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一章 〜最強少女はモブに転生しました〜
7話 天界-2
しおりを挟む「...かよわい少女が...」
「あ、長い話なら短くして欲しいのじゃ」
「は、はい。で、そのかよわい女の子が」
「まさか、そのかよわい少女が君なんて事は無いね?」
「ちょっと、2人とも静かに聞けません?!質問やらなんやらが多いのですよ!」
私はテーブルを叩き怒った。
先程から2人に色々と言われなかなか話が進まないのだ。
「短く分かりやすく話すので黙って聞いててください」
「はい」
2人が大人しく黙ったことを確認すると、私は淡々と昔話を始めた。
「私が元々この世界の者では無い、と言うのは知ってますよね?」
「嗚呼、ゼウスから聞いた事がある」
「なら話が早いですね。私前世で、ある違和感を感じたのですよ。それも、普通じゃ気づか無い程度の違和感」
乙女の嗜好の大ファンであった私は、ゲームや攻略本、番外編の小説など全てを読み漁った。
その中で、話の食い違いが自分の中で起こっている事に気が付いた。まるで、話が書き換えられたように。
事細かに前世の違和感を2人に話終えると、セボルト先生は何処からか煙草を取り出し吸い始めた。
「...そう言えば、ユグもそう言っていたな。話が変わり始めていると」
ユグ・セフィル、細かな詳細は知らないが、私達と同じく異世界転生をした男の子だと言うのは知っている。
「あいつでも気が付いたのだから今は相当話が変わっているのではないかい?」
「確かに、私がこの世界に来てから時間が経っているし大きく変わっていてもおかしくないと思います」
だとすると、これからも話は変わり続ける。つまり、私の持っている乙女の嗜好の知識は無意味に近い。
実際、今ここを舞台に話が動いていること自体私には予測不可能な事だ。
「これからの事を心配しているのかい?」
「...私は貴方達を最後まで見届けたい。私が貴方達をラストまで連れて行ってあげます」
「それは有難いね。でも、その後はどうするんだい?」
そう言われ私は転生して初めて自分の人生の事を思い出した。
乙女の嗜好の事ばかり気にしていて自分を見失っていた。私はセボルト先生達を見守ってその後はどうするの?
まず、私はどうなるの?
すると、私の頭に大きな手が置かれわしゃわしゃと撫でられる。
「将来の事は後々考えればいい。まだ3年もあるんだからね」
「私、前世で散々言われましたよ。3年なんてあっという間だって。でも、今はこの世界を謳歌するまでです」
私は椅子を後に押し立つとニコリと笑いセボルト先生に手を差し出した。
「今はまだ力にはなれませんが、私が必要となればいつだって駆け付けますよ」
「そうかい。期待してるよ」
白い煙を吹いたセボルト先生は私の手を掴み怪しい笑みを見せた。
「へぇ、脱獄ですか...」
学園に帰ってきて数時間後、伝えられたのはセボルト先生が天界から脱出したという知らせ。
まぁ、何となく予想はできていた。あの先生の事だ、もしサーシャさんに何かあれば何が何でも駆け付ける。
「良いのですか?」
「うん。だって、まだ何も出来ないもの」
私は目の前に立つ、真っ白で綺麗な女性の手を取った。
私の契約精霊、それも皆が予想出来ない大物だったりするんだけど、この子は危ない存在だから知られてはいけない。
「セイカ、貴方の役目は覚えてる?」
「主様は私に力を貸してくれとおっしゃっておりました。それが契約したあるじ様への忠誠です」
「うん、私がもし間違った道を進もうとしていても止めてね」
「勿論ですよ」
セイカは私の手をギュッと握り締めると暖かな笑みを見せる。
セイカは世界中の精霊。この世界の母、柱となる存在だ。そんなセイカを殺す羽目になればこの世界はどうなってしまうのだろうか。
ただ、不安が募るばかりで私の心は安らぐことは無い。
「主様。どうか、雑用は全てを私にお任せ下さい。大丈夫ですよ、私は死ぬ事を許されない身なのですから」
「うん...」
私はセイカに寄り掛かるように身を寄せた。
今、この世界で私が頼れるのはおじさんとセイカだけだろう。私の未来、それがどうなるかなんて誰一人として分からない。
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