街中で偶然出会えたら、それは運命だと思います!

羽月☆

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4 反省と後悔 ~つくしのため息しかでない日々

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「つくしちゃん、元気ない?」

声をかけてくれたのは二つ隣の席にいる弥生さん。
休憩室での貴重な休憩タイム。
午後は二度だけど、午前中は一度だけとれる。


歓迎会のときに隣にいて、酔っ払って披露した数々の失敗エピソードに大笑いしてくれた貴重な人。他の人はかなり引き気味の視線だった。


今更一つくらい増えても何てことない。
いっそ笑い飛ばして欲しい。
本当に愚かな私を・・・・。



「弥生さん、土曜日、久々にやってしまいました。」
「何を?」

当然の質問です。

「久しぶりに突撃して玉砕しました。」

「まさか・・・・・。」

驚いた顔は一瞬だけ、すぐにうれしそうな顔になり興味を隠すことなく言った。

「聞きたい!」

私も実は言いたい。
ちょっとどうなのか第三者の意見をください。


「土曜日、偶然街中の人混みのなかで向こうから歩いてくる・・・ずっと好きだった人に気がついて・・・」

「街中・・・・。」
つぶやかれた。

「付き合ってくださいと言ったら・・・・。」
言った・・・・・いきなり?
またまた小さく驚きの小つぶやき。

「どこにだよ?って。」

あ・・・・・。
声にもならないらしい。口が空いてる弥生さん。呆れてる?
新鮮な話過ぎて笑い話にもならない今。
そう玉砕です。

「すごく冷たい声で、面倒そうに言われました。そのあと睨まれて・・・・・。」

「それで?」

「一応すみませんと言って、ダッシュで逃げました。」

「そう、せめてコーヒー飲みにお店に誘うとか、しなかったんだ。」

うっ。

「そんなデートのような誘いが出来るようだったら、とっくに会社で声かけてます。」

はぁ~。

「会社の人なの?」

そう聞かれて私はびっくりした。
しまった・・・・。
顔を上げられない。
でも言ったものはしょうがない。
顔をあげた。

「やっぱり嫌われてるんですよね。」

「どうだろう?あまりに急だったから・・・とか。」

弥生さんの優しさだろう。
だって目が合わない。

ミルクティーが甘く心にしみる。
あんな冷たい目をするなんて。思わなかった。
会社じゃ、そんなイメージはなかったから。
特別に優しく話をしてる場面を目撃してたわけじゃないけど。
だけど、アレはすごい目つきだったと思う。

やっぱり嫌われてる。
もしかして私の事を分かってて、その上で突撃に対して無礼なって思った?
あんな街中だったし。

さすがに弥生さんからもそれ以上の言葉もなく。
休憩を先に終えてブースの席に戻った。

お昼になっても社食には行けなくて。
一人で外にふらりと出る。

お昼は回線を半分にする。一時間の自由時間は確保できるのだ。

突撃・・・・何でしたんだろう。
何度も自問して、しあきた。答えも出ないし。

あのタイミング最悪かもしれない。

だって黙ってたら、一緒に飲みに行けるチャンスがあったかもしれないのに。
だってだって、金子さんが頑張ってくれたかもしれないのに。


金子さんだけなら普通なのに、友田さんが眼に入ると、過剰に反応して。
ここ数回はわざと観察アンド検証されてたらしいから。
そんなことが繰り返されるとさすがにバレる。

このあいだ休憩室でこっそり聞かれても返事もできなくて。
真っ赤になった自分を見れば丸分かり。
その検証結果は間違いありません。その通りです。




社交辞令とか口約束とか世の中にはたくさんあるはずなのに。
律儀なのかな。金子さん。
それとも部下想い。それとも・・・面白がってる?


「そう言えばあの事、今度飲みに行こうか?露木さんも誘うから。楽しみにしてて。さりげなく応援してる。彼女はいないと思うけど、もう一度確認してみるね。」

そこまで言われてもお願いしますなんて言えなくて。
でも最後に顔を見た瞬間、笑われた。
きっと縋る様な目になってたんだと思う。
ああ、諦めの悪い自分。
私の目は全力でお願いしますと、期待してますと言ってたかもしれない。

だから大人しくその機会を待てばよかった。

今更、もう会えない。

バレる。しつこいと思われる。アホと思われる。

後悔・・・・・。

そして金子さんが驚く、弥生さんも驚く。
シーンとなる飲み会。楽しくないよう。
でも、行きたいって心が叫んでる。

いっそ三人で飲んでるのを見てるだけでいい。

ずっと黙って聞いてます。どうぞ食べて飲んで、私の事は気にしないで・・・・。




でも、やっぱり無理なんだろうなあ。








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