公園のベンチで出会ったのはかこちゃんと・・・・。(仮)

羽月☆

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10 心の中をさらけ出して吐き出して。

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会えて、謝って。なんとか伝えて。
その後は・・・・デートに誘われた。
荷物をかき集める様にバッグに入れた。

さてどこに?

遠くを見る佐野さんに聞く。
そういえば髭のマスターのお店、一人じゃ行けてないから佐野さんと・・・。

そう言うと佐野さんはすぐ分かってくれた。
しかも商店街軒並みお休みの月曜日も営業してるらしい。
一緒に行ってもらうことにした。
誰からも声がかからない商店街。
月曜日にここまで来ることがないからちょっと知らない通りみたいで。
商店街から細い道を数歩入ったところにお店はあった。

開いてるの?
とても静かな佇まいに心配になる。
けど扉を開けてドアベルの音がすると賑やかな空気が押し寄せてきた。
店内は外から思うよりずっと明るく、しかも賑わっていた。
商店街が休みの中、たくさんの店主たちがのんびりと茶飲み話をしていたらしい。

オジサン、オジイサンの群れ。
そう多いわけではないのに一斉にこちらに向いた視線が音を立てて私たちを見つめる。
案の定というか佐野さんがつかまりからかわれる。
その後なんと、かこちゃんの飼い主さんを紹介される。
かなり風変わりな動物を愛していると分かった。

商店街のおじさんたちに質問され、次々に話相手にされた。
にぎやかな店内。マスターのおじいさんにもやっと挨拶が出来た。
一度来てしまえば次からは一人でも来れると思いますと言った。
開いてる席に荷物を置いていたのでそこに戻ると佐野さんも荷物を置いていて、落ち着いたころにコーヒーを頼んだ。
重みのあるカップに注がれたコーヒーは香りがよくて美味しかった。
しばらくして挨拶してお店を出る。

自然と2人は私の家に向かう。
少し遅れて歩き佐野さんを少しだけ後ろから見る。
2人の距離はどのくらい?
佐野さんの手を握ってみたくて手を伸ばした。
タイミングだったのか、最後の瞬間に私の迷いがそのまま出たのか?
私は佐野さんの袖を引っ張るように手を伸ばしていた。

それはちょうど本屋さんの前だった。
振り向いた佐野さんに寄っていいですかと?本屋さんを指さす。

2人でお店に入り今後必要だろうと思える厚紙とマジックと色ペンを買い足しお会計する。
ゆっくり選んでねとお店に入って別れた佐野さんを探すと、児童書のコーナーに見つけた。
真剣な横顔で背表紙を見つめる佐野さんは私に気がつかない。
ゆっくり歩み寄り声をかける。

「佐野さん、プレゼントですか?」

どうやら違ったらしく真剣な顔は一転して柔らかくなる。
仕事用の本を探していたらしい。
私が欲しいものを買ったと知ると、あっさり本棚に背中を向けて二人でお店を出る。

ついでの様に荷物を持たれた、水筒、パン、本と買い物したもの。
私はすっかり手ぶら状態。慣れない。
佐野さんの仕事の予定は夕方。
予定を聞いたら寄りたいところがあるかと聞かれた。

そうじゃなくて、だってもう私の部屋が見えてるし。

少し寄って行きませんかと聞いてみた。
私の部屋は二度目で、この間はすっぴんの部屋着の状態だった。
佐野さんは人の部屋に入るのにもあまり抵抗はないかもしれない。
私が考えるほど構えることはないのかもしれない。
そう思って二人で部屋の壁にもたれて話をする。
当たり障りなく周りの人たちの話をしていたはずなのに。

急に抱き寄せられてビックリしたけど、少し思っていた。そうなればと。
それなのに佐野さんの「やっと僕の言ってる意味に気がついた?」というような質問に、思わずその体を突き飛ばすように離してしまった。

その後はもう止まらない。

またしても失言のオンパレート。一度口から出た言葉はとどまることを知らず、後から後から。こんな風に思っていたのかと自分でも驚くほど。
結局泣きながら、さやかちゃんと同じように駄々をこねたような私にまたしても怒ることなくにっこりと笑いかけてくる。
だから、その余裕は何なの?さっき出尽くしたと思った言葉に反省したはずなのに。
またしても勝手にひねくれて残りの駄々を吐き出した。

その後は初めて聞く話ばかりで。
私の預かり知らないところで小学生に行動報告されていたらしい。
今日も公園で佐野さんが少し遠くを見ている気がした。
あの一連のやり取りも見守られてた、小学生に?
佐野さんに顔を持ち上げられて告白されてキスされて。
その後はもう恥ずかしくて。
一度も拒まずにそのまま流された。

そして夜泊まりに来ると言われた。どうしよう。
一緒にご飯を食べるだけじゃない。だってはっきりと続きは夜って言われたし。
一人残された部屋で頭だけがフル回転。でも空回りっぽい。
とりあえずお風呂場やトイレをチェックしてきれいなことを確認。
ベッドは今更どうしようもない。
バスタオルとフェイスタオルを用意して。
それくらい。

まだまだ時間はあるけど何をする気にもなれず。
ぼんやりと本を開いてもお昼以上に集中できない。
諦めてクッションに頭をおいて目を閉じた。
それでもさっきまで佐野さんがいた場所。二人で重なり合い声を出していた場所だ。
自分の声が今頃遅れて聞こえてくるような気がして恥ずかしい。
ひたすら時間がたつのを待った。
結局待っていた、早く帰ってきてほしくて、会いたくて。

早く・・・・って。
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