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21 気になるのはデザートと残された同期の一人。
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は~、やっと美味しいものが食べられた!
週末、少し遠出して人混みをぬうように歩いた。
ランチが終ったような時間、ティータイムにはまだ早い、そんな微妙な時間にお気に入りのレストランに入った。
お手軽なセットメニューを頼んで、お酒も頼む。
一人で食事することにもすっかり慣れた。
自由、万歳。
食べたいものを、食べたい時に。
同じような人もちらほらと見られる。
誰もが寂しいと言うわけじゃない。
本を読んだり、携帯を見たり、時間を有効に使うことが少し上手になってる人達、その中の一人だから。
すっかり買い物を楽しみ、ご機嫌にデザートまで買って戻ってきたのに。
何してるのよ!
改札からよく見えるカフェ、よく見える席に二人がいた。
こっちがすぐ分かったように、向こうでも一人がホッとして、一人が申し訳無さそうな顔で。
お互い気がついたことは隠せない。
改札から出て、立ち止まった。
ご機嫌に手を振る林、ただの偶然とか言う気?
そういえばさっき浩美から何してるのか、何時頃帰るか聞くようなメッセージが来た。もし部屋にいるって言ったら、二人で訪ねて来たの?
ホントに何してるのよ!
ひとりづつの攻撃は止めて二人一緒に?
さっさとコーヒーカップを持って立ち上がったのは、待ちくたびれただろう林の方だった。
どのくらい待ったんだろう?
後から佐々木君がついてくるのも見えていた。
「二人で仲良くコーヒーね。」
「そうなんだよ。まあ、お節介だとは思うんだけど、相棒が本当にうっとうしい、そんな外野のつぶやきが重なったから、ラストチャンスと思って。そっちの相棒も影に日向に働いてます。連絡来ただろう?」
もしかしてうっとうしいって私も思われてたって事?
浩美もそう思って、つぶやいてたって事?
いつからそんな演技するようになった?
全然そんな態度見せてなかったじゃない。
悔しいから聞かない。
林の方に協力したのは間違いないから。
微妙な距離の三角を作る三人。
カフェの前で通路の端で、迷惑じゃないですか?
「気になるんだろう。シラッとしてる振りしてるけど、ちゃんと誠意を見せないと、本当に評判落とすぞ。」
とっくに落ちてるんでしょうが。
「それは普通だろう、思いやりとか、優しさとかじゃなくても、普通の反応だよ。聞き捨てになんてするなよ。佐々木は、ちゃんと謝って、改めて伝えたんだろう?」
本当に世話好きだ。
さっきから一言もない本人。
『聞き捨て』って・・・・・忘れるって言ったのは返事になってないの?
ただ、さすがにしゃべり過ぎたと思ったのか、佐々木君の背中をバンッと音がするほど叩いてさっさと改札に向かった林。
呆然として見送る二人。
振り返りもせず、本当にそのまま・・・・いなくなった。
手にはドライアイスで適温を保っているデザートがあって。
部屋で食べるつもりだったのに。
それも気になるけど、一番はやっぱり目の前の人と、この状況。
ため息をついて、部屋に誘った。
「デザート買って来たの。冷蔵庫に入れたいから、部屋に来て。どうせ前にも来てるし遠慮しないで、仕方ないから。」
冷たく聞こえるだろう自分の言葉。
それは分かってる。でもどうしようもない。
そう言って一人歩き出した。
少し後ろをついてくるのは分かってる。
これもおなじみのパターンになりつつある。
駅を出て、歩道を並んで歩く。
「どのくらいあそこにいたの?」
「二時間くらい。」
「夜まで帰らなかったらどうするつもりだったの?」
「林君が待つって言ってくれたから、一緒に待つつもりだった。」
「それはお店も迷惑でしょう?」
「何度かおかわりとトイレを繰り返せばいいかなって。」
「無駄な週末の過ごし方ね。」
「そうは思ってないから。むしろ今の状態だったら有意義だよ。林君がどう思うかはわからないけど。」
「なんであいつもそう暇なんだろう?まったく。」
「これが最後だって言われたから。」
そう願いたい・・・・・。
でも、私より外野二人がそう思ったって事だろう。
また、ため息が出た。
タクシーで来たこの間、そういえば一人で部屋から出て行って、駅まで間違わずにちゃんと行けたのだろうか?
まったくそのことについては思いいたらなかった。
「この間、ちゃんと駅までの道、分かった?」
「うん、携帯で調べたから。分かりやすいし、歩けるくらい近くだったから助かった。」
それならいい。
「タクシー代、かかったよね。」
「何度も回り道して送ってくれたじゃない。それよりは安かったかも。」
「ありがとう。せっかくのチャンスを酔いつぶすなんて、情けない事ばかりだ。」
「そこも反省してるの?」
「うん。明らかにおかしかったって言われた。そんなに飲んだ気はしなかったんだけど。」
「結構、飲んでたよ。」
最初から飲み放題コースにすればよかったって思ったくらいに。
「緊張してたから・・・・、今もしてるけど。」
「彼女いると思ってた、そんな話したよね。」
「してないと思う。」
そうだった?
「もしかして、すごく不器用とか?」
「・・・・慣れてないと言ってもらいたいけど。」
その違いにこだわりたい理由は分からない。
どっちもどっち。
「そんなに慣れてるの?」
「噂の種くらいには。」
「そう。」
今本気にしたな。
「冗談。」
一応言う。
「そう。」
ただ反応は変わらなかった。
何なんだ、もっと真剣に聞け!!そう思った。
週末、少し遠出して人混みをぬうように歩いた。
ランチが終ったような時間、ティータイムにはまだ早い、そんな微妙な時間にお気に入りのレストランに入った。
お手軽なセットメニューを頼んで、お酒も頼む。
一人で食事することにもすっかり慣れた。
自由、万歳。
食べたいものを、食べたい時に。
同じような人もちらほらと見られる。
誰もが寂しいと言うわけじゃない。
本を読んだり、携帯を見たり、時間を有効に使うことが少し上手になってる人達、その中の一人だから。
すっかり買い物を楽しみ、ご機嫌にデザートまで買って戻ってきたのに。
何してるのよ!
改札からよく見えるカフェ、よく見える席に二人がいた。
こっちがすぐ分かったように、向こうでも一人がホッとして、一人が申し訳無さそうな顔で。
お互い気がついたことは隠せない。
改札から出て、立ち止まった。
ご機嫌に手を振る林、ただの偶然とか言う気?
そういえばさっき浩美から何してるのか、何時頃帰るか聞くようなメッセージが来た。もし部屋にいるって言ったら、二人で訪ねて来たの?
ホントに何してるのよ!
ひとりづつの攻撃は止めて二人一緒に?
さっさとコーヒーカップを持って立ち上がったのは、待ちくたびれただろう林の方だった。
どのくらい待ったんだろう?
後から佐々木君がついてくるのも見えていた。
「二人で仲良くコーヒーね。」
「そうなんだよ。まあ、お節介だとは思うんだけど、相棒が本当にうっとうしい、そんな外野のつぶやきが重なったから、ラストチャンスと思って。そっちの相棒も影に日向に働いてます。連絡来ただろう?」
もしかしてうっとうしいって私も思われてたって事?
浩美もそう思って、つぶやいてたって事?
いつからそんな演技するようになった?
全然そんな態度見せてなかったじゃない。
悔しいから聞かない。
林の方に協力したのは間違いないから。
微妙な距離の三角を作る三人。
カフェの前で通路の端で、迷惑じゃないですか?
「気になるんだろう。シラッとしてる振りしてるけど、ちゃんと誠意を見せないと、本当に評判落とすぞ。」
とっくに落ちてるんでしょうが。
「それは普通だろう、思いやりとか、優しさとかじゃなくても、普通の反応だよ。聞き捨てになんてするなよ。佐々木は、ちゃんと謝って、改めて伝えたんだろう?」
本当に世話好きだ。
さっきから一言もない本人。
『聞き捨て』って・・・・・忘れるって言ったのは返事になってないの?
ただ、さすがにしゃべり過ぎたと思ったのか、佐々木君の背中をバンッと音がするほど叩いてさっさと改札に向かった林。
呆然として見送る二人。
振り返りもせず、本当にそのまま・・・・いなくなった。
手にはドライアイスで適温を保っているデザートがあって。
部屋で食べるつもりだったのに。
それも気になるけど、一番はやっぱり目の前の人と、この状況。
ため息をついて、部屋に誘った。
「デザート買って来たの。冷蔵庫に入れたいから、部屋に来て。どうせ前にも来てるし遠慮しないで、仕方ないから。」
冷たく聞こえるだろう自分の言葉。
それは分かってる。でもどうしようもない。
そう言って一人歩き出した。
少し後ろをついてくるのは分かってる。
これもおなじみのパターンになりつつある。
駅を出て、歩道を並んで歩く。
「どのくらいあそこにいたの?」
「二時間くらい。」
「夜まで帰らなかったらどうするつもりだったの?」
「林君が待つって言ってくれたから、一緒に待つつもりだった。」
「それはお店も迷惑でしょう?」
「何度かおかわりとトイレを繰り返せばいいかなって。」
「無駄な週末の過ごし方ね。」
「そうは思ってないから。むしろ今の状態だったら有意義だよ。林君がどう思うかはわからないけど。」
「なんであいつもそう暇なんだろう?まったく。」
「これが最後だって言われたから。」
そう願いたい・・・・・。
でも、私より外野二人がそう思ったって事だろう。
また、ため息が出た。
タクシーで来たこの間、そういえば一人で部屋から出て行って、駅まで間違わずにちゃんと行けたのだろうか?
まったくそのことについては思いいたらなかった。
「この間、ちゃんと駅までの道、分かった?」
「うん、携帯で調べたから。分かりやすいし、歩けるくらい近くだったから助かった。」
それならいい。
「タクシー代、かかったよね。」
「何度も回り道して送ってくれたじゃない。それよりは安かったかも。」
「ありがとう。せっかくのチャンスを酔いつぶすなんて、情けない事ばかりだ。」
「そこも反省してるの?」
「うん。明らかにおかしかったって言われた。そんなに飲んだ気はしなかったんだけど。」
「結構、飲んでたよ。」
最初から飲み放題コースにすればよかったって思ったくらいに。
「緊張してたから・・・・、今もしてるけど。」
「彼女いると思ってた、そんな話したよね。」
「してないと思う。」
そうだった?
「もしかして、すごく不器用とか?」
「・・・・慣れてないと言ってもらいたいけど。」
その違いにこだわりたい理由は分からない。
どっちもどっち。
「そんなに慣れてるの?」
「噂の種くらいには。」
「そう。」
今本気にしたな。
「冗談。」
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ただ反応は変わらなかった。
何なんだ、もっと真剣に聞け!!そう思った。
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