22 / 23
22
しおりを挟む
「待て。そういう店だろ、あそこは!」
「佐藤、聞き捨てならないわね、その言葉。そういう店ってどういうこと? ちょっと女を馬鹿にしてるんじゃない?」
「違います、所長。信じてください。断じて、無理やりでは……同意のもとです」
デスクに手をついて、佐藤が叫びように声をあげた。
「ならどうして、彼女は九時半に相談にくるのかしら?」
「こいつが……女とグルになって」
「ああ、もう一度聞いてみます?」
俺はそう言いながらスマホを取り出して、再生ボタンを押した。
『んーー! やめっ……痛い……いたっ……やだ……』
『嫌じゃないんだろ? これが好きなんだろ? 毎晩。小林のを咥え込んで離さないんだろ?』
『や……くそっ……出せ……やめ……』
『ああ、出してやるよ。お前の奥に、俺の精液をな』
『……やだっ、出すなっ……』
流れた音声に佐藤の顔が真っ青になっていく。
「やだ……これ、小野寺君の声じゃない?」
白々しく麗香さんが口を開き、じろっと佐藤を睨みつけた。
「ああ、これ……俺のスマホじゃないや。事務所に落ちてて……拾ったやつだ。これ……あんたのだろ?」
「な……んで。昨日、ちゃんと抽斗に」
麗香さんの隣に行って、鍵の付いている抽斗のロックをあけて中を確認していた。
「……きさまぁ」
「そう、小野寺君を無理やり。で、女性も無理やり、ねえ」
「所長! ほんとに……違うんですっ」
麗香の膝にしがみつくと、髪を振り乱して首を振った。
「ああ、タイムリミット、だ。女性が来た……って、一緒にエレベータに乗ってきた人って……見覚えがあるな」
俺の言葉に所長と佐藤の目が動く。佐藤の目が飛び出さんばかりに開いた。俺はドアの横に移動すると、ズンズンと突き進出くる佐藤の奥さんのためにドアを開いた。
「こんのぉ……クズ男っ! 最低、なんなの? どんだけ外に女がいるわけ? 離婚よ、離婚!」
「ちょ……なんで?」
「奥様、感情的にならないで。お話はあちらで聞きます。所長室でゆっくりと。離婚協議、私が力になりますわ」
麗香さんが佐藤の奥さんの肩を抱くと、優しい声をかけながらオフィスを出ていった。
茫然と魂の抜けた表情で、床に尻をついた佐藤が「なんで」と呟き、床を叩いた。
俺は佐藤の前に立って見下ろしてから、膝を折って、あいつの髪を思い切り引っ張ってやった。
「手を出す相手を間違えてんだよ。馬鹿か、クソ野郎。人を貶めたいなら徹底的にやれよ。中途半端にしか出来ねえんなら、俺を毎晩咥えて離さねえ奴に手を出すな。わかったか?」
「……」
「わかったのかよ? クソ野郎」
視線を逸らす佐藤に、さらに髪を引っ張った。
「……は、い」
微かながらに返事をしたのを聞いて、俺は立ち上がった。
「被害女性についはどうする?」
「……え? ああ……和解条件を、聞いて……ください」
「わかった。伝えておく」
終わったな――。
俺は佐藤のオフィスを出ると、ホッと息をついた。
「佐藤、聞き捨てならないわね、その言葉。そういう店ってどういうこと? ちょっと女を馬鹿にしてるんじゃない?」
「違います、所長。信じてください。断じて、無理やりでは……同意のもとです」
デスクに手をついて、佐藤が叫びように声をあげた。
「ならどうして、彼女は九時半に相談にくるのかしら?」
「こいつが……女とグルになって」
「ああ、もう一度聞いてみます?」
俺はそう言いながらスマホを取り出して、再生ボタンを押した。
『んーー! やめっ……痛い……いたっ……やだ……』
『嫌じゃないんだろ? これが好きなんだろ? 毎晩。小林のを咥え込んで離さないんだろ?』
『や……くそっ……出せ……やめ……』
『ああ、出してやるよ。お前の奥に、俺の精液をな』
『……やだっ、出すなっ……』
流れた音声に佐藤の顔が真っ青になっていく。
「やだ……これ、小野寺君の声じゃない?」
白々しく麗香さんが口を開き、じろっと佐藤を睨みつけた。
「ああ、これ……俺のスマホじゃないや。事務所に落ちてて……拾ったやつだ。これ……あんたのだろ?」
「な……んで。昨日、ちゃんと抽斗に」
麗香さんの隣に行って、鍵の付いている抽斗のロックをあけて中を確認していた。
「……きさまぁ」
「そう、小野寺君を無理やり。で、女性も無理やり、ねえ」
「所長! ほんとに……違うんですっ」
麗香の膝にしがみつくと、髪を振り乱して首を振った。
「ああ、タイムリミット、だ。女性が来た……って、一緒にエレベータに乗ってきた人って……見覚えがあるな」
俺の言葉に所長と佐藤の目が動く。佐藤の目が飛び出さんばかりに開いた。俺はドアの横に移動すると、ズンズンと突き進出くる佐藤の奥さんのためにドアを開いた。
「こんのぉ……クズ男っ! 最低、なんなの? どんだけ外に女がいるわけ? 離婚よ、離婚!」
「ちょ……なんで?」
「奥様、感情的にならないで。お話はあちらで聞きます。所長室でゆっくりと。離婚協議、私が力になりますわ」
麗香さんが佐藤の奥さんの肩を抱くと、優しい声をかけながらオフィスを出ていった。
茫然と魂の抜けた表情で、床に尻をついた佐藤が「なんで」と呟き、床を叩いた。
俺は佐藤の前に立って見下ろしてから、膝を折って、あいつの髪を思い切り引っ張ってやった。
「手を出す相手を間違えてんだよ。馬鹿か、クソ野郎。人を貶めたいなら徹底的にやれよ。中途半端にしか出来ねえんなら、俺を毎晩咥えて離さねえ奴に手を出すな。わかったか?」
「……」
「わかったのかよ? クソ野郎」
視線を逸らす佐藤に、さらに髪を引っ張った。
「……は、い」
微かながらに返事をしたのを聞いて、俺は立ち上がった。
「被害女性についはどうする?」
「……え? ああ……和解条件を、聞いて……ください」
「わかった。伝えておく」
終わったな――。
俺は佐藤のオフィスを出ると、ホッと息をついた。
0
お気に入りに追加
341
あなたにおすすめの小説
後輩の甘い支配
ちとせ
BL
後輩(男前イケメン)×先輩(無自覚美人)
「俺がやめるのも、先輩にとってはどうでもいいことなんですね…」
退職する直前に爪痕を残していった後輩に、再会後甘く支配される…
商社で働く雨宮 叶斗(あめみや かなと)は冷たい印象を与えてしまうほど整った美貌を持つ。
そんな彼には指導係だった時からずっと付き従ってくる後輩がいた。
その後輩、村瀬 樹(むらせ いつき)はある日突然叶斗に退職することを告げる。
2年後、戻ってきた村瀬は自分の欲望を我慢することをせず…
後半甘々です。
すれ違いもありますが、結局攻めは最初から最後まで受け大好きで、受けは終始振り回されてます。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──

朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。

どっちも好き♡じゃダメですか?
藤宮りつか
BL
俺のファーストキスを奪った相手は父さんの再婚相手の息子だった――。
中学生活も終わりに近づいたある日。学校帰りにファーストキスを自分と同じ男に奪われてしまった七緒深雪は、その相手が父、七緒稔の再婚相手の息子、夏川雪音だったと知って愕然とする。
更に、二度目の再会で雪音からセカンドキスまで奪われてしまった深雪は深く落ち込んでしまう。
そんな時、小学校からの幼馴染みである戸塚頼斗から「好きだ」と告白までされてしまい、深雪はもうどうしていいのやら……。
父親の再婚が決まり、血の繋がらない弟になった雪音と、信頼できる幼馴染みの頼斗の二人から同時に言い寄られる生活が始まった深雪。二人の男の間で揺れる深雪は、果たしてどちらを選ぶのか――。
血の繋がらない弟と幼馴染みに翻弄される深雪のトライアングルラブストーリー。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる