出会い~静かに月を愛したい人のこと~

羽月☆

文字の大きさ
上 下
7 / 12

7 貴乃 ~しみじみと特別な好きと大好きな同期の存在に感謝する夜~

しおりを挟む
無理に日程を決めて華乃を連れ出そうと思ったのに、小室君も一緒に付き合ってくれることになったらしい。

すぐに返事が来た。もしかして一緒に会っていたんだろうか?
私の妹に会いたいと小室君に正直に言ったのだろうか?

『ねえ、いろいろありがとう。華乃はウキウキしてるって気分も表に出すタイプじゃないから、あんまり乗り気は見せなくて。でも絶対楽しんでもらいたいって思ってる。ちゃんと話をしてあげてね。小室君には私の妹って教えたの?』

『いや、梶原さんの知り合いってだけしか教えてない。』

『じゃあ、内緒のままにするの?』

『そうだね。驚くよね、そっくりの妹。』

『そうだね。ちょっと驚く顔が見たいかも。』

『俺も。』

宮藤君も驚くと思うけどね、なんて思ったりして。

『じゃあ、内緒で。』

『了解。』

『小室君は知ってるんだよね、宮藤君が再会を望んだって事。』

『うん、それは言ってある。』

『じゃあ、私がそのことで小室君に連絡しても変じゃないよね。』

『全然、どうぞ。裏の打ち合わせでも何でも。』

やっぱりバレたらしい。


『うん、頼んでおく。』

そう思って何だかドキドキして、画面を開いたまま止まる。

ちょっと、あとでいい。

いろいろやる事の後回しにしていて、もう遅くなる・・・・・って思ってやっとメッセージを送ることが出来た。
ドキドキして打ち込んでも、ぽちっと押すだけで相手に行くんだから、なんだか思い切りがいいのか何なのか。

『こんばんわ。遅くにごめんね。土曜日の予定、付き合ってくれてありがとう。』

お礼を言うのは私じゃない気もするけど、それは表向きだし。
裏ではものすごくうれしいから。

その後は一気に送った。

『ちょっと内気なタイプなの。すごくいい子だから、相手が同僚でいい人だって知ってる宮藤君だったらうれしいの。』

『出来たら、協力して欲しい。』

そこまで送って反応を待つ。
読んでくれてるのは分かってる。

『宮藤はいい奴だと僕も思ってる。応援するよ。いい具合に話が出来るようだったら邪魔しないようにする。すごく楽しみだし。』

『うん、ありがとう。仕事が終わる時間が少し遅いの。週末が休みの日もあんまりない仕事だから。』

『大丈夫だよ。日曜日ものんびり過ごす予定しかないし。全然平気。』

『でも宮藤があのランチタイムの時にそんな事を相談してたなんて、何だか意外だったな。』

『もしかして見かけたの?』

『うん、偶然。』

『じゃあ、声かけてくれても良かったのに。あそこで食べる時はたいてい一人だから、二回くらい宮藤君とは一緒になったんだ。今度見かけたら声かけてね。』

文字だけだとどんなトーンで読んでいいのか分からない。
自分で勝手に楽しい声にしてるんだけど、大丈夫かな。
私の文章は元気よく読んでもらってると思う。
それに一緒にランチしたいと誘った文章になったけど、変じゃないよね?

もう、可能な限りあそこでランチにしよう。
でもランチはいつもどうしてるんだろう?

『私は外で空いた時間に取ることが多いけど、小室君はどうしてるの?』

『たいてい社食だよ。そろそろ飽きたから、外に行くことにしようかな。見かけたら声かけるよ。』

『是非是非。』

もううれしい。文字だけで伝わってるかな?
伝わり過ぎても恥ずかしいけど。

『外回りも楽しんでるみたいだね。』

『うん、まだまだだし、今のところはあんまり苦痛じゃないかな。』

『良かったね。』

『うん、ありがとう。』

名残惜しいけどそろそろ私が終わりにしないと困ってるかな?

『ねえ、もし必要だったら前日に相談するかも。また連絡していい?』

『いいよ。作戦会議だよね。』

『うん、傾向と対策。じゃあ、遅くまでありがとう。また連絡します。おやすみなさい。』

『うん、おやすみ。』



あ~、今すごく、感謝してる。
華乃の存在と宮藤君の優しさに。
宮藤君と仲良くなれてよかった~、しみじみ。

でも多香子さんだけのけ者みたいだからちょっとだけ報告しておこう。

『こんばんは。ちょっといろいろと個々人的事情により明かせませんが、二週後にちょっとだけ小室君と話が出来るかも。』

『報告は二週間後。少しでもうれしい報告が出来たらいいなあ。』

『よくわからないだろうけど、詳しくはその時に。お休み。』


『確かに分からない。でもうまくいくといいって思ってるからね。報告待ってます。』

『お休み。』


多香子さんもいい人。本当にいい会社だなあ。
もちろん多香子さんじゃない特別な存在あってこその・・・・まあ、それでもいいよね。


とりあえず仕事を頑張ろう!!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ

曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。 婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。 美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。 そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……? ――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...