夢にまで見たい二次元恋愛、現実にはあり?なし?

羽月☆

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19 不機嫌を誤魔化せなくて、なのにさっさと自白した私。

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「無事にたどり着けて良かった。」

そう言われて目が合ったけど、そらした。


後ろから部屋に入る。
手はつながれたまま。

「先にシャワー浴びるね。ちょっと待っててね・・・・・寝たらダメだよ。」


そんな事を言っていなくなった。

「眠いんだから・・・・いいじゃない。」

そう一人でつぶやいてソファにもたれた、条件反射かと思うくらいにすぐに目は閉じた。



「起きて、ねえ、本当に寝てるの?」


パジャマを軽く羽織ってる生井君が目の前に立っていた。

「とりあえずシャワーを浴びてきた方がいいよ。」


そう言われて立ち上がって、よろよろとバスルームに行った。
いつもの荷物を出されてたから、ばばっと脱いでシャワーを浴びた。

いくらか目が覚めるだろうか?

着替えをして出たら、お水が用意されていた。

ソファに座りこんでゆっくり口にした。


隣から視線を感じる。
でもそっちは向かないでいた。


「視線を合わせてくれないから、何か怒ってるんだよね。」

分かりやすいらしい。


「違う。眠いの。」


「そう言いながらもこっちを見ないじゃない。」

そう言われたから見た。

真剣な目で見つめ合うことしばし。
でも視線をそらしてしまった。


「なんで?あんなにご機嫌だったのに。急に話をしなくなるし、がつがつ食べてぐびぐび飲んで酔っ払ったんだね。」


「別に生井君の昔の彼女に嫉妬してるわけじゃない。」


ああ・・・そんな事聞かれてもいないのに正解を言ってしまったらしい私。
なんで?
それは酔ってるからです。

「・・・・・何の事?」



「昔の彼女に散々『何を考えてるか分からない。』ってそう言われたんじゃないの?懐かしい顔をして思い出してたじゃない。」


「そんなこと思い出してないよ。男女ともに友達に言われたって話はしたけど。その中に確かにちょっといいなって思う子がいたけど、陰でそう言われてたのを聞いてがっかりしたなあって、そんな事は思い出してたよ。それに高校生の頃の事だよ。」

高校生・・・・・その頃から分かりにくいキャラクターだったらしい。

「どんな人だったの?」

「誰が?」

「そのいいなあって思った彼女。」



「友達の中では控えめだったかな。目立ってたって訳じゃないけど、皆に好かれてた。」


「そう。」


「うん、そんな子にもよく分からないって思われてるんだなあって、自分にもガッカリだったけど、その子もそんな事を言う子じゃないって勝手に思ってたところがあって、その子にもガッカリしたりして。勝手だよね。」


「前は分かりにくかったけど、今はそうでもないよ。優しいし・・・・。」


「優しいし・・・・それ以外は?」


それ以外・・・・なんだろう?


「ねえ、もっと褒めてくれてよくない?」


「なんて?」


「それは・・・気が利くとか、大切に思ってくれてるとか、好きでいてくれてるとか・・・恥ずかしいなあ。いっそ大好きだって言ってくれてもいいよ。」


「そんなの・・・・大好きだよ。私は分かりやすいから、分かってるでしょう?」


「うん、実は分かってる・・・かな?でもそんないつでも自信があるわけじゃないし、勝手にむくれられると原因を探すのも苦労した。」


「・・・・ごめんなさい。」



「いいけど・・・・・・。」



「けど?」



「目が覚めたんだよね、眠気はなくなった?」



そう言えばそうかも、まあ、どっかに飛んでいったかな?
そう思って頷いた。


「じゃあ、いい。時間がもったいない。」


声を潜めて言われた。
目の前に顔があって、目が合ってそらさないから、簡単に唇が重なる。


ゆっくり体の力を抜いて抱き合うようにもたれた。


お尻で一歩近寄られて、くっつくくらいの隣に来た。

「大好き。」

キスの合間にそう言われて、私はすぐに答えたくても言葉にはならなかった。

「ふぅんん。」

そんな鼻声だったけど良かったみたい。


めくられたパジャマの中に手が入りこんでくる。
遠慮はない。
ガッツリと大きく掌を開いて包まれるように触られる。
指の間に先端を出してゆっくり動かされると顎が上がって、声が出る。

喉に噛みつかれるようなキスをされて、痛みも感じる。


「ねえ、ここがいい?」


「・・・・いや・・・・・。」


「じゃあ。」

手を抜かれてつないで、すぐそこのベッドに行く。
ぐるりと回りこんですぐにたどり着いて。



ベッドに座りながら脱がされて、抱えられて横になった。
私が手を出した生井君のパジャマはまだ途中だった。
手を伸ばしたら自分で脱いでくれた。

せっかちな短いキスが繰り返される。
いつもの始まりはもっとゆっくりとなのに、どうしたの?

目を開けて見上げたら、大きく息をつかれた。


「里穂さん」


「はい。」

初めての名前の呼びかけにきちんと返事した。

「まったく伝わってる気がしない・・・けど。」


「何?」

なんだっけ?何かを忘れてる?眠気がさめたら忘れた?

「大好きなんだけど。」


それはこの状態だし、伝わってる・・・よ。

見つめ合う。
じっと見られるのも限界。

なにか・・・・?

責められることも、思い出すヒントももらえず。
なんだった?まあ、いいのかな?


あとはもうほとんど目を閉じていた。
目を閉じてても体の感覚が明るい時より敏感で。

時々薄眼を開けたら、うっかり目が合う。

腕を巻きつけて必死にしがみつくようにして、ついでに声も殺す。


時々わざと体を離される。
腕の力が緩んだ隙に、わざと顔をずらされて耳元で囁かれたりして。
ちゃんと返事しないと軽く怒った振りをしたり。

そんな無駄な駆け引きなんてしないと思ってたのに、本当に意外で。



「里穂さん・・・・。」

名前を呼ばれても返事する元気もない。
だからちょっとの時間差で出来たのはむしろ褒めてほしい。


「なに?」

「『里穂』って、そう呼びたい。」


「・・・ん。」



どうでもいい。二人の時はどうでもいい。さすがに会社じゃないよね。
名前を呼ばれることもまずないしね。


「ねえ、『じゃあ、希那って呼んでいい?』って聞いてくれないの?」


だから・・・・今じゃなくてもいいよね。
別に後でもいいし、明日でもいいし。


なんで草が主食なのに体力があるんだろう。
すごくエコなエネルギーの使い方だよね。


「ねえ。」



「・・・・・待って、また・・・・。」


とりあえず休憩したい、寝たい、終わりにしたい。
疲れた。


「楽しみにしてる。」


忘れなければね。
そう思った。
でも里穂って呼ばれたら思い出すからいいよね。


次の日、早めに目が覚めた。
なかなか生井君が起きそうになくて、ゆっくりとベッドから起きだした。


いつもの部屋着を借りてソファでくつろぐ。
携帯を適当にいじってたらお腹が鳴る前に起きてくれた。


「おはよう。」


「おはよう、里穂さん。」

そう言われて思い出したけど、もう挨拶はした後だったし。
でもその場で止まってじっと見られて・・・待たれてる。

「よく寝てたね、希那。」

何とかひねり出した。

満足したらしくてこっちに来ると隣に来た。

「最初から呼び捨てなんだ。」


「なんだか猫の名前みたいで、呼びやすい。」


そう言った理由はあんまりうれしそうでもない。


「じゃあ、里穂、ご飯にしよう。」


それには賛成。


「うん。」


その日のうちに違和感がなく馴染んできた。


「会社じゃ普通にね。」

「分かってるし、名前呼ぶこともないよね。」




「友達には言ってないの?」


「教えてないし、聞かれない。見た目も変らないのかも。」

そんなことないよね?どう?少しは変わった?そう目で訴えかけた。

「別に・・・・・自由で。里穂がいいように。」

ただそう答えられた。
通じなかったみたい。


今ので少なくともあの二人にはちゃんと教えてるんだろうと思った。
週末に部屋に来てもらってることまで教えてるんだろう。
あの二人くらいだったらいい。


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