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25 小さな願いをつぶやいた・・・夜のつもりの、朝
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立ち止まった私を呼ぶように手を引く。
パーカーを脱いでパジャマ上下の姿の七尾さん。
私も上着を脱いだ。
めくられた布団に入って一緒に横になる。
向かい合って顔を見つめると表情は結構わかる。
ふざけた表情は鳴りを潜めて、でも優しそうな表情のままなのは変わらない。
首に縋りついて抱きついた。
背中に回された手を感じながら、目を閉じていいのか考える。
少しも眠くないと思ったのに、あったかく心地よくて、うっとりとしながら眠れそうな気もする。
「リンちゃん。」
耳元で呼ばれた名前がしっとりと甘く聞こえる。
目を開けて顔を離す。
すぐ近くに顔が来て、また目を閉じた。
激しくなるキスに、荒い息使いに、手足が絡まるように動く。
めくられたTシャツの中に手を入れられて探られる。
手が胸を探りあてて声が出る。
「リン。」
名前を呼ばれながら耳元にキスされる。
「七尾さん。」
目を開けて七尾さんの服を捲る。
邪魔。
気が付いてくれてすっぽっと脱いでくれた。
私もそのまま捲られてベッドの下に落とされた。
裸の胸を上から眺められた。
どこまで光が届いているのか分からない。
くっつきたくて両手を伸ばす。七尾さんの胸が自分の体と重なる。
首からデコルテにキスをされると七尾さんの頭を引き付ける様に抱えてた。
初めて触れる頭には柔らかい髪があった。
しばらく手触りを楽しむ。
胸の丸みを撫でられて先端にキスをされると気持ち良くて背中が浮く。
その隙間に手を入れられてものすごい勢いで胸を責められる。
「七尾さん・・・。」
下半身が落ち着かなく揺れる。
顔が少しずつ上に上がってきて手は腰やお腹のあたりをさまよう。
私も七尾さんの腰に触れる。
七尾さんの手が下着の上をすべる。
そのままズボンを脱がされた。
目を開ける。
ニッコリ笑われた。
ちょっとだけ脱ぎやすいように腰をあげたから。
揶揄われたみたいに思えて。
じっと見上げた。
何?っていう風に首を倒された。
「七尾さん、脱いで。」
思ったよりお願い調に響いたかもしれない。
ズボンに軽く手をかけたら・・・・そんなつもりはなかったのに途中まで下着もついて来て。
結局全部脱いだ七尾んさん。
「リンちゃんは?」
結局腰をあげた。
薄く、小さく、軽いものが床に落とされた。
その後はお互いに必死で体を寄せた。
ずっとずっと体のどこかがつながってる。
不思議な感覚だけど、うれしくて、何度も確認した。
目を開けて、名前を呼んで。
そのたびに「リン」って呼ばれるのがうれしくて。
つながったまま、上から七尾さんを見下ろす。
大好き、すごく優しい人。
思ったよりずっと普通で、ずっと器用だった。
腰に当てられた手で体を揺すられる。
自分でも擦り付けるように動く。
快感に目を閉じそうになるけど見つめ合いたい。
七尾さんの手が私の胸に来る。
「リン、揺れる。」
そっと持ち上げられるように包まれる。
「七尾さん、だめ・・・・、腰がいい。」
手を動かして腰に当ててもらう。
ゆっくり腰を揺らされて時々下から突き上げられて。
やっぱり目を閉じた。
最後まで自分の手で支えられなくて、体重を乗せて重なったら下に敷かれた。
もう声が止まらなくて。
そして最後に声をあげて快感を手放した。
七尾さんの笑顔が見えた気がした。
目は開けてない、だから私の想像。
でも笑顔を返せたと思う。
嬉しくて。
慣れない方向からの光に気が付いて目を覚ました。
見慣れないカーテンの色、自分のいる場所がどこだか思い出すのに少し時間がかかった。
時計を見ようと頭の上を見たら、いつの間にかランプの明かりは消えていた。
お休みを言った覚えもない。
それなのに、すっかり朝になっていた。
日曜日、今日は一緒に買い物に行く予定だった。
天気も上々。
カーテンの隙間の光で部屋の中もうっすらと見える。
当然隣に寝てる七尾さんのことも。
ちょっとだけ体の位置を変えて、見る、よく見る。
顎・・・・・、昔でもなんとか見えていた顎。
そこだけじゃあ、まったく何もわからない顎。
動く唇は見えていた。
時々引き延ばされるように笑うのにも気が付いてたし。
今は全部見える。
閉じた目も、頬骨も、細い輪郭も、耳も・・・・。
でも、もし痣とか、傷があって髪で隠していたとしたら、私が言ったことは酷い事だった。
あの時はそんなこと思いもしなかった。
一度だけだけどヘアバンドで全開にしてた顔も見てたし、沙良ちゃんが髪を伸ばして顔を隠してるのが女除けだなんて言い出したから。
全力で否定してたけど、もし顔に隠したいものがあったとしたら、兵頭さんが教えてくれただろうから。
良かった。笑顔しか隠れてなかった。
何で隠してたのか本当に分からない。
でも今は隠したいと思う。
見せたくない。
勝手だ。
すぐには髪は伸びないのに。
誰にも見つけて欲しくない、優しくて普通だった七尾さんを。
すり寄って体に手を回す。
本当によく寝てる。
胸に顔を埋めて目を閉じる。
心臓の音が聞こえる気がするけど、きっと自分の鼓動だろう。
「誰にも見つかりませんように。」
小さく、つぶやいた。
「・・・・内緒にしたいなら、誰にも内緒でいいよ。」
急に声がした。
「七尾さん、起きてたんですか?」
「なんとなく、目が覚めた。しばらくセリフが理解できなかった。本当に脳までぐっすり休んで寝てたみたい。」
そう言って背中に手を当てられて包まれる。
「誰にも言わないの?あの子には?」
何のことだか分からなくて。
「内緒にしたいならいいよ。会社では声かけないから。携帯に連絡するから時々見てね。」
ああ・・・・・そういうこと・・・・。
「はい。・・・・沙良ちゃんに言うと揶揄われそうだから、できるなら内緒にしたいです。」
「兵頭からバレるかも。ちゃんと言ってないけど、鋭いからさ。髪切った時もうっすらと気が付いてたし。」
「もしかして、私が切らせたと思われてるんですか?服もちゃんとするように言ったって。」
そんな・・・・、私にだってまさかの変身だったのに。
「まあ、影響してるとは思ってるかも。指図したとは思われてないよ。後輩の子ならあり得るけど。」
「沙良ちゃんも・・・・きっとそこまでは言いませんよ。でも喜んで前髪をピンでとめられてたかも。スッキリしますねなんて言いながら。」
「・・・・・・。」
さすがにそれは嫌だろう。ガール風変人の出来上がりだ。
「予定はお昼だよね。まだまだ時間あるよ。」
体をずらされて目の前に顔が来た。
私が上げられたんだけど。
キスをする。
昨日より明るいから、起き抜けの顔を見られてる。
別に今更だけど・・・・・昨日はすっかりスッピンパジャマの部屋着でここに来たんだし。
それにリビングでは至近距離で話をしてたし。
でも夜と朝は・・・・違う、空気が違う。
そう思ったのに、体は少しも離れなくて。
腕もそこにある体に巻き付いたまま。
うっかり自分が引き寄せたかもしれない。
おはようも言ってない。
だからまだ夜だと思うことにした。
部屋に響く音は自分から漏れている・・・・。
足を開いてる、さっきから・・・・・ずっと。
だって軽くのせられてる。
閉じないように押さえるように。
布団もはがれて、響く音に自分がまた反応してしまう。
きっと、分かってしつこく響かせてる。
目も開けられない。
背中がじっとしてなくて、声を上げながら一人でのぼりつめた。
音と刺激、抑えられた足、いろいろから解放された体を抱きしめられて、やっと目を開けることが出来た。
「・・・・・変態。」
「何?」
明らかに不満そうな声で答える。
ひるまない。
「わざとしてましたよね、凄く恥ずかしいのに。」
「何?」
嬉しそうな声になった。表情も。
言わない。睨むだけ。
今は布団をかけられてる。
汗が引いてない体は熱くても表面が冷えてくる。
「内緒にするって。でも・・・兵頭には隠せないかも。」
「いろいろ、ね。本当に顧客まるめの営業テクニック使われたら、あれやこれや白状してスッキリするかも。」
体を起こして睨みながら上から見下ろす。
本当に?そんな仲いいの?
「冗談冗談。そんなに怒らないでよ。心配もしなくていいから。内緒内緒。」
「だって見たことない顔するから、つい。昨夜もあんな顔してたのかあって思ってたら、最後までひとりでいっちゃったね。」
「寂しい。」
昨日もそんな事を言った。
『寂しい』って、全然寂しくない時に使うらしい。
絶対本気にしないワードにする。
だまされない。
「眉間にシワ寄ってるよ。」
「昨日の最後も笑顔だったから、今日の最初も笑顔で終わろうね。」
1人でしゃべらせる。
面倒なときはそれでいい。
怒ってると分かってるはず。
「ごめん、だって凄く・・・・ほら、ね。だから。」
「リン、せっかく喜んでもらおうと頑張ったのに。・・・・ねえ、耳が真っ赤だよ。」
「七尾さん、もう、恥ずかしいからいいです。聞いてても少しも反省してないですし。」
「必要ないよね。」
「ねえ、気持ちいいのに、なんでそうやって我慢するの?」
「もういいです、お願いですからもういいです。」
思いっきり首を振る。
本当にやめて欲しい。
「僕がお願いしたい。もっと喜んで、我慢しないで喜んで。」
ね、って言いながら体の上の手が動く。
夜夜夜・・・・・今は夜。
「今日もいい天気だね。買い物日和。」
夜夜夜、まだ夜。
心の中で唱えるのに集中力はすぐに切れて。
我慢はしなかった。出来なかった。
自分から手を出して、揺れて、お願いしたから。
誤魔化せない。
シャワーを借りてまたパジャマを着た。
洗面台に髪を結ぶゴムがあった。明らかに女性の物らしい可愛い物。
誰の?
ヘアバンドはきっと髪が長い時の名残だろうけど。
ドライヤーをまとめてると声がした。
「入っていい。」
扉を開けた。
洗濯物をたくさん抱えた七尾さん。
明らかに寝室から出たものを抱えてやってきたと分かる。
視線を逸らす。
また、目に入った。
聞かないと気になってしょうがない。
「七尾さん、これ・・・・誰の?いつの?」
抱えたものを洗濯機に放り込んでこっちを見る。
私が指さしたものを見ても慌てる様子もない。
「ああ、前髪が邪魔なときに使ってたんだ。忘れものなんだけど、くれるって言われて使ってたんだ。さすがにもう使わないけど、捨てるには愛着がわいてて。使う?」
まさか、嫌とは言えない。
うなずいた。
指を離して見つめる。
「あ、違うよ。鈴のだよ、でも古いからもう、鈴も忘れてるかも。思い出してくれるかな。勝手に誤解しないでね。それ、明らかに子供のものだよね。」
ゴムの輪の小ささと、細さ。
確かに言われて見れば、納得。
「ごめんなさい。」
ちゃんと謝った。
何度も誤解して八つ当たりしたから。
勝手に誤解した時は謝ると決めた。
「いいよ。いつでも使っていいし。そうなれば喜ぶと思うよ。」
そう言う顔を見た。
妹が喜ぶと思うの?
その感覚は理解できない。
しかも前髪を結んでたなんて、じゃあ切ろうよ。なんで伸ばすのよ。
想像しようとしたのに、長い髪の頃がうまく思い出せない。
やっぱり変、そう思った。
化粧して着替えて出かけた。
すっかりお昼前。
牛乳いっぱいのコーヒーを飲んで、それだけで何だか気持ちはお腹いっぱい。
確かに買い物日和。
気持ちいい・・・昼だった。
パーカーを脱いでパジャマ上下の姿の七尾さん。
私も上着を脱いだ。
めくられた布団に入って一緒に横になる。
向かい合って顔を見つめると表情は結構わかる。
ふざけた表情は鳴りを潜めて、でも優しそうな表情のままなのは変わらない。
首に縋りついて抱きついた。
背中に回された手を感じながら、目を閉じていいのか考える。
少しも眠くないと思ったのに、あったかく心地よくて、うっとりとしながら眠れそうな気もする。
「リンちゃん。」
耳元で呼ばれた名前がしっとりと甘く聞こえる。
目を開けて顔を離す。
すぐ近くに顔が来て、また目を閉じた。
激しくなるキスに、荒い息使いに、手足が絡まるように動く。
めくられたTシャツの中に手を入れられて探られる。
手が胸を探りあてて声が出る。
「リン。」
名前を呼ばれながら耳元にキスされる。
「七尾さん。」
目を開けて七尾さんの服を捲る。
邪魔。
気が付いてくれてすっぽっと脱いでくれた。
私もそのまま捲られてベッドの下に落とされた。
裸の胸を上から眺められた。
どこまで光が届いているのか分からない。
くっつきたくて両手を伸ばす。七尾さんの胸が自分の体と重なる。
首からデコルテにキスをされると七尾さんの頭を引き付ける様に抱えてた。
初めて触れる頭には柔らかい髪があった。
しばらく手触りを楽しむ。
胸の丸みを撫でられて先端にキスをされると気持ち良くて背中が浮く。
その隙間に手を入れられてものすごい勢いで胸を責められる。
「七尾さん・・・。」
下半身が落ち着かなく揺れる。
顔が少しずつ上に上がってきて手は腰やお腹のあたりをさまよう。
私も七尾さんの腰に触れる。
七尾さんの手が下着の上をすべる。
そのままズボンを脱がされた。
目を開ける。
ニッコリ笑われた。
ちょっとだけ脱ぎやすいように腰をあげたから。
揶揄われたみたいに思えて。
じっと見上げた。
何?っていう風に首を倒された。
「七尾さん、脱いで。」
思ったよりお願い調に響いたかもしれない。
ズボンに軽く手をかけたら・・・・そんなつもりはなかったのに途中まで下着もついて来て。
結局全部脱いだ七尾んさん。
「リンちゃんは?」
結局腰をあげた。
薄く、小さく、軽いものが床に落とされた。
その後はお互いに必死で体を寄せた。
ずっとずっと体のどこかがつながってる。
不思議な感覚だけど、うれしくて、何度も確認した。
目を開けて、名前を呼んで。
そのたびに「リン」って呼ばれるのがうれしくて。
つながったまま、上から七尾さんを見下ろす。
大好き、すごく優しい人。
思ったよりずっと普通で、ずっと器用だった。
腰に当てられた手で体を揺すられる。
自分でも擦り付けるように動く。
快感に目を閉じそうになるけど見つめ合いたい。
七尾さんの手が私の胸に来る。
「リン、揺れる。」
そっと持ち上げられるように包まれる。
「七尾さん、だめ・・・・、腰がいい。」
手を動かして腰に当ててもらう。
ゆっくり腰を揺らされて時々下から突き上げられて。
やっぱり目を閉じた。
最後まで自分の手で支えられなくて、体重を乗せて重なったら下に敷かれた。
もう声が止まらなくて。
そして最後に声をあげて快感を手放した。
七尾さんの笑顔が見えた気がした。
目は開けてない、だから私の想像。
でも笑顔を返せたと思う。
嬉しくて。
慣れない方向からの光に気が付いて目を覚ました。
見慣れないカーテンの色、自分のいる場所がどこだか思い出すのに少し時間がかかった。
時計を見ようと頭の上を見たら、いつの間にかランプの明かりは消えていた。
お休みを言った覚えもない。
それなのに、すっかり朝になっていた。
日曜日、今日は一緒に買い物に行く予定だった。
天気も上々。
カーテンの隙間の光で部屋の中もうっすらと見える。
当然隣に寝てる七尾さんのことも。
ちょっとだけ体の位置を変えて、見る、よく見る。
顎・・・・・、昔でもなんとか見えていた顎。
そこだけじゃあ、まったく何もわからない顎。
動く唇は見えていた。
時々引き延ばされるように笑うのにも気が付いてたし。
今は全部見える。
閉じた目も、頬骨も、細い輪郭も、耳も・・・・。
でも、もし痣とか、傷があって髪で隠していたとしたら、私が言ったことは酷い事だった。
あの時はそんなこと思いもしなかった。
一度だけだけどヘアバンドで全開にしてた顔も見てたし、沙良ちゃんが髪を伸ばして顔を隠してるのが女除けだなんて言い出したから。
全力で否定してたけど、もし顔に隠したいものがあったとしたら、兵頭さんが教えてくれただろうから。
良かった。笑顔しか隠れてなかった。
何で隠してたのか本当に分からない。
でも今は隠したいと思う。
見せたくない。
勝手だ。
すぐには髪は伸びないのに。
誰にも見つけて欲しくない、優しくて普通だった七尾さんを。
すり寄って体に手を回す。
本当によく寝てる。
胸に顔を埋めて目を閉じる。
心臓の音が聞こえる気がするけど、きっと自分の鼓動だろう。
「誰にも見つかりませんように。」
小さく、つぶやいた。
「・・・・内緒にしたいなら、誰にも内緒でいいよ。」
急に声がした。
「七尾さん、起きてたんですか?」
「なんとなく、目が覚めた。しばらくセリフが理解できなかった。本当に脳までぐっすり休んで寝てたみたい。」
そう言って背中に手を当てられて包まれる。
「誰にも言わないの?あの子には?」
何のことだか分からなくて。
「内緒にしたいならいいよ。会社では声かけないから。携帯に連絡するから時々見てね。」
ああ・・・・・そういうこと・・・・。
「はい。・・・・沙良ちゃんに言うと揶揄われそうだから、できるなら内緒にしたいです。」
「兵頭からバレるかも。ちゃんと言ってないけど、鋭いからさ。髪切った時もうっすらと気が付いてたし。」
「もしかして、私が切らせたと思われてるんですか?服もちゃんとするように言ったって。」
そんな・・・・、私にだってまさかの変身だったのに。
「まあ、影響してるとは思ってるかも。指図したとは思われてないよ。後輩の子ならあり得るけど。」
「沙良ちゃんも・・・・きっとそこまでは言いませんよ。でも喜んで前髪をピンでとめられてたかも。スッキリしますねなんて言いながら。」
「・・・・・・。」
さすがにそれは嫌だろう。ガール風変人の出来上がりだ。
「予定はお昼だよね。まだまだ時間あるよ。」
体をずらされて目の前に顔が来た。
私が上げられたんだけど。
キスをする。
昨日より明るいから、起き抜けの顔を見られてる。
別に今更だけど・・・・・昨日はすっかりスッピンパジャマの部屋着でここに来たんだし。
それにリビングでは至近距離で話をしてたし。
でも夜と朝は・・・・違う、空気が違う。
そう思ったのに、体は少しも離れなくて。
腕もそこにある体に巻き付いたまま。
うっかり自分が引き寄せたかもしれない。
おはようも言ってない。
だからまだ夜だと思うことにした。
部屋に響く音は自分から漏れている・・・・。
足を開いてる、さっきから・・・・・ずっと。
だって軽くのせられてる。
閉じないように押さえるように。
布団もはがれて、響く音に自分がまた反応してしまう。
きっと、分かってしつこく響かせてる。
目も開けられない。
背中がじっとしてなくて、声を上げながら一人でのぼりつめた。
音と刺激、抑えられた足、いろいろから解放された体を抱きしめられて、やっと目を開けることが出来た。
「・・・・・変態。」
「何?」
明らかに不満そうな声で答える。
ひるまない。
「わざとしてましたよね、凄く恥ずかしいのに。」
「何?」
嬉しそうな声になった。表情も。
言わない。睨むだけ。
今は布団をかけられてる。
汗が引いてない体は熱くても表面が冷えてくる。
「内緒にするって。でも・・・兵頭には隠せないかも。」
「いろいろ、ね。本当に顧客まるめの営業テクニック使われたら、あれやこれや白状してスッキリするかも。」
体を起こして睨みながら上から見下ろす。
本当に?そんな仲いいの?
「冗談冗談。そんなに怒らないでよ。心配もしなくていいから。内緒内緒。」
「だって見たことない顔するから、つい。昨夜もあんな顔してたのかあって思ってたら、最後までひとりでいっちゃったね。」
「寂しい。」
昨日もそんな事を言った。
『寂しい』って、全然寂しくない時に使うらしい。
絶対本気にしないワードにする。
だまされない。
「眉間にシワ寄ってるよ。」
「昨日の最後も笑顔だったから、今日の最初も笑顔で終わろうね。」
1人でしゃべらせる。
面倒なときはそれでいい。
怒ってると分かってるはず。
「ごめん、だって凄く・・・・ほら、ね。だから。」
「リン、せっかく喜んでもらおうと頑張ったのに。・・・・ねえ、耳が真っ赤だよ。」
「七尾さん、もう、恥ずかしいからいいです。聞いてても少しも反省してないですし。」
「必要ないよね。」
「ねえ、気持ちいいのに、なんでそうやって我慢するの?」
「もういいです、お願いですからもういいです。」
思いっきり首を振る。
本当にやめて欲しい。
「僕がお願いしたい。もっと喜んで、我慢しないで喜んで。」
ね、って言いながら体の上の手が動く。
夜夜夜・・・・・今は夜。
「今日もいい天気だね。買い物日和。」
夜夜夜、まだ夜。
心の中で唱えるのに集中力はすぐに切れて。
我慢はしなかった。出来なかった。
自分から手を出して、揺れて、お願いしたから。
誤魔化せない。
シャワーを借りてまたパジャマを着た。
洗面台に髪を結ぶゴムがあった。明らかに女性の物らしい可愛い物。
誰の?
ヘアバンドはきっと髪が長い時の名残だろうけど。
ドライヤーをまとめてると声がした。
「入っていい。」
扉を開けた。
洗濯物をたくさん抱えた七尾さん。
明らかに寝室から出たものを抱えてやってきたと分かる。
視線を逸らす。
また、目に入った。
聞かないと気になってしょうがない。
「七尾さん、これ・・・・誰の?いつの?」
抱えたものを洗濯機に放り込んでこっちを見る。
私が指さしたものを見ても慌てる様子もない。
「ああ、前髪が邪魔なときに使ってたんだ。忘れものなんだけど、くれるって言われて使ってたんだ。さすがにもう使わないけど、捨てるには愛着がわいてて。使う?」
まさか、嫌とは言えない。
うなずいた。
指を離して見つめる。
「あ、違うよ。鈴のだよ、でも古いからもう、鈴も忘れてるかも。思い出してくれるかな。勝手に誤解しないでね。それ、明らかに子供のものだよね。」
ゴムの輪の小ささと、細さ。
確かに言われて見れば、納得。
「ごめんなさい。」
ちゃんと謝った。
何度も誤解して八つ当たりしたから。
勝手に誤解した時は謝ると決めた。
「いいよ。いつでも使っていいし。そうなれば喜ぶと思うよ。」
そう言う顔を見た。
妹が喜ぶと思うの?
その感覚は理解できない。
しかも前髪を結んでたなんて、じゃあ切ろうよ。なんで伸ばすのよ。
想像しようとしたのに、長い髪の頃がうまく思い出せない。
やっぱり変、そう思った。
化粧して着替えて出かけた。
すっかりお昼前。
牛乳いっぱいのコーヒーを飲んで、それだけで何だか気持ちはお腹いっぱい。
確かに買い物日和。
気持ちいい・・・昼だった。
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