コタロとマシロ~仲良しの二人~

羽月☆

文字の大きさ
上 下
14 / 15

14 ドキドキが鈍らないように、努力をしてるつもりのマシロ。

しおりを挟む
私の初恋は?

いつ?誰?


「ねえ、お母さん、私は小さいころ『コタロが好き。』って言ってた?」


「毎日言ってたわよ。お母さんだけじゃなくて虎太郎君にも。」


「それは、弟みたいな感じだよね。」


「ううん、ままごとしながらも虎太郎君にしつけをしてたわよ、女の人と遊んじゃダメ、一緒にお酒を飲んじゃダメって。」


「なにそれ?」

まったく記憶にない。
普通にぬいぐるみを並べてお父さんお母さんの家族ごっこはしたとおもうけど、普通そうだよね。
だいたいそんな頃から嫉妬しやすかったの?
今までの彼氏にも言ったことないセリフ、思ってはいてもね。
だいたいそれはお母さんがお父さんに言ってたセリフ?それともドラマの影響?


「いいじゃない、小さい頃の初恋の相手とお付き合いをしてて、もしそのままうまくいったら面白いわよ。いろいろと教えちゃおう。あの頃の真白の事。虎太郎君の方が小さかったし覚えてないでしょう?」

「いい、二人で思い出していろいろ話をしてるから、小さい頃の話はいい。」

「そう?」

コタロが初恋の相手らしい、あっさり言われた。
じゃあ、お互いそんな感じだったらしい。
途中いろんな男の人を好きになって、その間はすっかり忘れてたのに。
コタロのことなんて本当に隣の隣の懐かしい男の子だったのに。


男っぽくなって、ちょっと強気になってきた最近。

時々びっくりする。
いきなり大人のコタロが隣に寝てるのに気がついた時に。


当然あの頃ままごとで家族ごっこしてた時よりは強く男らしく逞しくなってる。
コタロのとこのおじさんよりもずっとずっと・・・多分。
ただ、そう言うと本当に嬉しそうに懐かしい顔で照れるコタロ。
そんな笑顔が見たくて、つい褒めてしまう。


「真白、変な顔して思い出し笑いしてるけど。虎太郎君とは仲良くしてるのね。」

「うん。すごく仲良しだよ。」

慌てて視線を戻した。それでも笑顔で答えられる。

「じゃあ、安心しておく。」




コタロはまったく一人暮らしする気はないみたい。
だって私の部屋も通勤に便利で。
だから遅くなった時と週末は泊まりに来る。
遅くなると言っても・・・・本当に残業は少なくて私の方が遅いくらい。
帰ったら虎太郎がご飯が出来てることもあったりして、私も楽してる。

そして先輩以来、久しぶりにモチベーションをあげてくれてる。
コタロが来るかもって思うとさっさと仕事は終わらせたいって、前よりそう思ってる。

だから書類を見ながらぼんやりなんてしないで、休憩も控えて頑張る時はある。

それでも来てくれない時の方が多いから、そうしたら電話で話をする。



『マシロ、明日飲み会なんだよ、泊めて。』


「女の子も一緒に飲むの?」


そう聞いてしまって、お母さんに教えられた昔のことを思い出した。
あああ・・・・・あの頃も言ってたのかもしれない。


『違うよ、柴田とか、同期の男だけ。みんな彼女いるから。』


「そう。じゃあ、終わったら連絡してね。」


『うん、遅くはならないよ。』






飲むと余計に私の家に泊まりたがるコタロ。
通勤時間としてはちょっと楽になるくらい。
朝の電車は同じくらい混むんだけど。


何でだろう?
うれしいけど、ちょっとそう思ったりして。



「ただいま、マシロ。」



玄関を開けたらちょっと赤くなったコタロがいた。
普通にただいまと言って帰ってくる。
それは自然に。


お水を飲みながら、ちょっとだけお酒とたばこの匂いがするコタロにもたれながら聞いてみた。



「ねえ、コタロ。泊まってくれるのはうれしいけど、何で飲むと実家より、ここなの?」


ちょっとコタロが離れた。

顔を見る。


「だってみんな彼女の話をするし、柴田もいるからいろいろ聞かれたり揶揄われたりもするし、一緒に住んでる奴も一人いるし。」


だから・・・って事?


「だから、会いたくなるし。一人で家に帰るのは寂しい気がして。面倒だったり疲れてる時は断ってくれるよね。」


「もちろんそんなことがあればね。でも大丈夫。本当に私だってうれしいよ。一人でいるよりはコタロと一緒がいいし。週末じゃなくても大歓迎だよ。」


「マシロ・・・・・。」

じゃあ・・・・って聞こえた気がしたけど、気のせいだったかも。
その後は続かなかった。

真麻ちゃんも仲良く柴田君と付き合ってるらしい。
そしてコタロには教えてないけど、成美ちゃんにも彼氏が出来た。
うれしそうに笑い、照れて、前より綺麗になった成美ちゃん。

しばらくコタロには教えないと思う、だって成美ちゃんは同じように私を褒めた。
『もう、真白さん、ずっとずっと綺麗に色っぽくなって、幸せそうです!』って。
本当にいい子。


週末ここに居るのはお互いの両親も知ってるし、コタロの荷物は季節が変わるごとに増えて来てる。


「マシロ・・・・・・大好き。」


「うん。」

お酒臭いコタロに答える。
そんなこと知ってる。
コタロは本当によくそう言ってくれるから。

あの頃と同じような呼び方だから、口癖みたいじゃない?

でもそんな二人でも満足してるよ。


ちょっとだけ遅い平日。
残りの夜の時間は短いはずだけど、いつもよく眠れる。
大きなコタロを抱きしめながら、抱きしめられながら、ぐっすりとよく眠れる。


『マシロ、大好き。もっと一緒にいたい。いつも一緒にいたいよ。』

ちょっとだけ目が覚めそうなときにそう言われたけど、返事は出来なかった。
頭を撫でられて気持ち良くてそのまままた寝てしまったから。
『私も。』って伝わってない?





「ねえ、ハギ、最近どう?」

「何?漠然とした聞き方。仕事の事で悩みでもあるの?」

「ない訳じゃない、でもそうじゃなくて。」

ハギは大学卒業間近に付き合い始めた彼氏と一緒に暮らし始めた。
『試しに、ちょっとだけね。』って言って。


「初恋相手のコタロ君とラブラブでしょう?まさかの倦怠期?もう鮮度が落ちた?」

「そんな事ありません!!ラブラブです!!!」


「そうなんだ。良かったね。」

そうじゃなくて・・・・・。



「ハギは?彼氏とのお試し期間はどう?」

「まあ、問題はないし、意外に楽だよ。時々けんかはあるし、ちょっとイラっとすることも増えたけど、我慢しないで言うようにしてる。」

「それで?」

「八割は謝られて、二割は私が反省する。」


今のところ私もコタロとの喧嘩らしい喧嘩はない。
でも喧嘩しても同じような割合で私も謝らせて、極まれに反省するだろう。


「もしかして、一緒に暮らしたいの?」

「どうだろうなあってちょっとだけ思う。」

「なんだかうまくいきそうだけどね。」

「そうかな?でもドキドキしなくなりそう。」



そう言ったら変な顔をされた。

何?


「コタロ君に相談してみれば。ドキドキが続くような関係を保って、かつ一緒に暮らしたいって。」

投げやりな感じで言われた。
ドキドキが続くように。だって安心したらどこまでも油断しそうだし。
少しは緊張も必要だよね。

酔っぱらって違う人との思い出を話したりしようものならすごく怒るんだから。
前は拗ねてたのに、最近はたちまち機嫌が悪くなる。
やっぱり私だって結構謝って反省してるじゃない。

威張れないけどね。

だから油断はできないの。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

命を狙われたお飾り妃の最後の願い

幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】 重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。 イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。 短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。 『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...