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16つないだ手にある物。 ~裕司、少し先の事を思って立ち止まる瞬間~
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庭で掃除をしたあと庭石にすわってぼんやりする。
ポケットの携帯を手にする。
食事の準備の手伝いも終わり子供たちもいなくて・・・暇だからなんて言ったら怒られるかもしれないけど迎えに行きたいと思って聞いてみる。
あと20分くらい。
一度家に戻りキッチンの姉に声をかける。
「由利乃さんを迎えに行ってくる。」
振り向いた姉の顔がまた?と言ってるようだ。
「あんまりしつこいと迷惑じゃないの?」
「そんなことないよ。」会いたいと書かれてたし。
「今日は健と子供達もいないしと父さんも遅いからご飯に誘ったら?カレーだけど。たまには私も会いたいわ。」
「うん、聞いてみる。」
しばらくして返事が来た。
「来てくれるって。何か買ってくるものある?」
「アイス、贅沢アイス。裕司のおごりで。」
「了解。」
由利乃さんを迎えに行き、帰りにスーパーに立ち寄りアイスを買う。
「今日はカレーです。母と姉と僕しか揃わないから。」
「そんなこともあるんですね。子供と健さんがいないと静かじゃないですか?」
「そうだね。姉が張り切って由利乃さんに飲ませるかもしれないし、いろいろ聞かれるかもしれないし。心を強くして乗り切って。」
「大丈夫ですよ。」
「もちろん帰りは送るから飲みすぎても大丈夫だよ。」
一緒に家へ帰りつく。
「ただいま。」
「お邪魔いたします。」
「由利乃さん、久しぶりね。いつも文字ばかりで寂しいから、ゆっくりしてってね。」
「こんばんわ。急にすみません。」
「アイスは由利乃さんが払ってくれたよ。」
言いながら冷凍庫にしまう。
「ありがとう。じゃあその分いっぱい食べてって。」
「はい、でも最近太っちゃって・・・・。」
「そんなの裕司は気にしないから大丈夫。まあまあ、座って。」
阿吽の呼吸で姉を手伝い、由利乃さんには座って待ってもらう。
「裕司さんの段取りがいい理由、わかりました。」
必要なものをそろえて並べていると由利乃さんが言う。
「あぁ、姉に鍛えられてるから。」
「一番暇なんだから当然使える者は使う、かわいい弟ならなおさら遠慮なし。」
サラダとカレーをテーブルに置く。
「母さん呼んできて。」
姉に言われて母さんを呼びに行く。由利乃さんのことも伝える。
「いらっしゃい、由利乃さん。裕司がすっかり居座ってごめんなさいね。家賃払わなきゃいけないところよね?」
「いえ、今日はすっかりお邪魔してしまって。」
「いいのよ。今日は特に寂しい人数だし。良かったわ。」
席についていただきますと言い合い食事を始める。
「美味しいです、香さん。」
「そう?今日は大人味にしてます。残りにすりおろしたリンゴを入れて子供に食べさせるから。」
「なるほど。」
「由利乃ちゃんも毎週裕司と料理してるんでしょう?どう?」
「大分手慣れてきたつもりです。毎回おいしく出来てます。」
話をしながら食事が進む。
食事の後はお酒とおつまみ、アイスを出す。
姉を座らせていつものように片づけをする。
由利乃さんと姉が楽しそうに話している。
太ったかな?ちょっと離れて由利乃さんを見る。
あんまり分からないけど。最初から細かったから、もっと太ってもまだまだ細いほうじゃないかな。
母親も話に参加しているのでお湯を沸かしてお茶をいれる。
「そういえば由利乃さんのご家族に挨拶したんでしょう?大丈夫だった?」
「はい、妹だけのはずだったのに両親がいて私もビックリでした。でも両親もすっかり安心してくれました。」
「緊張して変なこととか言い出さなかった?」
「大丈夫でしたよ。ただ髪の毛を編み込んでもらってたので、それを裕司さんにやってもらったと言ったら父親がびっくりしてました。」
「髪の毛?」
「はい。きれいに編み込んでもらいました。」
「は、は~ん。一時期やたらと楓の髪の毛に凝ってると思ったら由利乃さんの練習台だったのね。楓はすっかり気に入って喜んでたけど。なるほど~。」
姉がこっちを見る。
「園で必要な技術なんだから楓にちょっと頭借りただけだよ。由利乃さんのは洋服に合わせてその方がいいかなあって思っただけだし。」
「毎週末一緒に過ごしてますなんて馬鹿正直に言ったの?」
「言ってないよ。」まさかそんなこと言えないって。
「良かったじゃない。とりあえず気に入ってもらえたなら。」
母親が言う。
「はい。」
由利乃さんが答える。もちろん良かった。
話をしながらふと時計を見るともう九時を過ぎてしまった。
「由利乃さんちょっと遅くなっちゃったけど、大丈夫?疲れたでしょう?」
彼女も時計を見る。ブレスレットがそこにあるのに気がついた。
「あ、すみません。遅くまでお邪魔しました。」
「こっちこそ、ごめんね。ねえ、また来てね。」
「はい。ごちそうさまでした。美味しかったです。」
「じゃあ、送ってくる。」と言って外へ出る。
手をつないでゆっくりと歩く。
「してくれてるんだね、ブレスレット。」
つないだ手を視線の届くところまで上げる。
薄暗い街灯の下でも細いチェーンが揺れるのがわかる。
「勿論です。いつもしてますよ。」
「今日、隣の先輩に気づかれました。プレゼントでしょうって言われて。私の雰囲気が前より明るくなって大人っぽくなったとも言われました。」
笑顔でこちらに向く。
どうですか?と聞かれてるようで。
「僕の中では昔から大人っぽい感じはあったけど、前はもっと見せかけで精一杯な感じだったかな。本当に桜の木に吸い込まれそうな、繊細さや華奢な感じで壊れそうな・・・・・その一瞬で、見とれたくらい。」
「裕司さん、私ちょっと太ったみたいです。わかりますか?」
「全然、まだまだ華奢だよ。気にしてる?」
「それは・・・・ちょっとは。」
「両手が回るうちは大丈夫。」
「さすがにそこまではいきません。」
ゆっくり歩いてもやっぱり近くて。
あっという間にいつもの信号のところに着いた。
「裕司さんありがとうございました。ごちそうさまでした。」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
手を振り彼女がマンションに消えるのを見送り、自分も来た道を帰る。
家に帰り、父親と義兄の食事の準備をしておく。
もうすぐ帰ってくるだろう。
もし、自分が結婚してこのうちから出て行ったら姉は楽になるだろうか?
大変になるような気がするけど。
母もまだまだ仕事をするだろうし、子供の手がかからなくなるとはいえ今度は塾のお迎えなどの習い事も増えてくるとそれなりに忙しくなるだろう。
気にしても仕方がないことだけど、応援してくれてるだけについつい考えてしまう。
ポケットの携帯を手にする。
食事の準備の手伝いも終わり子供たちもいなくて・・・暇だからなんて言ったら怒られるかもしれないけど迎えに行きたいと思って聞いてみる。
あと20分くらい。
一度家に戻りキッチンの姉に声をかける。
「由利乃さんを迎えに行ってくる。」
振り向いた姉の顔がまた?と言ってるようだ。
「あんまりしつこいと迷惑じゃないの?」
「そんなことないよ。」会いたいと書かれてたし。
「今日は健と子供達もいないしと父さんも遅いからご飯に誘ったら?カレーだけど。たまには私も会いたいわ。」
「うん、聞いてみる。」
しばらくして返事が来た。
「来てくれるって。何か買ってくるものある?」
「アイス、贅沢アイス。裕司のおごりで。」
「了解。」
由利乃さんを迎えに行き、帰りにスーパーに立ち寄りアイスを買う。
「今日はカレーです。母と姉と僕しか揃わないから。」
「そんなこともあるんですね。子供と健さんがいないと静かじゃないですか?」
「そうだね。姉が張り切って由利乃さんに飲ませるかもしれないし、いろいろ聞かれるかもしれないし。心を強くして乗り切って。」
「大丈夫ですよ。」
「もちろん帰りは送るから飲みすぎても大丈夫だよ。」
一緒に家へ帰りつく。
「ただいま。」
「お邪魔いたします。」
「由利乃さん、久しぶりね。いつも文字ばかりで寂しいから、ゆっくりしてってね。」
「こんばんわ。急にすみません。」
「アイスは由利乃さんが払ってくれたよ。」
言いながら冷凍庫にしまう。
「ありがとう。じゃあその分いっぱい食べてって。」
「はい、でも最近太っちゃって・・・・。」
「そんなの裕司は気にしないから大丈夫。まあまあ、座って。」
阿吽の呼吸で姉を手伝い、由利乃さんには座って待ってもらう。
「裕司さんの段取りがいい理由、わかりました。」
必要なものをそろえて並べていると由利乃さんが言う。
「あぁ、姉に鍛えられてるから。」
「一番暇なんだから当然使える者は使う、かわいい弟ならなおさら遠慮なし。」
サラダとカレーをテーブルに置く。
「母さん呼んできて。」
姉に言われて母さんを呼びに行く。由利乃さんのことも伝える。
「いらっしゃい、由利乃さん。裕司がすっかり居座ってごめんなさいね。家賃払わなきゃいけないところよね?」
「いえ、今日はすっかりお邪魔してしまって。」
「いいのよ。今日は特に寂しい人数だし。良かったわ。」
席についていただきますと言い合い食事を始める。
「美味しいです、香さん。」
「そう?今日は大人味にしてます。残りにすりおろしたリンゴを入れて子供に食べさせるから。」
「なるほど。」
「由利乃ちゃんも毎週裕司と料理してるんでしょう?どう?」
「大分手慣れてきたつもりです。毎回おいしく出来てます。」
話をしながら食事が進む。
食事の後はお酒とおつまみ、アイスを出す。
姉を座らせていつものように片づけをする。
由利乃さんと姉が楽しそうに話している。
太ったかな?ちょっと離れて由利乃さんを見る。
あんまり分からないけど。最初から細かったから、もっと太ってもまだまだ細いほうじゃないかな。
母親も話に参加しているのでお湯を沸かしてお茶をいれる。
「そういえば由利乃さんのご家族に挨拶したんでしょう?大丈夫だった?」
「はい、妹だけのはずだったのに両親がいて私もビックリでした。でも両親もすっかり安心してくれました。」
「緊張して変なこととか言い出さなかった?」
「大丈夫でしたよ。ただ髪の毛を編み込んでもらってたので、それを裕司さんにやってもらったと言ったら父親がびっくりしてました。」
「髪の毛?」
「はい。きれいに編み込んでもらいました。」
「は、は~ん。一時期やたらと楓の髪の毛に凝ってると思ったら由利乃さんの練習台だったのね。楓はすっかり気に入って喜んでたけど。なるほど~。」
姉がこっちを見る。
「園で必要な技術なんだから楓にちょっと頭借りただけだよ。由利乃さんのは洋服に合わせてその方がいいかなあって思っただけだし。」
「毎週末一緒に過ごしてますなんて馬鹿正直に言ったの?」
「言ってないよ。」まさかそんなこと言えないって。
「良かったじゃない。とりあえず気に入ってもらえたなら。」
母親が言う。
「はい。」
由利乃さんが答える。もちろん良かった。
話をしながらふと時計を見るともう九時を過ぎてしまった。
「由利乃さんちょっと遅くなっちゃったけど、大丈夫?疲れたでしょう?」
彼女も時計を見る。ブレスレットがそこにあるのに気がついた。
「あ、すみません。遅くまでお邪魔しました。」
「こっちこそ、ごめんね。ねえ、また来てね。」
「はい。ごちそうさまでした。美味しかったです。」
「じゃあ、送ってくる。」と言って外へ出る。
手をつないでゆっくりと歩く。
「してくれてるんだね、ブレスレット。」
つないだ手を視線の届くところまで上げる。
薄暗い街灯の下でも細いチェーンが揺れるのがわかる。
「勿論です。いつもしてますよ。」
「今日、隣の先輩に気づかれました。プレゼントでしょうって言われて。私の雰囲気が前より明るくなって大人っぽくなったとも言われました。」
笑顔でこちらに向く。
どうですか?と聞かれてるようで。
「僕の中では昔から大人っぽい感じはあったけど、前はもっと見せかけで精一杯な感じだったかな。本当に桜の木に吸い込まれそうな、繊細さや華奢な感じで壊れそうな・・・・・その一瞬で、見とれたくらい。」
「裕司さん、私ちょっと太ったみたいです。わかりますか?」
「全然、まだまだ華奢だよ。気にしてる?」
「それは・・・・ちょっとは。」
「両手が回るうちは大丈夫。」
「さすがにそこまではいきません。」
ゆっくり歩いてもやっぱり近くて。
あっという間にいつもの信号のところに着いた。
「裕司さんありがとうございました。ごちそうさまでした。」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
手を振り彼女がマンションに消えるのを見送り、自分も来た道を帰る。
家に帰り、父親と義兄の食事の準備をしておく。
もうすぐ帰ってくるだろう。
もし、自分が結婚してこのうちから出て行ったら姉は楽になるだろうか?
大変になるような気がするけど。
母もまだまだ仕事をするだろうし、子供の手がかからなくなるとはいえ今度は塾のお迎えなどの習い事も増えてくるとそれなりに忙しくなるだろう。
気にしても仕方がないことだけど、応援してくれてるだけについつい考えてしまう。
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