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20 素顔でいる意味 ~太陽、素晴らしく回復中

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しょうがないよ。

自分一人だとあんまり使わない洗濯機の乾燥機能。
いつものように洗って乾くと思ってた。
モードを変更してなかったのだ。
だからせっかく洗ってあげた下着も洗濯したまま。

気がついて取り出して浴室に干すのを・・・・忘れていた。
浴室乾燥で乾かしてあげようと思ってたのに。
ただ気が付いてからも、まあいいかなんて思ってたのは事実。


でも最初っからそう思ったわけではないのに。
明らかに疑うような視線を向けられた。

ちょっとムッとしたいけど勝手に下着を洗ったり、結局忘れてしまったのは自分だから。

とうとう諦めてくれたみたい。


新しいパジャマを着て大人しくソファに座ってくれている。


食事はほとんど冷凍食品。
それでもご飯のクオリティーはなかなかなのだ。

お腹空いてるらしく、美味しそうに食べてはくれている。

「悠里さん、来週はちゃんと着替えをして美味しいもの食べに行こうね。今週はほら、ケガ人だし、自宅安静だから仕方がないよね。付き合ってくれてありがとう。」

視線が手を見る。
痣の残る手。どす黒さが痛々しく見えるけど、腫れが思ったより早く引いて痛みもだいぶんいい。
試しに動かしてみたけど、もしかしたら仕事にも支障はないかも。

ため息をつかれた。

「太陽君、良かったね。見た目ほどひどくなくて。」

「うん、ありがとう。おかげ様です。」

すっかりスッピンでいる悠里さん。
あんまり変わらない。

「ねえ、悠里さんはひよりさんとお互いのおうちに泊まりに行ったり、旅行したりした?」

「お互いに数回は泊まりに行ったり来たりしたよ。何で?」

「ひよりさんって・・・・・・・・すごくメイクに・・・力を入れてる?」

なんだかどう言っても上手く言えない。
化粧が濃い?時間かけてる?
スッピンが別人みたいだと思ったとは言えなくて。
本当はとても怖かったとも言えない。

「まあ、そうかも。化粧落としたら少し顔が変わるタイプかも。」

思ったより悠里さんが正直に言ってくれた。

「ねえ、スッピン見たの?もしかと思うけど、コウシが送ってきた?」

「うん、告白したっていうラブショットが送られてきて。2人のドアップだった。・・・・一瞬、誰かと思った。」

「・・・・やっぱりコウシの馬鹿。ひよりは知ってるのかしら?一応言わないでね。」

「言ってないよ、それに悪いかなと思ってすぐ消したし。ずっと前のことだし。」

「そう。」

「悠里さんは変わらない。」

「だって元々地味だから。化粧しても地味だから。」

「地味って・・・・そんなことないよ。きれいだよ。しなくていいくらい。素顔がいい、少し大人ぶったところがなくなって可愛くなるし。」

そう言うと赤くなったみたいで。

「年上ってことを忘れるね。」



「どうしたの?今度は何?」

そうやって考える様に下を向くのは。今度は何を思ったんだろう?

「太陽君、皆『太陽君』って呼ぶ?」

「皆といえば、そうかな。上の名前でも呼ばれるけど、たいていが下の名前かも。」

「あだ名とかカタカナは?」

「カタカナってなに?『タイヨー』?」

「違う、もっと違うあだ名とかないのかなって。」

「ない。名前の単語は普通だけど、名前としては珍しいからあまり変わった呼び方はされない。」

「そう。」

「何が気になるの?」

「ううん、ほら、コウシのこともあったから、ちゃんと聞いておこうと思っただけ。」

「そう。」

そんな全然違うんじゃない?
とってつけたような理由だよね。
まあ、いいや。

「ねえ、わざと地味にしてるんだよね。」

「え・・・・。」

「だって仕事の時の服はシンプルだよね。デートの時の方が華やか。メイクもちゃんとしてるし。だからわざと地味にしてるのかなって思ってた。」

「・・・・。」

「別にいい。今のままでいい。いきなり変わったら目立っちゃうから。目立たないようにじっとしてて。」

ぼんやりと見上げられる。
本当に年上には見えない。

無防備な感じがいい。

コウシにイライラしてた人とは別人だ。
何でだろう。本当はあの頃すごく嫌々付き合ってた?

「ねえ、最初の頃、本当は週末がつぶれるのが嫌だった?」

「まあ・・・・。でもひよりのためだと思ってたから。」

「それなのにコウシがどうしようもなくてイライラしてた?」

「だって、ひよりががっかりしたら可哀想だから。約束忘れたり、平気で遅刻してきたり。でもひよりは大人だった。全然怒らないかった。私だけがやきもきしてイライラして呆れて。嫌な女に見えてたでしょう?」

「ううん、ひよりさんのために我慢してるって分かってたから。」

「だって太陽君だって、コウシは本当はしっかり者でいい奴で頼りになるなんて、今でもちょっと信じられない事をかばう様に言ってたし。私だけが本当に心が狭かった。」

「僕は慣れてたから。ひよりさんもそんなちょっと緩い所が良かったんじゃない?」

コウシは正直。ひよりさんも正直。
だからあんまりすれ違わない。


「ね、終わり。」

「何?」

「友達の事を考えるのは終わり。」







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