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第一幕 ハイランドとローランドの締結
契りの紅き徴6
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カイトⅢ世SIDE
「あ……あっ、んぅ……あああっ、いい。カイト様、ああっ、いい」
五月蠅いくらい耳元で喘ぐ女の声に、正直、げんなりしている。どの女も、これみよがしに叫び気持ちがいいと悦ぶが……。声が大げさすぎて、本気かどうか怪しい。
「今夜も行かれないのですか?」
ベッドの中で、女が私の上に乗っかっている状態を冷静な顔つきで眺めていたドリュが質問を投げかけてきた。
「行かん。この状況を見ればわかるだろ」
女が私の首にキスを落として、ドリュをじろっと横目で見やった。『良いところなのに』とぼそっと呟く声が、私の耳に届いた。
ドリュが女の睨みなど全く気にせず、ベッドに近づくと、一枚の布切れを投げてきた。
「なんだ、これは?」
ひらりと空中を舞い、私の手元に落ちてきた花の刺繍を見やる。
「キャリック伯爵夫人の力作です。何もできない小煩い女かと思いきや、なかなかの努力家のようです。ただ鼻水を腫らして、野山を駆け回るだけではないみたいですね」
皮肉をこめた言葉に、私は思わずくすっと笑みを漏らした。
あの男が刺繍を、な。
勝手に裁縫に苦しむ男の想像を膨らまし、私は肩を揺らして失笑した。
「ウィッカム伯爵夫人は、楽しそうか?」
「ええ、とても。意気揚々と怒鳴り声が聞こえてきます。それに耐え忍ぶイザベラ様の忍耐力に少々を驚きの眼を向けているところです」
ドリュが顔色も変えずに、飄々と答えているが、さぞかし楽しい光景なのだろう。少しばかり、ドリュの口元を緩んでいるように見えた。
ドリュの視線がちらっと私の上にいる女に向く。すぐに私に向き直ると、ゴホンっと喉を鳴らした。
「良い加減に、お部屋に行ってあげたらいかがです?」
男…なんだぞ? と言いたくなる口をぐっと抑える。
「あ……あっ、んぅ……あああっ、いい。カイト様、ああっ、いい」
五月蠅いくらい耳元で喘ぐ女の声に、正直、げんなりしている。どの女も、これみよがしに叫び気持ちがいいと悦ぶが……。声が大げさすぎて、本気かどうか怪しい。
「今夜も行かれないのですか?」
ベッドの中で、女が私の上に乗っかっている状態を冷静な顔つきで眺めていたドリュが質問を投げかけてきた。
「行かん。この状況を見ればわかるだろ」
女が私の首にキスを落として、ドリュをじろっと横目で見やった。『良いところなのに』とぼそっと呟く声が、私の耳に届いた。
ドリュが女の睨みなど全く気にせず、ベッドに近づくと、一枚の布切れを投げてきた。
「なんだ、これは?」
ひらりと空中を舞い、私の手元に落ちてきた花の刺繍を見やる。
「キャリック伯爵夫人の力作です。何もできない小煩い女かと思いきや、なかなかの努力家のようです。ただ鼻水を腫らして、野山を駆け回るだけではないみたいですね」
皮肉をこめた言葉に、私は思わずくすっと笑みを漏らした。
あの男が刺繍を、な。
勝手に裁縫に苦しむ男の想像を膨らまし、私は肩を揺らして失笑した。
「ウィッカム伯爵夫人は、楽しそうか?」
「ええ、とても。意気揚々と怒鳴り声が聞こえてきます。それに耐え忍ぶイザベラ様の忍耐力に少々を驚きの眼を向けているところです」
ドリュが顔色も変えずに、飄々と答えているが、さぞかし楽しい光景なのだろう。少しばかり、ドリュの口元を緩んでいるように見えた。
ドリュの視線がちらっと私の上にいる女に向く。すぐに私に向き直ると、ゴホンっと喉を鳴らした。
「良い加減に、お部屋に行ってあげたらいかがです?」
男…なんだぞ? と言いたくなる口をぐっと抑える。
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