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エピソード3 凛
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一体、何がどうして。こうなったのか。
私には説明できない。
ラブホテルの一室。
私は疲れ切った体をベッドに投げ出して横になっている。
陽葵は……。
私は顔をあげて、陽葵の姿を探した。
白いワイシャツに手を通して、もう着替えを始めていた。
「昼には戻らなきゃだったんじゃないの?」
陽葵の向こう側に見える掛け時計に私は目をやる。
午後2時。
私たちは時間を気にせず、盛り上がりすぎた。
「戻れないと連絡は入れてある。確認事項はラインで見て、許可を出しているから」
「いつの間に」
「次回の打ち合わせは、別の人間に頼んでおく」
「どういうこと?」
陽葵が「凛の言ってた通りだった。担当は別の人間のほうが良かった」と瞼を閉じて、淡々と話した。
「『顔だけ女』につい欲情した自分が情けなくなったとでも?」
「違う」
陽葵がネクタイを結び始めた。
「じゃあ、何よ。それ以外になにがあるの?」
「また……抱きたくなる」
「は?」
陽葵が体を起こした私の上半身を、ぎゅうっと抱きしめてきた。
抱きたくなる? 私を?
なんで?
「歯止めがきかなくなる。だから次回からは別の人間で」
じゃあな、と陽葵が私から離れると、振りかえりもせずにラブホテルの部屋を出ていった。
私には説明できない。
ラブホテルの一室。
私は疲れ切った体をベッドに投げ出して横になっている。
陽葵は……。
私は顔をあげて、陽葵の姿を探した。
白いワイシャツに手を通して、もう着替えを始めていた。
「昼には戻らなきゃだったんじゃないの?」
陽葵の向こう側に見える掛け時計に私は目をやる。
午後2時。
私たちは時間を気にせず、盛り上がりすぎた。
「戻れないと連絡は入れてある。確認事項はラインで見て、許可を出しているから」
「いつの間に」
「次回の打ち合わせは、別の人間に頼んでおく」
「どういうこと?」
陽葵が「凛の言ってた通りだった。担当は別の人間のほうが良かった」と瞼を閉じて、淡々と話した。
「『顔だけ女』につい欲情した自分が情けなくなったとでも?」
「違う」
陽葵がネクタイを結び始めた。
「じゃあ、何よ。それ以外になにがあるの?」
「また……抱きたくなる」
「は?」
陽葵が体を起こした私の上半身を、ぎゅうっと抱きしめてきた。
抱きたくなる? 私を?
なんで?
「歯止めがきかなくなる。だから次回からは別の人間で」
じゃあな、と陽葵が私から離れると、振りかえりもせずにラブホテルの部屋を出ていった。
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