7 / 7
7 予言の女神に背中を押されるように。
しおりを挟む
終わりまで見て、肩から力が抜けた。
何度も騙され、騙される人が入れ替わるように作られていたのに、やっぱりそうだった。
良かった、そのどちらでもなかった。
エンドロールが流れて席を立つ人はいる。
微かに後ろの方から光が入る。
それでもじっと正面を向いて、動かないまま。
端の席で中央の人が立たなければ、柿崎さんも足を組んだままだろう。
二人の手もそのままかもしれない。
いつまで?
楽しめたよね?二人で選んだ映画だよね?
やがて照明がついて明るくなった、一斉に人が立ちあがり背伸びしたり、ゴミを拾い、荷物を持ち、出口に向かおうとする動きが慌ただしくなる。
手をつないだまま立ち上がった。
開いても離されない手は握られたまま。
視線を合わせても特に変わりなく。
そのまま先導するように通路に出て人波に乗った。
「すごかったね。」
「面白かったです。もう途中いろいろと考えました。」
「すごい集中力だった?」
エスカレーターで後ろから囁くように言われた。
「当たり前です。久しぶりだし、楽しみました。」
「二時間ちょっとはやっぱり長いなあ。あれで面白くなかったら重なった体温が心地よくて眠ってたかも。少しもこっち見ないで、ずっとスクリーン見てたでしょう?」
「映画を見てたんです。」
隣に並んで小声で話しながら外に出る。
まだまだ明るい午後の時間。
「お茶する?」
「座りつかれてるんです、少し歩いてもいいですか?」
「いいよ。」
目的はない。次のお茶の場所を遠くに設定してしばらく歩く。
途中気になるものがあれば止まればいい。
人があちこちから歩いてくる。
腕を絡めるように触れ合わせて距離を縮めた。
「このまま歩いてたらいつの間にか僕の部屋についてたりして?どう思う?」
駅に向かってはいる。
方向としては駅、電車に乗ればあっという間。部屋でコーヒー。
「ご馳走してくれるなら、いいと思います。」
「よかった。是非ご馳走させて。」
少し早く歩き始めた二人。
目的地が決まればそんなものでしょう?
そして部屋でソファに座る。
キッチンに立つことなくそのまま落ち着いたように隣にいる柿崎さん。
さすがに『約束のコーヒーをお願いします。』とは言えない。
だって分かってる。
腰に当てられた手も、近寄った体も。
今欲しいのがコーヒーじゃないって分かってる。
「本当に映画に集中し過ぎだよ。」
「そんなふりしてただけです。」
恥ずかしいじゃない。両隣に人がいる、前にも後ろにも。
手を握られて太ももに挟まれた。
あの映画館の続きのように。
「時々手に力が入って、動くのが分かってた。」
「そんなにジッとはしてられないです。柿崎さんこそ力を入れて来るからです。」
視線を合わされて指輪を抜き取られた。
テーブルに置かれた指輪。
そんなに気になるんだろうか?
プレゼントじゃない、自分で買ったと言ったのに。あの時の指輪なのに。
「仕事中、そんな顔はなしね。ちゃんとプロっぽくしててね。」
「どんな顔をしてましたか?」
「今度鏡で見たらいいよ。時々する顔。そんな顔にはいつでも応えたいって言いたい。シャワ―使う?」
「歯磨きして来ていいですか?」
「コーヒーご馳走するのに?」
「そこは任せます。タイミングも、本当に必要かどうかも。」
「じゃあ、あとでご馳走する。」
立ち上がって昨日置いて言った荷物から歯磨きセットを出して歯磨きをした。
交代で洗面台を使い、ソファに戻った二人はそのまま違う部屋に行った。
本当に律儀にコーヒーをいれてくれた。
夕方を過ぎ暗くなった時間。
「ねえ、もしかしたら、担当変るかもしれないんだ。」
「そうなんですか?」
「うん、そうしたら詩央さんの会社に行くこともない。」
「そうですか。」
私ももう柿崎さんの会社に入ってるビルに行く予定はない。
不思議に重なった現象は本当に無くなるらしい。
「それでももういいかな?あの子にもバレたしね。」
絶対揶揄いそうな立夏ちゃん。
そのベクトルは私にも柿崎さんにも向きそう。
立夏ちゃんの娯楽は一つ減る。
それでもあちこちでいろいろ活躍してそうだからいいだろう。
タイミングが違ったら危うく頭が上がらないくらいに感謝しなきゃいけない所だった。
やっぱり本当のことを言いたい。
びっくりする顔も見たいし、『遅かった~。』とがっかりする顔も見たい。
そして時々会ってる事だけ教えた後、一度目の来訪の時に立夏ちゃんが席を立った。
多分どこかからのぞき込んでると思う。
普通に対応して、余計な話はしなかった。
それでも笑顔は他の人への対応よりは自然で、プロっぽくもなかったかも。
それが最後だった。
やっぱり柿崎さんが来ることはなくなった。
「ねえ、立夏ちゃん。柿崎さん、担当変ったって。もう来ないって。」
「そうなんですか?残念ですね。でも、会社の外で会えるんですよね。」
そう言われた。
あんまりしつこく聞かれることもなかった。
揶揄われることもなかった。
「ねえ、本当は、もっと早くに会ってたの。」
「何がですか?」
「柿崎さんに誘われたのは、あの時よりちょっとだけ前。立夏ちゃんが早めの夏を楽しみたいって連休を作ってラブラブ旅行に行った時あったでしょう?」
「夏前ですよね。」
「そう。あの時、一人の時に、早口で名刺を渡されて、お店で待ってるって、地図を置いて行かれたの。その日、初めて外で会ってて、だから立夏ちゃんが確かめるって言った時は、もう、何度か会ってたの。」
さすがに間が開いた。
大きな目が見開かれてる。
驚いてる。
その表情で満足。
「やっぱり私のお陰だったんですね。役に立って良かったです。まさか私がハッピーを満喫してた裏で、詩央さんがそんな事になってたなんて。もう自分の休暇にまでそんな意味があったなんて。私、すごいと思いませんか?」
どうしてそう思えるの?
そこは感動じゃなくて、もっと違う驚きはない?
ガッカリするか、悔しがると思ったのに。
「本当に柿崎さんが感謝してたよ。初めてのチャンスだって、外から一人なのに気がついて絶対言うって決めたらしいから。」
「ですよね~。もう、うれしいです。」
結局喜んではくれてると思う。
時々デートの報告をお互いにする。
楽しかったところ、美味しかったところ、情報を交換するように。
そして、また一つ、動きがあった。
私は立夏ちゃんより先に受付カウンターから退いた。
配属はそのまま、普通の内勤になった。
時々仕事は手伝ってたけど、今度からガッツリとデスクワークになった。
残業も増える、ランチは皆と楽しめる、トイレも自由。
おしゃべりもできる。
そして、仕事は少しずつお願いされることが増えて、新人が来る頃には独り立ちできるようになった。
結局するっと受付嬢を離れても、普通の会社員の仕事をしてる。
あの時あがくようにして、焦って勉強したものはそのまま、活かさないまま。
でも、決して無駄じゃない。
だってあのビルに通った日々も重なった時間の一部だし。
「よかった。なんだか安心。」
柿崎さんが一度だけそう言った。
柿崎さんが初めてで最後だって言ってるのに。
今、受付では立夏ちゃんが先輩になり、それでも楽しく働いてるんだろう。
時々社内で会うと話かけられる。
「詩央さん、変わりないですか?」
「ないよ。」
「そろそろ変わりあってもいいのに。」
「ないよ、何も。」
「もう、意外にのんびりなんですね。」
それは柿崎さんがって事よね。別に焦ってないよ。
まだまだ同期だってたくさん残ってる。
普通にそのまま残ってるから。
「ねえ、連休、旅行しよう。」
「どこに?」
「ちょっと遠く。」
「決めてるの?」
「うん、先方には伝えた。」
「何?どこ?」
「鈍い?」
「何?」
「明日買い物行こう。」
そう言って指をさすられた。
今日もソファにいる時にあっさりと外されたリング。
「ここにつけて。」
指を包まれて言われた。
目を開けた。
「いいよね?」
立夏ちゃん、なんで?やっぱり女神?予言の女神?
もしかして柿崎さんを遠隔コントロール出来てるの?
数日前にした会話、のんびりじゃなかったみたい!
『変わり』ありそう!!
後輩にうれしさを隠せない顔で報告してる自分が浮かんだ・・・・。
しばらくは隠すよ。
言わないよ。
だってまた自分のこと褒めるんでしょう?
おめでとうの前に。
『ほら、言ったじゃないですか。そろそろいいなって思ったんです。良かったです、もう安心しました。』くらい言いそう。
『おめでとうございます。詩央さん。』そう言って笑う立夏ちゃんの顔も浮かんだ。
内緒に出来る間はするよ。
会う時は手を隠して。
出来るだけそうするから。
きっと私と柿崎さんは安心して見送られて、次のターゲットに向かうんだろう。
それはそのまま女神の仕事みたいじゃない。
まさか受付業務以外にそんな特命を負っていたなんて。
やっぱり立夏ちゃん、凄いじゃない!
もしビルに入って受付嬢がいたとしたら、そこには元気な女神がいるかもしれません。
もしくはその隣の人はどうですか?
ほんの少し、約束より少し余裕をもって訪ねてもいいかもしれません。
何度も騙され、騙される人が入れ替わるように作られていたのに、やっぱりそうだった。
良かった、そのどちらでもなかった。
エンドロールが流れて席を立つ人はいる。
微かに後ろの方から光が入る。
それでもじっと正面を向いて、動かないまま。
端の席で中央の人が立たなければ、柿崎さんも足を組んだままだろう。
二人の手もそのままかもしれない。
いつまで?
楽しめたよね?二人で選んだ映画だよね?
やがて照明がついて明るくなった、一斉に人が立ちあがり背伸びしたり、ゴミを拾い、荷物を持ち、出口に向かおうとする動きが慌ただしくなる。
手をつないだまま立ち上がった。
開いても離されない手は握られたまま。
視線を合わせても特に変わりなく。
そのまま先導するように通路に出て人波に乗った。
「すごかったね。」
「面白かったです。もう途中いろいろと考えました。」
「すごい集中力だった?」
エスカレーターで後ろから囁くように言われた。
「当たり前です。久しぶりだし、楽しみました。」
「二時間ちょっとはやっぱり長いなあ。あれで面白くなかったら重なった体温が心地よくて眠ってたかも。少しもこっち見ないで、ずっとスクリーン見てたでしょう?」
「映画を見てたんです。」
隣に並んで小声で話しながら外に出る。
まだまだ明るい午後の時間。
「お茶する?」
「座りつかれてるんです、少し歩いてもいいですか?」
「いいよ。」
目的はない。次のお茶の場所を遠くに設定してしばらく歩く。
途中気になるものがあれば止まればいい。
人があちこちから歩いてくる。
腕を絡めるように触れ合わせて距離を縮めた。
「このまま歩いてたらいつの間にか僕の部屋についてたりして?どう思う?」
駅に向かってはいる。
方向としては駅、電車に乗ればあっという間。部屋でコーヒー。
「ご馳走してくれるなら、いいと思います。」
「よかった。是非ご馳走させて。」
少し早く歩き始めた二人。
目的地が決まればそんなものでしょう?
そして部屋でソファに座る。
キッチンに立つことなくそのまま落ち着いたように隣にいる柿崎さん。
さすがに『約束のコーヒーをお願いします。』とは言えない。
だって分かってる。
腰に当てられた手も、近寄った体も。
今欲しいのがコーヒーじゃないって分かってる。
「本当に映画に集中し過ぎだよ。」
「そんなふりしてただけです。」
恥ずかしいじゃない。両隣に人がいる、前にも後ろにも。
手を握られて太ももに挟まれた。
あの映画館の続きのように。
「時々手に力が入って、動くのが分かってた。」
「そんなにジッとはしてられないです。柿崎さんこそ力を入れて来るからです。」
視線を合わされて指輪を抜き取られた。
テーブルに置かれた指輪。
そんなに気になるんだろうか?
プレゼントじゃない、自分で買ったと言ったのに。あの時の指輪なのに。
「仕事中、そんな顔はなしね。ちゃんとプロっぽくしててね。」
「どんな顔をしてましたか?」
「今度鏡で見たらいいよ。時々する顔。そんな顔にはいつでも応えたいって言いたい。シャワ―使う?」
「歯磨きして来ていいですか?」
「コーヒーご馳走するのに?」
「そこは任せます。タイミングも、本当に必要かどうかも。」
「じゃあ、あとでご馳走する。」
立ち上がって昨日置いて言った荷物から歯磨きセットを出して歯磨きをした。
交代で洗面台を使い、ソファに戻った二人はそのまま違う部屋に行った。
本当に律儀にコーヒーをいれてくれた。
夕方を過ぎ暗くなった時間。
「ねえ、もしかしたら、担当変るかもしれないんだ。」
「そうなんですか?」
「うん、そうしたら詩央さんの会社に行くこともない。」
「そうですか。」
私ももう柿崎さんの会社に入ってるビルに行く予定はない。
不思議に重なった現象は本当に無くなるらしい。
「それでももういいかな?あの子にもバレたしね。」
絶対揶揄いそうな立夏ちゃん。
そのベクトルは私にも柿崎さんにも向きそう。
立夏ちゃんの娯楽は一つ減る。
それでもあちこちでいろいろ活躍してそうだからいいだろう。
タイミングが違ったら危うく頭が上がらないくらいに感謝しなきゃいけない所だった。
やっぱり本当のことを言いたい。
びっくりする顔も見たいし、『遅かった~。』とがっかりする顔も見たい。
そして時々会ってる事だけ教えた後、一度目の来訪の時に立夏ちゃんが席を立った。
多分どこかからのぞき込んでると思う。
普通に対応して、余計な話はしなかった。
それでも笑顔は他の人への対応よりは自然で、プロっぽくもなかったかも。
それが最後だった。
やっぱり柿崎さんが来ることはなくなった。
「ねえ、立夏ちゃん。柿崎さん、担当変ったって。もう来ないって。」
「そうなんですか?残念ですね。でも、会社の外で会えるんですよね。」
そう言われた。
あんまりしつこく聞かれることもなかった。
揶揄われることもなかった。
「ねえ、本当は、もっと早くに会ってたの。」
「何がですか?」
「柿崎さんに誘われたのは、あの時よりちょっとだけ前。立夏ちゃんが早めの夏を楽しみたいって連休を作ってラブラブ旅行に行った時あったでしょう?」
「夏前ですよね。」
「そう。あの時、一人の時に、早口で名刺を渡されて、お店で待ってるって、地図を置いて行かれたの。その日、初めて外で会ってて、だから立夏ちゃんが確かめるって言った時は、もう、何度か会ってたの。」
さすがに間が開いた。
大きな目が見開かれてる。
驚いてる。
その表情で満足。
「やっぱり私のお陰だったんですね。役に立って良かったです。まさか私がハッピーを満喫してた裏で、詩央さんがそんな事になってたなんて。もう自分の休暇にまでそんな意味があったなんて。私、すごいと思いませんか?」
どうしてそう思えるの?
そこは感動じゃなくて、もっと違う驚きはない?
ガッカリするか、悔しがると思ったのに。
「本当に柿崎さんが感謝してたよ。初めてのチャンスだって、外から一人なのに気がついて絶対言うって決めたらしいから。」
「ですよね~。もう、うれしいです。」
結局喜んではくれてると思う。
時々デートの報告をお互いにする。
楽しかったところ、美味しかったところ、情報を交換するように。
そして、また一つ、動きがあった。
私は立夏ちゃんより先に受付カウンターから退いた。
配属はそのまま、普通の内勤になった。
時々仕事は手伝ってたけど、今度からガッツリとデスクワークになった。
残業も増える、ランチは皆と楽しめる、トイレも自由。
おしゃべりもできる。
そして、仕事は少しずつお願いされることが増えて、新人が来る頃には独り立ちできるようになった。
結局するっと受付嬢を離れても、普通の会社員の仕事をしてる。
あの時あがくようにして、焦って勉強したものはそのまま、活かさないまま。
でも、決して無駄じゃない。
だってあのビルに通った日々も重なった時間の一部だし。
「よかった。なんだか安心。」
柿崎さんが一度だけそう言った。
柿崎さんが初めてで最後だって言ってるのに。
今、受付では立夏ちゃんが先輩になり、それでも楽しく働いてるんだろう。
時々社内で会うと話かけられる。
「詩央さん、変わりないですか?」
「ないよ。」
「そろそろ変わりあってもいいのに。」
「ないよ、何も。」
「もう、意外にのんびりなんですね。」
それは柿崎さんがって事よね。別に焦ってないよ。
まだまだ同期だってたくさん残ってる。
普通にそのまま残ってるから。
「ねえ、連休、旅行しよう。」
「どこに?」
「ちょっと遠く。」
「決めてるの?」
「うん、先方には伝えた。」
「何?どこ?」
「鈍い?」
「何?」
「明日買い物行こう。」
そう言って指をさすられた。
今日もソファにいる時にあっさりと外されたリング。
「ここにつけて。」
指を包まれて言われた。
目を開けた。
「いいよね?」
立夏ちゃん、なんで?やっぱり女神?予言の女神?
もしかして柿崎さんを遠隔コントロール出来てるの?
数日前にした会話、のんびりじゃなかったみたい!
『変わり』ありそう!!
後輩にうれしさを隠せない顔で報告してる自分が浮かんだ・・・・。
しばらくは隠すよ。
言わないよ。
だってまた自分のこと褒めるんでしょう?
おめでとうの前に。
『ほら、言ったじゃないですか。そろそろいいなって思ったんです。良かったです、もう安心しました。』くらい言いそう。
『おめでとうございます。詩央さん。』そう言って笑う立夏ちゃんの顔も浮かんだ。
内緒に出来る間はするよ。
会う時は手を隠して。
出来るだけそうするから。
きっと私と柿崎さんは安心して見送られて、次のターゲットに向かうんだろう。
それはそのまま女神の仕事みたいじゃない。
まさか受付業務以外にそんな特命を負っていたなんて。
やっぱり立夏ちゃん、凄いじゃない!
もしビルに入って受付嬢がいたとしたら、そこには元気な女神がいるかもしれません。
もしくはその隣の人はどうですか?
ほんの少し、約束より少し余裕をもって訪ねてもいいかもしれません。
0
お気に入りに追加
40
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
打たれ強くて逞しい、こんな女に誰がしたっ!!
羽月☆
恋愛
春に見た幻想は爽やかな清涼感あふれる風に吹かれてた。
そして夏の始まるころ、現実はそんなものじゃなかった。
三年目の役割が後輩指導で、三人の同期で三人の新人を担当した。
当然一人が一人を受け持つ、その割り振りは上の采配で。
まさかトンデモナイ貧乏くじを引いたなんて。
今日も隣でうなだれてるのが本当に貧乏くじだったのだから。
何とか成長を促し、気を抜かないように、時々凍る表情をゆっくりほぐし、褒める時はきちんと褒めて。
やっと横並びで巣立っていってくれました。
間に合ってよかった~。
呉香純(くれかずみ)の夏は余裕もなく終わった。
やっと来た秋に自分の隣に空いた横のスペースを有効利用しようと、そんな気になったのです。
先輩と後輩の成長した記録の話です。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
夫の書斎から渡されなかった恋文を見つけた話
束原ミヤコ
恋愛
フリージアはある日、夫であるエルバ公爵クライヴの書斎の机から、渡されなかった恋文を見つけた。
クライヴには想い人がいるという噂があった。
それは、隣国に嫁いだ姫サフィアである。
晩餐会で親し気に話す二人の様子を見たフリージアは、妻でいることが耐えられなくなり離縁してもらうことを決めるが――。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる