出会い~静かに月を愛したい人のこと~

羽月☆

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5 華乃 ~誘われた土曜日に会うことになる人達~

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だから嫌なんだってば・・・・。
分かってるはずなのに、なんで仲のいい人に会わせたいって思うんだろう。

ふ~。

それに好きな人がいるって言ってた。
片想い、研修の頃から・・・・。
春、四月の頃、そんな思いで研修してたなんて、ちょっと羨ましい。

どんな人なのか、そっちは教えてもらえなかった。

よっぽど難しいと思ってるんだろう。
そうじゃなかったらもっと自分で近寄りそうだし。
大人しい人なのかもしれない、今までのタイプとは違うのかもしれない。

どうしたの?って思っちゃう。

写真の画面で見た人があの時の人だか、はっきり思い出せない。
写真も小さかったし、もうあれから随分経って、忘れちゃったし。

でも、私からそんな姉の個人的な話を聞き出そうとしたなんて。
変じゃない?
絶対教えないし。
だって私は知らない人だし、名刺を渡されても、教えたりはしない。

全く聞いてなかったから、ガッカリしてその場がシーンとなって。

よかった、断って。
でも、当然でしょう。

下に降りて行った。

「華乃、やっぱり全然大人しく過ごしてるみたいじゃない。たまには遅くなっていいって。ねえ、飲みにいこう。大人になってから飲みに行くのなんて初めてじゃない。自分達のお金で飲みに行こう。連絡するね。」

さっきはあんなに私の決定権を尊重してくれてたのに、なんでそうなったの?

「でも華乃は朝がゆっくりでいいかわりに、夜が私よりは遅いんだよね。」

「うん、たまに。」

「何時ごろになるの?」

「次の日休みの人が19時まではお店にいる当番。お客様の予約が入ってたらもう少し遅いかも。でも、それも個人的に調整し合ってる。」

「じゃあ、日にち決めた方がいいね。月末と月始め以外がいいみたいだから・・・・。」

そういって土曜日の夜に決められた。
今月の週末休みはあと一つ、日曜日。その日の前日夜に決定された。
遅くなったら泊ってもいいと言われた。

携帯から顔をあげた貴乃。早速連絡を取ったみたい。

「いいって。じゃあその日仮予定。時間は華乃に合わせるから、はっきり分かったら連絡してね。・・・・ああっ」

「何?」

「ううん、あとで。」

俯いて携帯をいじってる貴乃。
なんだか耳が赤いし、何?


夏休みの話をした。
私はどうなるか分からない。
貴乃は決まってるみたい。
一週間の連休になるって言ってる。
お父さんもお母さんも、自由にとれる。

「ねえ、ふたりで旅行して来たら?華乃が留守番してるし、せっかく私たちがちょっと大人になって自由になって、もう安心してくれるよね?」

貴乃がそう言う。

「そうね。じゃあ、お父さんとどこかに行こうかなあ。華乃、留守番頼んでいいの?」

「うん、もちろん。いつでもいいよ。」

今のところ不安なことはない。
貴乃も大丈夫そう、私も何とかなりそう。
喜んで二人を見送れる。


夕方になって、貴乃に誘われて、駅まで送った。
ついでにとお母さんに買い物メモも渡された。

駅まで歩きながら。

「ねえ、華乃、飲みに行くの四人になりそう。ちょっと事情があって、もう一人男の人がくるみたい。協力してくれる?」

照れるような顔で、そう言われたら、どういうことだか分かった。
写真の人が貴乃のために誘ってくれたんだろう。
その人がいいよって言ってくれたんだろう。

「分かった。時間はお願いできそうだったら、他の日と変わってもらって早めに終わるようにお願いしてみる。」

「うん、そこはあんまり、大丈夫。私たちも休みだし。」


「どんな人なの?」


「分からない。あんまり・・・・・自分のことは話をしてないかも。大分慣れて話をするけど、だいたいは私たちが振った話題に答えるくらい。雰囲気がいい人なの。誰とも女子とは話をしてないと思ってたのに、他の子が告白して、振られたみたい。よく知らない子だからって。」

「あああ・・・・、可哀想。」

「そう、だから、一番仲良しだって自信はあっても、なかなかね。宮藤君が誘ってくれたみたい。ちょっと驚く顔が見たいなあ。双子って宮藤君にも教えてないから。妹がいるとしか教えてない。当日まで内緒にしよう。」

楽しそうに言う。クドウ君、そんな名前だったかな?

なんだか楽しそうな貴乃の気持ちが私にも伝染してきた・・・かも。
そんなに楽しみにしてるなら一回くらいは協力してもいい。
そう思った。





仕事も楽しい。
最近ネイル希望の人が増えた。 
フェイシャルケアの最中に時短のために、ハンドケアとネイルを希望する人もいる。
ネイルケアは大好きで、実際に爪に色を乗せていくのは私が一番やっている。
京都の商品で爪に優しいネイルの商品は発色がちょっと違う。
ビビッドな発色はないけど、肌や爪に優しく、日本人の肌に馴染む日本の色をベースにしている。
最近古典的パターンを試したいと思ってる。
浴衣に合わせてもいい感じになるような和柄パターン。 
イベント用ネイルも学校で一通りやっていた。せっかくだから着物の柄の見本のような本、江戸の画家が描く和服の柄、千代紙など、考えて資料を集めようと思った。
ちょっとご機嫌になる楽しい課題をもらった感じ。 
空いた時間に爪見本に塗ってみた。

「ねえ、なんかいいことあった?」

「最近ネイルのお客様にリピートしていただいてて、すごくうれしいです。せっかくなので和柄模様に挑戦中です。浴衣に似合うと思いませんか?世代が上の方も多いし、無地の部分を増やせば普通のOLさんでもいいかなって思って。」

「うん、それは楽しそうだし、リピーターさんはきっと華乃ちゃんのお陰じゃない?」

「ありがとうございます。出来るだけずっと通ってもらえたらうれしいです。」

「そうね。でもそれ以外にご機嫌の理由はないの?」

「あ、この間姉が綺麗になったねって褒めてくれました。あと、夕方の居残りを代わってもらってありがとうございます。」

「二人で会うの?」

「いえ、姉の好きな人も来るらしいです。すごく興味あります。それとその友達です。二人とも姉の会社の人です。」

「なんだか双子なのに姉っていうと。年上の人を想像しちゃう。」

この間年を聞かれて双子だと教えた。
別に隠すことでもないけどあんまり言わない。
そして、やっぱり驚かれた。

「そうです。姉も私のことを妹って言ってるみたいです。当日まで双子なのは内緒です。」

「似てるけど、違うって、不思議な感覚。間違わない自信はあるけど、同じ格好で真顔でならどう?」

「間違え・・・ると思います。」

「ほくろとか、目立つ印がないんです。両親だけは騙せたことがないです。」

「そうなんだ。コツとか聞いてないの?」

「なんとなく雰囲気って言われます。今は髪の毛の色が違います。私は黒いままですから。」

「ああ、なんだか会いたいなあ。今度モニターサービスでもして、来てもらう?興味あるかな?」

「もちろんです。」

「それはそれで、楽しくしてるときっと華乃ちゃんにもいいことあるからね。その時は教えてね。」

そう言われて飲み会の最初の目的を思い出したけど。
何だか今更になった。
どうであっても楽しもう。

「そうだと嬉しいです。」


居残り番をしてても滅多に連絡はない。
急なキャンセルや問い合わせはたいていメールか決まったフォームで来る。
サロンの掃除をして、物品の補充をしたり、整頓をして、日報をしめてお終いにする。


そんな静かだけど落ち着いた日々がすごくうれしいと思ってる。
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