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6 平凡な現実にも届かない何かがあるらしい。
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そう思って感謝してたのに・・・・なぜ生井君がここにいるんだろう?
仲良かったの?初耳ですよ!
集まった顔を見て、自分の表情ががっかりしなかった自信がない。
予約したお店に固まって移動する間は二瓶さんと紀伊さんと話をしていた。
まだまだ手探り状態の友達。
下の名前も呼べないほどだし。
お互いの事をほじくり返して楽しむ時間にした。
この間話に出た紀伊さんのところの噂の素敵な先輩。
是非紀伊さんを訪ねていって、ついでに拝顔したい。
名前は聞いた、覚えた先輩、だけどまだ出会えてないと思う。
ただ彼女はいるらしい。
そこはまあ、そんな現実的な部分もある。
本当に真面目に仕事をしていて、休憩室と社食とトイレくらいしかふらふらしないし。
まだまだ未知の部分が会社にもある。
とりあえず今日はもう一人のメンバー三木君について掘り下げる必要もある。
お店の席並びは三木君の正面に座った。
何となくそうなった。
よし。
「カンパ~イ。」
元気に始まった。
「湯田君と生井君とよく飲むの?」
「そう。時々ね。生井君は強いんだよ。」
「そうなんだ。飲み友達なんだ。」
さらりと生井君の存在に触れて、そのあとは三木君に向かって話をし始めた。
「他には誰と仲良しなの?」
「あんまりまだいないなあ。ここの二人だけかも。」
なんと、クローズドサークル。
三人で完結してる。
広がらないらしい・・・・。
それでもいついかなる時どんな事が起こるか分からない。
笑顔一番、愛想良く。ただ余分な媚びも嬌声も必要ない。
隣の二人もそんな感じ。
ああ・・・これで紀伊さんが三木君と仲良くなったなんて結末になったら泣きそう。私の前にいたのに?って。邪魔だったの?って。
だからと言って途中席を代わることもなく。
だって生井君の正面って、全然、まるで仕事じゃない。
それでも紀伊さんと話してる顔を見る限り、目は座ってない気がする。
気に入った?
もしかして今回も『例外』になるんだろうか?
いつもの表情とは違うその顔を見てちょっとあれ?って思った。
「筒井さんはいつも他の四人と一緒にいるよね。」
「そう。最初に仲良くなったから、ずっと一緒。でも女友達より優先すべきものが出来た人が半分越えると途端に寂しくなるの。三木君はどうだった?男友達と彼女、どのくらいの割合?」
「大学の頃とは違うよね。重なることもあるし、単純には言えない。」
そんな振り分けのあったキラキラな大学生生活だったらしい。
「そういう筒井さんは?」
当然聞かれた。
うううっ。今二次元での出会いを入れていいんだろうか?『仲良し枠』で隣の一郎君も入れてあげてもいい。
だから適当に答えた。
「そうか・・・・、そうだよね。」
「うん、普通に会社員だと週末が休みって当たり前だけど、そうじゃない職業も多いじゃない?そうなると全然変わるよね。」
何となく実感がこもってる。
顔を見た。
「友達がそう言ってた。すれ違うって。結構有名なホテルで働いてるんだ。張り切ってるけど、やっぱり僕とも合わないってあるよね。夜勤もあるし。」
なるほど・・・・友達の話か。
金曜日には解放感を感じ始めて、週末二日堪能できるんだから。
やっぱり部長の雑用くらい喜んで手伝ってあげようと、また思った。
とりあえず席はよかった。三木君は話しやすい人だった。
ほとんど三木君とずっと話をしていた。
時々湯田君と二瓶さんが混ざるけど、たいてい二人で。
だからと言って別に・・・・・無事だった、今日も見事に無事だった。
「また、飲もうよ。三人でお会計割るより楽しめる気がするし。」
正直だった湯田君。
もっと違う理由をあげて欲しいところだけど、一番そこが良かったらしい。
「そうだね。いろんなお店開拓したいし。」
それは紀伊さんの理由。
「いいよ、いつでも、どこでも。」
非日常なら大歓迎。それが私の理由。
美味しく食べて飲んで家に帰った。
お母さんがテレビを見ていた。
「なにか週末は予定がある?」
「ないよ。」
「それは残念でした。」
ちょっとだけムッとする。
だって貧血の奥様なんて滅多に落ちてないってば。
もっと有効なアドバイスはないの?
お母さんが見てたのは緊迫ある刑事ドラマだった。
まったくラブな要素がない。男だらけのドラマ、スーツ姿がほとんど。
「お母さん、この中だとどの人がいい?」
いい具合に有名な俳優さんがたくさんいる。
「この人!」
「お母さん渋い。」
迷いなく選んだのはベテラン警察幹部役の俳優さん。
「昔から好きだったから。いい味出してるし、ちょっとお父さんに似てない?」
びっくり、初めて聞いた。
お父さんは隣の和室でゴロンと転がってこっちを見ていた。
そのリラックスした顔を見る。
「若い頃似てたの?」
「う~ん、あえて言えばってくらいだったけどね。でも誰も賛同してくれなかった。お祖母ちゃんすらね。」
「じゃあ、お母さんの気のせいだよ。」
「そうかな?」
さすがにね。
「そう言う里穂はどの人がいい?」
私だって即決。
『注目の若手』最近そのフレーズで紹介される人。
この男だらけの中にあって一人若い、フレッシュ、キラキラ。
「分かりやすい。里穂、この人は合うと思うのに。このくらいの癖のある人の方が楽しいかもしれないよ。」
明らかに変わり者のはみ出し者と言われそうな人を勧められた。
だって刑事でもなく、解剖医。死体を調べる人、めんどくさそうに依頼されて、それでも完璧な書類をあげる人。年齢不詳。
「個性的すぎるよ。全然楽しそうに仕事してない。こんな顔で横にいられたら気を遣うよ。」
「そんな人でも、たまに笑ったら値千金、うれしくなるでしょう?いつも平凡な人生はつまらないって言ってたじゃない。」
「あくまでも何も起こらない人生って事で、別に相手はキラキラな方に平凡じゃない方がいい。その他大勢の名前も呼ばれないような脇の役者さんより主役級って意味だよ。」
「まだまだ選ぶ選択範囲は無限大だしね。お母さんはお父さんを選んでからゼロになりました、残念。」
残念そうじゃない顔で言う。
それに選んだと同時に選ばれたくせに。
それは湯田君と二瓶さんもそうなのかもしれない。
無限の可能性ばかり追ってても、終わることがないから。
それが現実を見るってことかもしれない。
ああ・・・・本当に日々自分を見つめて、何かをどんどんと諦めてる気分。
テレビドラマが終わって、部屋に行った。
今日は研究の続きをする気も起きない。
なんでだろう。
なんでなんだろう。
仲良かったの?初耳ですよ!
集まった顔を見て、自分の表情ががっかりしなかった自信がない。
予約したお店に固まって移動する間は二瓶さんと紀伊さんと話をしていた。
まだまだ手探り状態の友達。
下の名前も呼べないほどだし。
お互いの事をほじくり返して楽しむ時間にした。
この間話に出た紀伊さんのところの噂の素敵な先輩。
是非紀伊さんを訪ねていって、ついでに拝顔したい。
名前は聞いた、覚えた先輩、だけどまだ出会えてないと思う。
ただ彼女はいるらしい。
そこはまあ、そんな現実的な部分もある。
本当に真面目に仕事をしていて、休憩室と社食とトイレくらいしかふらふらしないし。
まだまだ未知の部分が会社にもある。
とりあえず今日はもう一人のメンバー三木君について掘り下げる必要もある。
お店の席並びは三木君の正面に座った。
何となくそうなった。
よし。
「カンパ~イ。」
元気に始まった。
「湯田君と生井君とよく飲むの?」
「そう。時々ね。生井君は強いんだよ。」
「そうなんだ。飲み友達なんだ。」
さらりと生井君の存在に触れて、そのあとは三木君に向かって話をし始めた。
「他には誰と仲良しなの?」
「あんまりまだいないなあ。ここの二人だけかも。」
なんと、クローズドサークル。
三人で完結してる。
広がらないらしい・・・・。
それでもいついかなる時どんな事が起こるか分からない。
笑顔一番、愛想良く。ただ余分な媚びも嬌声も必要ない。
隣の二人もそんな感じ。
ああ・・・これで紀伊さんが三木君と仲良くなったなんて結末になったら泣きそう。私の前にいたのに?って。邪魔だったの?って。
だからと言って途中席を代わることもなく。
だって生井君の正面って、全然、まるで仕事じゃない。
それでも紀伊さんと話してる顔を見る限り、目は座ってない気がする。
気に入った?
もしかして今回も『例外』になるんだろうか?
いつもの表情とは違うその顔を見てちょっとあれ?って思った。
「筒井さんはいつも他の四人と一緒にいるよね。」
「そう。最初に仲良くなったから、ずっと一緒。でも女友達より優先すべきものが出来た人が半分越えると途端に寂しくなるの。三木君はどうだった?男友達と彼女、どのくらいの割合?」
「大学の頃とは違うよね。重なることもあるし、単純には言えない。」
そんな振り分けのあったキラキラな大学生生活だったらしい。
「そういう筒井さんは?」
当然聞かれた。
うううっ。今二次元での出会いを入れていいんだろうか?『仲良し枠』で隣の一郎君も入れてあげてもいい。
だから適当に答えた。
「そうか・・・・、そうだよね。」
「うん、普通に会社員だと週末が休みって当たり前だけど、そうじゃない職業も多いじゃない?そうなると全然変わるよね。」
何となく実感がこもってる。
顔を見た。
「友達がそう言ってた。すれ違うって。結構有名なホテルで働いてるんだ。張り切ってるけど、やっぱり僕とも合わないってあるよね。夜勤もあるし。」
なるほど・・・・友達の話か。
金曜日には解放感を感じ始めて、週末二日堪能できるんだから。
やっぱり部長の雑用くらい喜んで手伝ってあげようと、また思った。
とりあえず席はよかった。三木君は話しやすい人だった。
ほとんど三木君とずっと話をしていた。
時々湯田君と二瓶さんが混ざるけど、たいてい二人で。
だからと言って別に・・・・・無事だった、今日も見事に無事だった。
「また、飲もうよ。三人でお会計割るより楽しめる気がするし。」
正直だった湯田君。
もっと違う理由をあげて欲しいところだけど、一番そこが良かったらしい。
「そうだね。いろんなお店開拓したいし。」
それは紀伊さんの理由。
「いいよ、いつでも、どこでも。」
非日常なら大歓迎。それが私の理由。
美味しく食べて飲んで家に帰った。
お母さんがテレビを見ていた。
「なにか週末は予定がある?」
「ないよ。」
「それは残念でした。」
ちょっとだけムッとする。
だって貧血の奥様なんて滅多に落ちてないってば。
もっと有効なアドバイスはないの?
お母さんが見てたのは緊迫ある刑事ドラマだった。
まったくラブな要素がない。男だらけのドラマ、スーツ姿がほとんど。
「お母さん、この中だとどの人がいい?」
いい具合に有名な俳優さんがたくさんいる。
「この人!」
「お母さん渋い。」
迷いなく選んだのはベテラン警察幹部役の俳優さん。
「昔から好きだったから。いい味出してるし、ちょっとお父さんに似てない?」
びっくり、初めて聞いた。
お父さんは隣の和室でゴロンと転がってこっちを見ていた。
そのリラックスした顔を見る。
「若い頃似てたの?」
「う~ん、あえて言えばってくらいだったけどね。でも誰も賛同してくれなかった。お祖母ちゃんすらね。」
「じゃあ、お母さんの気のせいだよ。」
「そうかな?」
さすがにね。
「そう言う里穂はどの人がいい?」
私だって即決。
『注目の若手』最近そのフレーズで紹介される人。
この男だらけの中にあって一人若い、フレッシュ、キラキラ。
「分かりやすい。里穂、この人は合うと思うのに。このくらいの癖のある人の方が楽しいかもしれないよ。」
明らかに変わり者のはみ出し者と言われそうな人を勧められた。
だって刑事でもなく、解剖医。死体を調べる人、めんどくさそうに依頼されて、それでも完璧な書類をあげる人。年齢不詳。
「個性的すぎるよ。全然楽しそうに仕事してない。こんな顔で横にいられたら気を遣うよ。」
「そんな人でも、たまに笑ったら値千金、うれしくなるでしょう?いつも平凡な人生はつまらないって言ってたじゃない。」
「あくまでも何も起こらない人生って事で、別に相手はキラキラな方に平凡じゃない方がいい。その他大勢の名前も呼ばれないような脇の役者さんより主役級って意味だよ。」
「まだまだ選ぶ選択範囲は無限大だしね。お母さんはお父さんを選んでからゼロになりました、残念。」
残念そうじゃない顔で言う。
それに選んだと同時に選ばれたくせに。
それは湯田君と二瓶さんもそうなのかもしれない。
無限の可能性ばかり追ってても、終わることがないから。
それが現実を見るってことかもしれない。
ああ・・・・本当に日々自分を見つめて、何かをどんどんと諦めてる気分。
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今日は研究の続きをする気も起きない。
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なんでなんだろう。
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