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「はいっ! おはようございます、アレク様。本日の予定をこなしていきますよ」
俺をアレクから引きはがしながら、ミアムスが大きめの声で話しかけてきた。
『じじい共が怒り狂ってるぞ。いつものことだけど。世継ぎの産めない男に腰を抜かしやがって、とさ。今日の議会は荒れるんじゃね?』
フィアジルが片眉をあげながらニヤッと笑う。
『生い先短い奴には言わせておけ。俺は王位も狙ってないし、世継ぎもいらん。欲しいなら姉貴の子だろうが、妹の子だろうが。引っ張ってくればいいだろ。血筋ならたくさんいる』
『そういうなって』
『興味ない』
『ラルーネ様もなかなかご機嫌が悪いようで』
『もっと興味ない』
『婚約者だろ。一応権力者の娘なんだから。丁重に扱えよ』
『嫌だ。そもそも俺は認めてない。勝手にじじい共が言いだしただけだ』
フィアジルとアレクは怖い顔をしている。
俺に聞かれたくない話をしているのはわかる。いつも、聞かれなくないときは、アレクたちの言葉で話す。
そうでないときは、ギール語で話してくれるから。
気にしちゃいけないのはわかってるけど、今日はなんだか気になってしまう。
俺はスッとベッドから降りると、椅子にかかっているガウンを羽織った。気にしてないふりをして、椅子に座り、果物に手を伸ばした。
「ウイルもそろそろ知っておいたほうがいいと思いますので、話しておきますね。アレク様には権力者の娘であるラルーネ様という婚約者がいます……というか、いました。一度決まりかけて、アレク様のほうからお断りをしていますが、向こうは乗り気で、困っている状況です」
「ミア! 余計なことは言うな」
「余計ではないかと。本日、ラルーネ様はこちらに来ていますから。議会の最中はお父様であるカルドと一緒にこの地に留まるそうです。きっとウイルの存在を知ってのことでしょうけど」
「面倒くさい」
「俺の存在?」
手に取った果物を口の前で一度とめると、顔をあげた。
「王都に行き、殺されかけたアレク様がご寵愛姫と一緒に戻った……などという噂が広がってますから」
ミアがにっこりと笑う。その笑みが怖く感じるのは俺だけだろうか。
「『ご寵愛姫』? なわけないだろ。俺、男だし……」
「俺はウイルだけいればいい」
ベッドから出てきて俺の後ろに立ったアレクがぎゅうっと抱きしめてきた。
「……そういうわけにもいかない、と思うけど」
「なぜだ?」
「だってアレクはここの領主なんだろ? それも王位継承権だってある。それならしかるべき血筋の女性と婚姻関係を結んで、世継ぎをつくらないとじゃないのか?」
俺の言葉に、アレクの眉間に皺が寄る。
「アレク様よりも、ウイルのほうが場をわきまえている様だ」
くくくっとフィアジルが肩を震わせて笑った。
「俺は誰に何を言われようとも、ウイル以外の人間と一緒になる気はないし、結婚もしない。王位も興味ない」
フンっと不機嫌丸出しの態度で、アレクが部屋を飛び出していった。
俺をアレクから引きはがしながら、ミアムスが大きめの声で話しかけてきた。
『じじい共が怒り狂ってるぞ。いつものことだけど。世継ぎの産めない男に腰を抜かしやがって、とさ。今日の議会は荒れるんじゃね?』
フィアジルが片眉をあげながらニヤッと笑う。
『生い先短い奴には言わせておけ。俺は王位も狙ってないし、世継ぎもいらん。欲しいなら姉貴の子だろうが、妹の子だろうが。引っ張ってくればいいだろ。血筋ならたくさんいる』
『そういうなって』
『興味ない』
『ラルーネ様もなかなかご機嫌が悪いようで』
『もっと興味ない』
『婚約者だろ。一応権力者の娘なんだから。丁重に扱えよ』
『嫌だ。そもそも俺は認めてない。勝手にじじい共が言いだしただけだ』
フィアジルとアレクは怖い顔をしている。
俺に聞かれたくない話をしているのはわかる。いつも、聞かれなくないときは、アレクたちの言葉で話す。
そうでないときは、ギール語で話してくれるから。
気にしちゃいけないのはわかってるけど、今日はなんだか気になってしまう。
俺はスッとベッドから降りると、椅子にかかっているガウンを羽織った。気にしてないふりをして、椅子に座り、果物に手を伸ばした。
「ウイルもそろそろ知っておいたほうがいいと思いますので、話しておきますね。アレク様には権力者の娘であるラルーネ様という婚約者がいます……というか、いました。一度決まりかけて、アレク様のほうからお断りをしていますが、向こうは乗り気で、困っている状況です」
「ミア! 余計なことは言うな」
「余計ではないかと。本日、ラルーネ様はこちらに来ていますから。議会の最中はお父様であるカルドと一緒にこの地に留まるそうです。きっとウイルの存在を知ってのことでしょうけど」
「面倒くさい」
「俺の存在?」
手に取った果物を口の前で一度とめると、顔をあげた。
「王都に行き、殺されかけたアレク様がご寵愛姫と一緒に戻った……などという噂が広がってますから」
ミアがにっこりと笑う。その笑みが怖く感じるのは俺だけだろうか。
「『ご寵愛姫』? なわけないだろ。俺、男だし……」
「俺はウイルだけいればいい」
ベッドから出てきて俺の後ろに立ったアレクがぎゅうっと抱きしめてきた。
「……そういうわけにもいかない、と思うけど」
「なぜだ?」
「だってアレクはここの領主なんだろ? それも王位継承権だってある。それならしかるべき血筋の女性と婚姻関係を結んで、世継ぎをつくらないとじゃないのか?」
俺の言葉に、アレクの眉間に皺が寄る。
「アレク様よりも、ウイルのほうが場をわきまえている様だ」
くくくっとフィアジルが肩を震わせて笑った。
「俺は誰に何を言われようとも、ウイル以外の人間と一緒になる気はないし、結婚もしない。王位も興味ない」
フンっと不機嫌丸出しの態度で、アレクが部屋を飛び出していった。
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