手に零れた。
「ウィッカム伯爵夫人が廊下でお待ちなんですが」
「あ? ああ、うぅん。外がやけに明るいなぁ」
呑気な言葉に、ドリュの眉尻がぴくりと反応するのが見えた。
「当たり前です。一体、何時間寝たら気が済むんです?」
「眠気が取れるまで寝ないと、気が済まない」
私はまた枕の頭を預けると、自然と落ちてくる瞼に抵抗せずに、シャットダウンする。
「カイト様! 起きてください」
「眠い」
「村人が接見を待ってますよ」
「ドリュが代わりにやっておけ」
「ウィッカム伯爵夫人はどうするのです?」
「ああ……そうか。今日はナシにするってのはどうだ? イザベラも初めてで…」
「失礼します」
会話を最後まで聞かずに、ドリュがばさっと布団を剥がした。ひやっと冷たい風が私の身体を通り過ぎて行く。
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