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一章 〜最強少女はモブに転生しました〜
6話 天界-1
しおりを挟む真のヒーローは裏で動き、ヒロインがピンチになると現れるもの。
「ふぅ...今回は大丈夫かな」
私は山積みになった本を見つめ落胆した。
王宮の禁書庫から本を召喚しては読むを繰り返し数時間、いくら早く読むことが出来る魔法があるとしても結構な量だった。
「お疲れ様です」
ナーズは私にお茶とお菓子を用意してくれた。これは、また日本らしいお菓子。
そう言えば、乙女の嗜好1で悪役令嬢だった魔王の妻が営んでいるお菓子のお店があるとか聞いた事があった。
にしても、よくこの世界で餡子やらなんやらを用意できたな...。
「アークエンジェルについてでしたっけ?」
「うん、今のところ1番事件を起こしそうな要注意人物だからね。注意しておかないと」
「いくら学園を守る騎士に任命されたからと言って頑張りすぎでは?」
神様であるおじさんと繋がっている学園長、シュラザード・ゼネルは私が動きやすい様にと学園の騎士と言う謎の任命を私に下した。
確かに、ナーズやセレスにはいい口実になる。だが、少しばかりセンスという物が感じられない。学園の騎士と言ってもSPの様なもの、表沙汰にはならない。だからこそ、密かに動けるが...騎士...。
「私はこれぐらい大丈夫だよ。それに、今回はどうやら私の仕事では無いみたい」
「どういう事ですか?」
「私の出番は無いってこと。それに、私よりも騎士に向いてる人がいるからね...まぁ、現在進行形で監禁されてるけど」
「監禁?」
天界。神が暮らす全ての世界へ渡れる土地。
初めて来たが、興味を引くものばかりで私はあらゆる物を見つめ目を輝かせた。
「天界に来たいとは、やはや驚きが隠せんな」
おじさんはふぉふぉふぉと、笑い天界を案内してくれた。
神様の後継者が学ぶ学校、全ての世界から集められた本が保管される図書館、そして金色の卵を産むニワトリ。
「豆の木...」
「ところで、何の用で天界に来たんじゃったか?」
「ちょっと顔を拝みに来てやろうと思ってね。だって、セボルト先生呆気なく騙されちゃうんだもん」
「そうだったか。あれでも人間だからのぉ、好きな者の事になればそれ以外見えなくなるのが人間じゃろうて」
「そうだね。少しでもセボルト先生に人間らしい所があって良かったよ」
数時間前のこと、全ての真実を知ったサーシャさんの作戦にまんまとはまりセボルト先生は天界へ閉じ込められてしまった。
少しぐらい好きな人を疑う事を知って欲しいという物だ。その間誰がサーシャさんを守るという。
「着いたぞ」
そう言われ目線を上げると、そこには大きなドーム型の花園があった。珍しい所では無い、世界中から集めたのであろう知らない花ばかりだった。
地面を歩く花や歌う花...全てが不思議な光景で目をも疑う。
「ここはゼウスが管理している花園だ。奥に小部屋があるそこにおるぞ」
そう言うとおじさんは姿を消してしまった。
私はその場に立ち尽くし花たちを見つめる。本当に綺麗で面白い場所だ。
ふと、足元に何かが当たった感覚がし下を見た。手足の生えた植物が私に真っ赤な林檎を手渡してくれる。
「これ、くれるの?」
植物はこくこくと頷き林檎を置いて行くともう1つ持ってきてくれた。そして、奥の小屋を指し示す。
「分かった。セボルト先生にも渡すね」
林檎を受け取りニコリと笑うと植物はスキップでらんらんと元の場所に戻る。
「自我を持つ植物...欲しい」
目を輝かせ植物を見ていると、林檎を落としそうになり我に返った。
今日は植物を見に来たんじゃなくてセボルト先生の様子を見に来たんだった。
私は小屋の戸を開けると恐る恐る中へ入った。中は普通の人1人住めるぐらいの部屋...。
「来たのか」
「あ、セボルト先生だ。まさか、本当に捕まっていたとは驚きですよ」
「バカにしに来たのかい?」
「とんでもない。呆気なく監禁されてしまったとっても強い先生の顔を見に来ただけですよ」
「やっぱり馬鹿にしに来たんじゃないか」
これ以上馬鹿にするとやられかねないと察した私は笑って誤魔化した。
「そうだ、これどうぞ。ここに来る途中植物に貰ったんですよ」
「植物?」
「もしかして、この外をご存知ない?」
すると、セボルト先生は私の質問に頷き返した。
直接ここに監禁されてしまったという事だろうが、ここまで呆気なく捕まっていたのか。
「なら、暇つぶしに少し探検します?」
「探検するも何も、ここは防御...」
防御壁に簡単に穴を開けてしまった私を見てセボルト先生はクスリと笑った。
「君にこの壁は関係無かったね」
「そうですよ。私に掛かればどんな防御壁も木っ端微塵ですから」
「恐ろしい力だね」
小屋を出るとセボルト先生は私の後ろから着いてくる。きっと目の前の景色に驚いたのだろう目を見開き無言でその光景を見ていた。
「多分全世界の植物なのでしょう。私も最初は驚きましたよ」
「誰だって驚くだろうね」
「なっ!何で防御壁から出られて居るのじゃ!」
私達に気が付いた全能神ゼウスは私達の元へ飛んできた。思ったより早くバレてしまったな。
「この子の力を知っているだろう?」
「お前、あの時のやつか」
「その節はお世話になりました」
私は軽くお辞儀をするとニコリと笑った。
「お前はここに何をしに来たんじゃ?」
「そうだ、ちょっと話を伝えに来たんですよ。もう言っても良いかなと思って」
2人が首を傾げ私を見つめる中、私は笑みを見せた。
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