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一章 〜最強少女はモブに転生しました〜

5話 舞踏会

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 時はあっという間に過ぎるものだ。
 学園内は明日の武闘会の準備で飾られ、様々な生徒が忙しそうにしていた。


「やはり、皆さん大変そうですね...」
「学園の中で1番と言っていいほどの大行事だからじゃないか。ほら、手を止めないでお前も仕事しろ」
「分かってますよ。にしても、ニエ気合い入れすぎでは無いですか?」


 そう言うとナーズは私が作った大きな花束を顔の目の前で持ち見つめた。
 どうやらこの学園に、好きな人に花束を渡すという謎の風習が出来たらしく、渡された人は優勝するだとか...迷信には間違えしか無いんだけどね。


「信じて無い人が花束作りに凝ってどうするのですか?」
「だって、渡されたら優勝するんでしょ?」
「まさか...」


 私とナーズはトランプタワーを作っていたセレスを見つめた。
 そんなセレスは私達の目線に気が付き思わず持っていたトランプを落としタワーを破壊してしまう。


「なっ!お前らのせいで壊れてしまったじゃないか!」
「それを私達のせいにされても。で、はい絶対優勝してね?」


 私が大きな花束をニコリと笑い渡すと、当たり前だと言って受け取る。
 しかし、武闘会前日セボルト先生とイグニル先生の参加が決まり優勝するのは難しいだろうと話していたが、生徒の部でセレスは呆気なく敗退するのだった。
 軽い貧血を起こして...。











 豪華な舞踏会の会場、様々な生徒が踊り騒いでいた。


「舞踏会って思っていたより凄いのね...」


 私はお皿にミニケーキを乗せながらセレスに不機嫌な言葉を掛けた。


「お前舞踏会は初めてだったか?」
「うん。ほら、貧乏な生まれだから」
「よくこの学園に入れたな。学費高いだろ」
「私を支えてくれる人が居るんだよ」
「支えてくれる人って誰だ?」
「きっと、セレスには想像も出来ない人だよ」


 私はニコリと笑いワインを1口飲んだ。
 この世界は地球の人間よりふたまわりも体が強いせいか未成年飲酒なんて概念がない。まず、未成年なんてものが存在するものの無い気もする。
 つまり、まだ20歳になっていない私でもワインなどのお酒を飲めるということ。ここのワインは度数が高くてすぐ酔ってしまいそうだが。


「ん?なんか人集りができてるな」
「人集り?」


 私は目を凝らし人集りを見つめていると、思いがけない格好の人物に思わずワインを吹いてしまいそうになった。


「どうしたんだ?!」
「いや、まさかセボルト先生がドレスを着てくるなんて思いもしなかったから」
「あの教師がドレスを?!」


 そう言うとセレスはセボルト先生の弱みでも握りに行くつもりなのか急いで人集りに向かって行った。


「元気ね...」
「お嬢さん、元気にしてたかね」


 ふと現れたタキシードのおじさんに驚き目を大きく見開いたが、ニコリと笑い微笑みかけた。


「最高です。第2の人生も悪くないですね、おじさん」
「それは良かった良かった」
「ところで、神様ともあろうお方がここにどのような御用で?」
「ふぉふぉふぉ、少しばかり様子を見に来ただけだ」


 わざわざ私の様子を見に来てくれたのか。
 私はおじさんの手を取るとワイングラスを握らせた。


「じゃあ羽目を外さないと、神様ってストレスが溜まりそうな職種第1位だよ」
「神を職種と言う人間はお前さんぐらいだぞ」
「この世界は神に関わりすぎて麻痺してきてるの。それより、学費の件ありがとうございます」


 私は頭を下げお礼を述べた。
 セレスの言っていた通り、ここへ通うには馬鹿高い学費が必要だ。だが、どうやらおじさんが手を回してくれて居たようで、街で暮らしていた私に入学の案内が届いた。


「お前さんならこの世界をしっかり導く事ができる。今、この世界を大きく変えようとしているのがこの学園。どうか、私の監視下では無いが、この世界を頼むぞ」


 そう言うと私の頭を軽く撫でる。
 まるで我が子のように優しく暖かい温もりを与えてくれるように。


「お前さんを必ず守ろう。例え、他の神に抗う事になろうとも」
「そんな事言って、もし私が悪い方へ歩んでしまったらどうするの?」
「その時はその時だ。私から道を正すよう導こう、だから自分の好きなように生きるんだ」
「...うん」


 すると、おじさんは私の目の前から姿を消してしまう。
 この世界で私はプレイヤーなのだ。私が主人公達を導かなければならない、だからこそ私は道を踏み外してはいけない。
 だが、運命とは神でも決めることが出来ないもの。例え、存在しては行けない生物を亡き者にする事さえ出来ないのだ。











 皆が会場で騒ぐ中、私達は校舎裏に身を潜めた。


「はい、しっかり入手しておきましたよ」


 ナーズはそう言って束になった紙を手渡した。生徒に関しての資料は地下にある鍵のかかった書庫に厳重に保管されている。
 そこで、皆が会場に集まるこの時を狙いナーズには書庫に潜入してもらった。ナーズの手に掛かればこれぐらい簡単だと言う。


「この3人、セボルト先生も探っているようですよ」
「へぇ...セボルト先生がね」
「にしても、この3人が何か?」
「これから起こる事件の首謀者がここに居るってこと」
「事件?」


 私は3つの名簿の中で1つの名簿を月に掲げるとニコリと笑った。
 マーティ・パラノイア、サーシャさんと同じ虹色の魔石を持つ神童。






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最強少女の本編は魔王の娘です。
細かい内容まではお話の中に入って来ないこともあります。
ですので、詳しい内容を知りたい方は御手数ですが、魔王の娘の4章辺りから読んでくださるとありがたいです。
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