公園のベンチで出会ったのはかこちゃんと・・・・。(仮)

羽月☆

文字の大きさ
上 下
10 / 31

10 心の中をさらけ出して吐き出して。

しおりを挟む
会えて、謝って。なんとか伝えて。
その後は・・・・デートに誘われた。
荷物をかき集める様にバッグに入れた。

さてどこに?

遠くを見る佐野さんに聞く。
そういえば髭のマスターのお店、一人じゃ行けてないから佐野さんと・・・。

そう言うと佐野さんはすぐ分かってくれた。
しかも商店街軒並みお休みの月曜日も営業してるらしい。
一緒に行ってもらうことにした。
誰からも声がかからない商店街。
月曜日にここまで来ることがないからちょっと知らない通りみたいで。
商店街から細い道を数歩入ったところにお店はあった。

開いてるの?
とても静かな佇まいに心配になる。
けど扉を開けてドアベルの音がすると賑やかな空気が押し寄せてきた。
店内は外から思うよりずっと明るく、しかも賑わっていた。
商店街が休みの中、たくさんの店主たちがのんびりと茶飲み話をしていたらしい。

オジサン、オジイサンの群れ。
そう多いわけではないのに一斉にこちらに向いた視線が音を立てて私たちを見つめる。
案の定というか佐野さんがつかまりからかわれる。
その後なんと、かこちゃんの飼い主さんを紹介される。
かなり風変わりな動物を愛していると分かった。

商店街のおじさんたちに質問され、次々に話相手にされた。
にぎやかな店内。マスターのおじいさんにもやっと挨拶が出来た。
一度来てしまえば次からは一人でも来れると思いますと言った。
開いてる席に荷物を置いていたのでそこに戻ると佐野さんも荷物を置いていて、落ち着いたころにコーヒーを頼んだ。
重みのあるカップに注がれたコーヒーは香りがよくて美味しかった。
しばらくして挨拶してお店を出る。

自然と2人は私の家に向かう。
少し遅れて歩き佐野さんを少しだけ後ろから見る。
2人の距離はどのくらい?
佐野さんの手を握ってみたくて手を伸ばした。
タイミングだったのか、最後の瞬間に私の迷いがそのまま出たのか?
私は佐野さんの袖を引っ張るように手を伸ばしていた。

それはちょうど本屋さんの前だった。
振り向いた佐野さんに寄っていいですかと?本屋さんを指さす。

2人でお店に入り今後必要だろうと思える厚紙とマジックと色ペンを買い足しお会計する。
ゆっくり選んでねとお店に入って別れた佐野さんを探すと、児童書のコーナーに見つけた。
真剣な横顔で背表紙を見つめる佐野さんは私に気がつかない。
ゆっくり歩み寄り声をかける。

「佐野さん、プレゼントですか?」

どうやら違ったらしく真剣な顔は一転して柔らかくなる。
仕事用の本を探していたらしい。
私が欲しいものを買ったと知ると、あっさり本棚に背中を向けて二人でお店を出る。

ついでの様に荷物を持たれた、水筒、パン、本と買い物したもの。
私はすっかり手ぶら状態。慣れない。
佐野さんの仕事の予定は夕方。
予定を聞いたら寄りたいところがあるかと聞かれた。

そうじゃなくて、だってもう私の部屋が見えてるし。

少し寄って行きませんかと聞いてみた。
私の部屋は二度目で、この間はすっぴんの部屋着の状態だった。
佐野さんは人の部屋に入るのにもあまり抵抗はないかもしれない。
私が考えるほど構えることはないのかもしれない。
そう思って二人で部屋の壁にもたれて話をする。
当たり障りなく周りの人たちの話をしていたはずなのに。

急に抱き寄せられてビックリしたけど、少し思っていた。そうなればと。
それなのに佐野さんの「やっと僕の言ってる意味に気がついた?」というような質問に、思わずその体を突き飛ばすように離してしまった。

その後はもう止まらない。

またしても失言のオンパレート。一度口から出た言葉はとどまることを知らず、後から後から。こんな風に思っていたのかと自分でも驚くほど。
結局泣きながら、さやかちゃんと同じように駄々をこねたような私にまたしても怒ることなくにっこりと笑いかけてくる。
だから、その余裕は何なの?さっき出尽くしたと思った言葉に反省したはずなのに。
またしても勝手にひねくれて残りの駄々を吐き出した。

その後は初めて聞く話ばかりで。
私の預かり知らないところで小学生に行動報告されていたらしい。
今日も公園で佐野さんが少し遠くを見ている気がした。
あの一連のやり取りも見守られてた、小学生に?
佐野さんに顔を持ち上げられて告白されてキスされて。
その後はもう恥ずかしくて。
一度も拒まずにそのまま流された。

そして夜泊まりに来ると言われた。どうしよう。
一緒にご飯を食べるだけじゃない。だってはっきりと続きは夜って言われたし。
一人残された部屋で頭だけがフル回転。でも空回りっぽい。
とりあえずお風呂場やトイレをチェックしてきれいなことを確認。
ベッドは今更どうしようもない。
バスタオルとフェイスタオルを用意して。
それくらい。

まだまだ時間はあるけど何をする気にもなれず。
ぼんやりと本を開いてもお昼以上に集中できない。
諦めてクッションに頭をおいて目を閉じた。
それでもさっきまで佐野さんがいた場所。二人で重なり合い声を出していた場所だ。
自分の声が今頃遅れて聞こえてくるような気がして恥ずかしい。
ひたすら時間がたつのを待った。
結局待っていた、早く帰ってきてほしくて、会いたくて。

早く・・・・って。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

偽装溺愛 ~社長秘書の誤算~

深冬 芽以
恋愛
あらすじ  俵理人《たわらりひと》34歳、職業は秘書室長兼社長秘書。  女は扱いやすく、身体の相性が良ければいい。  結婚なんて冗談じゃない。  そう思っていたのに。  勘違いストーカー女から逃げるように引っ越したマンションで理人が再会したのは、過去に激しく叱責された女。  年上で子持ちのデキる女なんて面倒くさいばかりなのに、つい関わらずにはいられない。  そして、互いの利害の一致のため、偽装恋人関係となる。  必要な時だけ恋人を演じればいい。  それだけのはずが……。 「偽装でも、恋人だろ?」  彼女の甘い香りに惹き寄せられて、抗えない――。

無表情いとこの隠れた欲望

春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。 小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。 緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。 それから雪哉の態度が変わり――。

処理中です...