夢にまで見たい二次元恋愛、現実にはあり?なし?

羽月☆

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17 途中お母さんに言われたことを思い出した夜からの朝からの・・・・。

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いよいよ金曜日です!

昨日の夜お世話になりますと送った。
『どうぞ。』と言葉少なめの返事が来ただけだった。
新たな記念日の予感がするのはもしかして私だけだろうか?
さすがに今週の出来事に追加されるような進展はないまま。
会社でも挨拶くらいで、夜もまあそこそこな感じで。


仕事が終わった金曜日の夕方。
いつものように待ち合わせの場所で待っていた。

どこに食事に行こうかと携帯をいじっていたら目の前に座られた。


「お疲れ。」

明るい笑顔で言ってみた。

「お疲れ様。」

ちょっと既に赤いけど・・・・。
まさか初心者マークってことないよね?

私もまだまだ外れないくらいのレベルだけど、まあ、それくらいはあるよね?


「ご飯行こう。お腹空いた。」

立ち上がって、カップを捨てて外に出た。


少しも特別感がない感じだった。
本当に手つなぎ同僚から、ちょっと雰囲気に流されてくっついたことがある二人になった段階。今日・・・・・。
ああ・・・考えると期待と興奮と・・・それでも空回りしてしまった場合に備えて複雑な胸の内。落ち着きたくて乾杯もせずにグラスに口をつけてしまった。


自分のグラスを手に先に飲んだ私を見た生井君。
さすがにすぐに気が付いた。


「ああ・・・ごめん。のどが渇いてて、おいしそうで、つい。」

申し訳ないって顔よりも笑顔で謝った。


そしてグラスを合わせてスタート。


やっぱり特別に盛り上がる会話もない。
料理の事を話して、ついでに自炊のレベルを話して、遠回りしながらじわじわと明日の予定について話した。


「映画に行こう。この間言ってたのがやってるよ。」

「そうだね。」


明日の事は一応決まった。
今日の夜の何かは未知数のまま。
当たり前だ、初めての二人の夜の時間割をここで話し合うわけはない。
そして何も課題のない時間かもしれない。
それは・・・ただの素泊まり。


お酒は控えめにした。
料理もそれなりに考えたつもり、そうじゃなくてもいつもほどの実力が出せない気分ではあった。
いつもと変わらない生井君。
本当にマイペース過ぎて、あっさりとした素泊まりの予感がしてくる。


会計をして、初めて降りる駅で降りて、初めての道を歩く。
つながれた手に引かれて歩く。

途中商店街で買い物はした。

何を話そうか考えたいけど、相変わらず生井君が無口で。
湯田君くらいの積極性があったら、もっと恥ずかしそうにもできるのに。
なんだかねえ・・・・・。


それでも現実が目の前に来たらドキドキが始まった。
ドアの前で鍵が回る音を大きく聞いた。

開かれたドアの中は暗くて、生井君が手を伸ばして明かりをつけてくれて中が見えた。

短い廊下にキッチンとバス、トイレがあって。
先に暗い部屋があるらしい。
二つ・・・と思ったけど一つだった。
それでもちょっといびつな形でへこんだところが寝室みたいだった。
棚で仕切られてて直接ベッドは見えない。


玄関に入った時に生井君はバッグを手放していた。
私は着替えが入ってるからそのまま手にしたまま。
部屋の明かりの下でぼんやりと間取りを見ていたら、急に体がきつくなった。
抱き寄せられてびっくりして声が出た。


いきなり?????

本当に気配を消してる。
すべての気配、感情も。

耳元で声がした。


「誘いたかった、ずっと。」

初耳です、少しも感じてない事でした。


返事も出来なくて巻き付いた腕に手をのせた。

首のあたりに生井君の息を感じた。
キスをされてる。
そう分かってドキドキは加速してきた。
素泊まりプランじゃなかったらしい。

頑張ってくるりと向きを変えてみた。

顔が上がってちょっとだけ上を見る。
緊張でいっぱいらしく表情は無表情に近い。

もっと優しい顔をしてほしい。
その固い表情を緩めたくて手を伸ばした。

片頬に手が届いたら、引き寄せたみたいに近寄ってきた。

明かりの下で唇が重なる。
お酒の味がする。

デザートとコーヒーは頼まなかった。
何となく言い出さないまま、ここにきて。


「何か飲む?」

考えてたことが口に出ただろうか?
でも大人しくコーヒーなんて飲む?


そう考えるより首を振った。


「もうお腹いっぱいだし。」


「そうだよね。」


「じゃあ、先にシャワー浴びてくる。適当にしてて。」


そう言われた。

生井君が着替えを持って廊下に出て行った。
テレビの正面壁際でクッションを掴んで座り込んだ。

テレビをつけて、荷物を出して。

大人しく待った。



すぐに出てきたらしい生井君。

お風呂を案内されて急いで着替えを手にしてついて行った。
そこにパジャマとタオルがあった。

「適当に使って。」

「ありがとう。」


似たようなパジャマを広げてみた。
ちょっと大きいくらいだろうか?
明らかに生井君のだと思う。


同じようにちょっと急いでササッとして、髪を乾かしてパジャマのままでさっきの場所に戻った。

隣同士に座ってテレビに向き合った。


「パジャマ、やっぱり大きい。」

腕も裾も折り返して、腰の紐も大分余ってる。


「そうだね。」

そう言って腕の折り返しをちらりとされて、そのまま手首を掴まれた。
後は体が近寄ってきて、抱き寄せられてキスをされた。


さっきとは違って私の頬に生井君の手がある。
優しく触れられてるのが心地いい。
キスも優しい、思ったよりずっと優しい。


やっぱりそんな人なんだ、そう思った。

体をくっつけて今までよりも遠慮なく声を出す。


「ベッドに行こう。」

そう誘ってもらえるまで、ずっと抱き合っていた。

照明を落とされて、ぐるりと仕切りを回りこんだ。


そのまま二人で布団の中にもぐり込んで、さっきより遠慮なく体をくっつけ合って、キスをしたり、体に触れたり。
お互いに隠さない。
生井君もここにきて全く隠さないで、手を動かしてた。


お互いに何とか精いっぱい頑張った感じだった。
そんなに手慣れてるなんてお互い思ってない、思われてないだろう。

それでも背中を撫でてくれる手は優しい、頭に感じる頬も温かい。
それはすごく気持ちい。
まさか生井君の隣でそんな気持ちになるなんて、本当にあの頃は全く思ってなかった。
最初からこんな優しさを見せてくれてたら、もっともっと早く仲良くなれただろうに。


明日は寝坊しない、ダラダラしない。
お母さんに言われたことを思い出した。
当たり前だよ、映画に行くんだから。


一度夜に目が覚めた。
すぐ近くで生井君が寝てるのが分かる。
軽く手を腰に当てたまま、お互い何も着ていない。

まだまだ夜中だと思って、目を閉じて隣から聞こえる寝息のリズムを聞きながらまた寝た。


次に目が覚めた時、隣には誰もいなかった。

上掛けを胸に当ててムクッと起きたら、かすかに向こうで人の動く気配がした。ちょっと伸び上がって声をかけた。

「おはよう。今何時かな?」


「おは、よう。まだ朝、早い時間。」

すっかりパジャマを着ていた生井君がこっちに来て、急いで座り込んだ。

「早起きだね。」



「すごくよく眠れたんだ。」



「私もよく眠れた。いつもより早起きできたかも。」


多分そうだろう。気配としては平日の起きる時間じゃないだろうか?


生井君がベッドに座ったまま、私は布団で体を隠して座ってる状態。
なんでそこに座ったままなの?
私が起きだせないじゃない。

脱いだ服はどうなってるんだろう?
さっき確認してない。


「筒井さん、映画、午後でもいい?」


「いいよ。用事済ませてからでいいし。」




なんだろう?



「何かする?どこかに行ってから?」


「うん。ごめん、早起きしたんだ。」


私が寝坊してないんなら、そうだろう。

でも私も起きたし、別にいい、付き合う。朝の散歩だとしても、付き合ってもいい。

動かない二人のまま、じっとしてる、部屋の主と全裸の客一名。


シャワー、借りれるよね・・・・・。


そう思ったら、やっと動いて。
でもゴロンと横になった生井君。


布団を足の方から捲られて悲鳴が出た。
ベッドの辺りは暗いとはいえ、そこはやっぱり朝だから。

ベッドの端に行き布団を押さえた。
めくるのは止めて、布団の上から腰のあたりを掴まれた。
ズズッと寄ってきた。


視線を送られて、見上げられてる。
ゆっくり横になって顔の位置を合わせた、正面に。

もう・・・とりあえずベッドで大人しくしてくれてたら良かったのに。
早起きしてシャワーも浴びて、着替えてコーヒーまで飲んでたらしい。

「ごめん。なかなか起きてくれそうになくて。」

早起きは私のせいだったらしい。
二度寝を楽しんでもいい時間だと思うのに。

お母さんに言われてたんだった・・・・なんて反省するところじゃないと思う。


「いつもこんなに早起きなの?」


「ううん、そうじゃない。なんだか落ち着かなくて。」


そう言いながらも落ち着いてないけど。
いつも見てる半眼も暗闇の中だと色っぽく見えるのは何現象だろう?
それとも自分の体の感覚が先にそんな翻訳モードになってるんだろうか?

頭も忙しくいろいろ考えてる。

体もこっちまで落ち着きなくなってる。


いろいろと考えるのをやめるころには完全にバタバタし始めた。

キスをしながら生井君のパジャマを脱がせた。
適当に脱がせたから最後は自分で脱いでいた。
その間は私が頬を掴んでキスをしていた。

完全に部屋の主も私とおそろい状態になるころにはくっついて隙間がないくらいだった。


「ねえ、またあの部屋に用事を頼まれたら、ついて行っていい?」

なんで?ついて行くって手伝うんだよね?
おかしいよね。
絶対変だよね。

「ダメ・・・・すごくたくさんの時だけ手伝って。」

「楽しみにしたいのに、あそこは本当に誰も来ないよ。」

顔を離された。説得を試みたいの?


「でも仕事中だから。」


一応リップもきちんと塗ってるのに、毎回毎回赤い顔して輪郭のぼんやりした唇で帰るなんて、誰かが変だと思ったらアウトじゃない。


「そうか。でも手伝いが必要なときは遠慮なく言って。」


「うん・・・お願いする。」


「ゆっくり二人で話ができるからいい。」


ん?話がしたいだけ?もしかして唇の問題とか考え過ぎだった?
今こんなタイミングで話さないで!


なんでバタバタするのかって、お互いに負けず嫌いのように上からかぶさるからだと思う。
それは身長があんまり高くない二人だからだろうか?
もっと体格差があったら、違うよね?

本当に華奢な生井君。
脱いでも細かった。


私の腰辺りの柔らかい所を気持ちいいと撫でる生井君、それは本心だろう。
本当に脇からお腹がガタガタと波打って、骨と皮だと思えるんだから。


「ねえ、気持ちいい。」

それは触り心地じゃないの?
胸や腰を触られて感想を言われるとそう思ってしまう。
でもクレームをつけるほど、白黒はっきりさせたいって思うほど余裕はない。

同じくらいその言葉に感動してるし。


真上から見下ろされる。
やっぱり半眼が色っぽくて体の奥がずんとなる。

汗ばんだ身体をくっつけ合って、つながったところから揺れ始める。

見ていたいのに、色気のある表情を、すごく好きかもしれないそれ。
だって他の人は知らないよね。

顎が上がり目を閉じると見えなくなる。
その代わりに息遣いを聞く。
時々甘くうめくような声も聞こえる。

自分の声もずっと届いてると思う。
色っぽいって褒めてももらえてる。



「いくいくん・・・。」

「・・・・・まだ、まって。」


言葉も出ない。
我慢できない。

だから待てない。





次に目が覚めた時には横にいた。
静かに目を閉じてる。
さっきより明るくなったみたいなリビングスペース。

今度こそ起きていい時間じゃない?

それでもゆっくり息を吐いて隣にもぐり込んだ。


私が動いたから起こしたみたい。


「筒井さん・・・・。」

「おはよう。」


顔をあげた。

見つめ合った目は朝の挨拶って感じじゃなかった。


「すごく良かった。一緒にいれて、過ごせて。」

「ありがとう。」

何をしたかって言うと、ソレしかしてないよね。
ほとんどゆっくり話をすることもなかったよね。


「良かった。」


また一言言われた。
恥ずかしくなるんです、なんで微妙な言い方をするんだろう、もう。


「どうしよう・・・・うれしくてあの二人に報告しそう。」

「止めて・・・・。恥かしい。」

そんな事報告される方も困る。

うっすらと気が付かれても大人の分別で理解してもらうくらいでいい。
仲良くしてるって思われてるくらいでいい。


「うん、なんとか隠すようにする・・・・・つもり。」

信じられないよう。
もう休憩はさっさと一人で休憩室で。
うっかり食堂なんて行こうものならこっちも恥ずかしいじゃない。




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