今年も綺麗に咲いたねって、一緒に桜を見上げてくれる人と。

羽月☆

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14 一緒の未来を見つけに ~裕司、宣言した未来への約束~

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自分の行動範囲からはかなり外れて、由利乃さんの妹と会うことになった。
珍しく早起きした彼女。あっさりとベッドを抜け出して準備をしている。
小さな日常をくり返し、やっと彼女が納得出来たみたいで家族の一人を紹介してくれる。
彼女より自分の方が緊張してるはずなんだけど、いつものようにぐっすり眠った。
布団の中で伸びをして起き上がる。

食事をしたあと彼女の髪を新しく覚えたやり方で編み込む。気に入ってもらえてよかった。
楓で練習した甲斐があった。もちろん楓も気に入っていた。
準備が出来たら出かけて適当に二人で歩く。
週末に出かけることも増えたけど滅多に来ない場所。
妹さんとの待ち合わせ場所にじわりじわりと近づいていく。
お店を探して正面に立つ。思ったより大きな、高そうなお店だった。
女の子好きするカフェかと思ってたんだけど。
由利乃さんに半歩遅れてお店に入る。お店の人が席に案内してくれた。
余裕を持って配置されたテーブルの奥、半分個室のように低い仕切りがある。
女の子が一人と思いきや大人が二人。



由利乃さんも気がついて止まる。二人で立ち止まったまましばし。
妹さんが気がついてこちらに手を振る。
向かいにいた大人二人も気がついた。
どう見ても由利乃さんの両親。
由利乃さんが急ぎ足になりテーブルに近づく。
その勢いから知らなかったと分かる。
大きな声ではないけどいつもよりは興奮してるのがわかる。
息を吸い由利乃さんの横に立つ。
家族に自己紹介をする。
一斉に視線を受けて緊張する。
礼をして顔を上げると由利乃さんが慌てて家族を紹介してくれた。

席に座り後は食事をしながら自分のことを聞かれるままに。
ちゃんと結婚を前提とした気持ちで付き合っているという自分の気持ちを由利乃さんと家族に伝えた。
妹さんの程よい緊張のない質問に助けられながら和やかに食事が出来たのではないかと思う。

お店を出て改めて挨拶して別れて見送ったとたん力が抜けた。
座り込んで大きくため息をつく。
由利乃さんに手を引っ張ってもらい立ち上がり二人で歩きだす。
まだ少し歩きたいという彼女の希望でふらふらとお店を見ながら歩く。
どこのお店もショーウィンドウを見てるだけでも華やかな気分になる。

その中にアクセサリー屋さんがあった。名前は知らない、有名なのだろうか?
数人のお客さんがガラスケースを見下ろしている。
小さなキューブで示された値段はびっくりするものではない。
由利乃さんを誘うようにして中に入る。アクセサリーは嫌いじゃないだろう。
せっかくなので記念にとショーケースを見てもらう。
本当は指輪を贈りたい気もするけど、それは本人が気に入ったブランドでどれがいいかよく吟味したあとに・・・。

ガラスケースの中を見つめる彼女に聞く。

「由利乃さん、どう?」

迷わず一つのデザインのものを指さして店員さんに出してもらい、細い腕にはめてもらう。
腕にゆるく巻き付いたデザインがきれいで本人も満足そうな顔をする。

「似合うよ。」

店員さんに購入をお願いして商品はそのまま腕に、箱を小さな紙袋に入れてもらい受け取る。
お店に出た後も腕を持ち上げて見てる彼女の手をつないで通りを歩きながらゆるい会話を続けて時間を過ごす。
緊張の後の弛緩。一緒にいてものんびりとできるのは・・・・ちょっと頼りない彼女の雰囲気のせいか、年齢の差のせいか。
最初の頃に感じた精一杯さがなくなり本来の素直さが見られる。
そう感じられるんだけど気のせいだろうか?

話ながら時々見上げる顔がとてもかわいい。自分にだけ見せてほしい表情。
しばらくしてまた二人彼女の部屋へ戻る。
週末にはもう何度も繰り返してきたパターン。
いつもの場所に座り落ち着く。

「裕司さん、何か飲みますか?」

「ううん、今はいいよ。」

彼女がジャケットをハンガーにかけてため息をついて横に座る。

「由利乃さん、疲れた?」

「はい、疲れました。でも裕司さんの方が疲れましたよね。」

「うん、間違いないね。いろいろと初めてだったからね。」

「本当にすみませんでした。きっと妹が先走って話を大きくしたんだと思います。」

「うん、でも一度あいさつしたかったから良かったよ。先にわかってたら昨日から緊張してたと思うし。」

隣を見て肩に手を乗せる。いつもなら髪の毛をくるくると遊んで楽しむのに今日は自分でまとめてしまって指先が何も触れない。

「由利乃さん、外すよ。慣れないと頭痛くなるんじゃない?」

そんな言い訳が自然と出る。
アクセサリーとピンを外してかたまった髪をゆるくほぐしていく。

「大丈夫?」

「はい。でも確かに楽です。」

いつものように髪をいじりながら彼女の首元に鼻を近づけていく。

「ねえ、由利乃さん。」

手を放して彼女の手を両手でくるむ。当然彼女はこっちに向き合うようになる。

「その内、考えてもらえるかな?僕の気持ちは今日ご両親に言った通りだから。」

由利乃さんの瞳が揺れる。

「ずっと一緒にいたい。一緒にいる未来もいろいろと想像できる。一緒にご飯作って、食べて、行ってらっしゃいとただいまと。一緒に子供を挟んで歩いてる姿も普通に想像できる。由利乃さんに似た可愛い女の子。」

「私は・・・・私も一緒にいたいです、もっと。」

その先はないのか、彼女が下を向く。

「その先は・・・・もう少し時間をください。このままが心地よくて・・・・。」

「いいよ。今急いで聞きたいわけじゃないから。ただ僕の気持ちをきちんと由利乃さんに伝えてからご両親に伝えたかったけど逆になってごめんね。しょうがないよね。」

「由利乃さん、ご馳走になったからもう一度ごちそうさまとお礼を伝えてね。」

「はい。裕司さん、妹はどうでしたか?性格は似てないでしょう?」

「そうかな?かなり気を遣ってくれてたよね。本当にいてもらえて助かったと思ってるよ。」

「確かに会話のクッション材にはなってました。両親も同じ思いだと思います。」

「とにかく無事に終わってよかった。ホッとした、ね。」

ふぅ。さてと。

「由利乃さん、今日は一緒にお風呂に入らない?」

疲れを取るためにお風呂へと思って誘ったら、想像以上に拒否を含んだ表情でびっくりされた。

「そんなに嫌だった?」

ちょっとがっかりとして言うと思った通りに照れたような顔になる。

「恥ずかしいです。」

「ちょっとのんびり入りたいなあと。」

どうかなあと誘うように肩をポンポンと叩きながら誘うように翻意の返事を待つ。

「・・・・・・電気消していいですか?」

「勿論、どうぞ。」

肩をもう二回ポンポンと叩いて手を引いて立ち上がる。
バスタブにお湯をためてさっさと服を脱いで先に入る。お湯を出して浴室を暖める。
電気が消されて由利乃さんが入ってくる。
シャワーの下に立ってもらい髪の毛を洗う。

「由利乃さん、あとで交代ね。」

髪の次は体を。サラリと洗う。
バスタブに座り彼女に頭を出し自分の目を手で押さえる。
洗い流してもらったら正面に立って背中を洗ってもらう。先にバスタブに入ってもらい残りを自分で洗い流す。
隅っこに膝を抱えるようにして座り、小さくなっている彼女。
開いてるスペースに沈み込み彼女を引き寄せる。

「二人で入るとお湯も節約できるよ。電気も節約、背中もきれいに洗えていいことばかり。」

それでも無言の彼女。

「由利乃さん、もしかして・・・怒ってる?」

後ろから顔をのぞきこむと目を閉じている。
さすがにそれは感じたようで目を開ける。

「・・・裕司さんは恥ずかしくないんですか?」

「うん、あんまり。じっくりと見られると恥ずかしいかな?」

「見ません!!」じっくりとなんて・・・。

珍しく激しい反応。

「いいよ。目を閉じたかったら閉じても。でも僕が閉じないと意味ないような気がするけどね。僕の方がじっくり見ちゃっても由利乃さん、気がつかないんじゃない?」

ハッとしてこちらを見る。

「自然に、自然に。」

まだ力が入ってるようで疲れそう。

「女の人と一緒にお風呂に入るなんて・・・子供のころ姉と兄と入って以来だな。」

自分が洗ってあげたばかりの髪にキスをする。

「2人とも完全におんなじ匂いだね。」

髪を撫でながら肩にお湯をかける。
相変わらず静かな彼女。

「由利乃さん、そろそろ慣れた?」

首を振る。

「疲れるよ。」

肩に口を寄せて首から背中にキスをする。

「こっち向かない?」

体を両手で抱き寄せて肩から首へ、頬へ。
キスの音が浴室に響く。あとはゆっくり動く水音。
横を向かせるとやっと彼女が顔を上げてくれた。
何か言いたそうに半開きの唇がそそる。
髪の毛をはらいフェイスラインをなぞるように手で触れ唇へ。
ようやく彼女の手が自分の背中に回った。

激しくなるお互いの息遣いを聞きながらキスをくりかえす。
膝立ちにした彼女の間に足を入れて腰を支える。
胸に吸い付くようにキスをくりかえし二つの頂を攻める。
彼女の中心に指を添えて刺激する。
頭を強く抱き寄せられて胸に押し付けられる。
声が浴室に響きあっという間に彼女が上りつめた声を出す。
お湯から出た彼女の肩が冷えないようにゆっくり腰を支えながら体を抱きしめ一緒にお湯に沈む。すっかりぬるくなったのでお湯を出して熱くする。
彼女の息が落ち着く間温まり一緒に出る。

バスタオルを巻いて髪の毛を乾かしてあげる。
少し落ち着いた彼女が見上げてくる目にこの上なく愛しい気持ちと、押さえつけていた熱が一気に噴き出す。
欲しいと言われたら喜んであげる。自分のすべてを。
そのまま手を取ってベッドへ。

電気を消し、布団の中で抱き合う。

「由利乃さん、愛してる。」

その夜も何度も繰り返した。
同じ未来を見たい。自分の描く未来が彼女に伝わるように、彼女の見る未来に自分がいますようにと。
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